☆第十話☆『恋の予感』
登校五日目。朝のホームルームの時間は勉強の時間になった。
「みんな、わからないことがあったら周りの奴に聞くんだぞ。もちろんおしゃべりの時間じゃないからな」
先生がそう言い終わると、桜姫が真っ先にこちらに向かって来た。
「陽~、この問題教えて~」
「この問題? これはこうやって……」
私は桜姫に問題の解き方を教えた。
「なるほど~。とても分かりやすい説明だった」
「桜姫、大袈裟だよ」
「へぇ~、赤城さんて頭良いんだね」
急に、隣りの坂下大志くんが話し掛けてきた。しかし、これは絶好のチャンスかもしれない。
「坂下くん、そんなこと無いよ」
「いや、赤城さんは頭が良い。実は、俺もその問題が解けなかったんだ」
「そうなんだ」
「……俺にも解き方を教えてくれないかな?」
「うん、いいよ」
私は坂下くんに、問題の解き方を懇切丁寧に教えた。
「なるほど。かなり分かりやすい」
「そんなこと無いわ」
「謙遜する事はないよ。……明日もまた教えてもらってもいいかな?」
「私に分かることなら、いつでも」
「ありがとう!」
「うん。……ねぇ、坂下くん」
「何?」
「私たちって、友達になったのかな?」
「急にどうしたの?」
「私たちってさぁ、登校初日にみんなに変な印象を与えたでしょ? 坂下くんもそのことを気にしてるのかなぁ~と思ったの」
「そんなこと最初から気にしてないよ。俺たちは、もう友達だよ」
坂下くんは満面の笑みでそう答えた。
ドキッ。この一言に、陽の心は奪われた。
「そ、そうだね……。そ、そういえば、私の友達を紹介するね」
私は桜に顔を向けて、桜姫のことを坂下くんに紹介した。
「私の友達の田中桜姫。友達というか、親友だよ」
「ど、どうも、田中桜姫です。えっと~……とりあえずよろしくね」
珍しく桜姫が緊張してる。
「よろしくね、田中さん。俺も田中さんたちと親友になれるかな?」
「な、なれると思う!」
「むしろ、それ以上の」
桜姫が全部言葉にする前に、私は桜姫の口を塞いだ。
「それ以上?」
「あははは、何でもないの。そうよね桜姫」
桜姫は必死に頷いた。それを見た坂下くんは、微笑んでいた。
「ホントに仲が良いんだね。俺ももっと赤城さんや田中さんのことを知って、もっと仲良くなる! そして俺のことももっと知ってもらう!」
「私ももっと知ってもらいたい。これからよろしくね」
「こちらこそ、よろしく」
坂下くんはとても情熱的な人なのかも……。
陽の心は、坂下へともの凄いスピードで向かっていた。




