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嫉妬

今まで出し方がわからなくて記号→「…」を出すのが面倒臭く、「、、、」で表していましたがスマホの「、。?!」のキーを下にフリックすることで出てくるのを知りました。これからは「…」の時代が始まりそうです。

「あ、白銀。天音。おかえり…どうした。」


お、無事に帰ってきた。良かったよか…良かった?


「玲くんが足痛めちゃって…医務室連れて行かないとって。」


さああっと血の気が引いた。天音のことも心配だがそれよりも……多感な男子高校生(高校生ではないけれど)を姫抱にして運んでくんなや。


「わかった。医務室に連れて行ってくれ。」


鈍感少女・白銀陽翠。そして…


「流凪、まさか見なかったよな…」


怖い。怖いぞお。


***

とりあえず玲くんを医務室に放り込み、私は外で待っていた。


(怪我、させちゃったな…大丈夫かな…)


羽衣の力の副作用もまだわからない。そしてもう一つ、使いたくない理由があった。


(怪我を恐れなくなる)


これは致命傷。もし怪我を恐れなくなったら捨て身で突っ込んでいって…羽衣でも取り返しのつかない状況になったら。


怖い。


これ以上身近な人がいなくなるのが何よりも怖かった。


「あれ…陽翠さん。待っててくれたんですか。」


医務室前の廊下でしゃがみ込んでいたらいつの間にか玲くんの声が聞こえてきた。


「あ…足、大丈夫だった…?」


「はい。骨に異常ないし俺怪我治るの速いからすぐ治りますよ。今日は稽古できなくてごめんなさい。」


「いいよいいよ!そんなの!」


「…陽翠さん、大丈夫ですか…?」


「私?私はどこも怪我してないけど」


「なんかすごく…痛そうな顔してる」


「…そんなわけないよ」


服をはらって立ち上がってもかなり上の方にある顔。出帆よりも背高いんじゃないかな。


「…陽翠さん、この後の予定は?」


「ん?えーと、この後は稽古かな。さっき榊さん見かけたから稽古つけてもらおうと思って。」


「見学してもいいですか」


「ん。いいよ。榊さんも良いって言うだろうし。」


───

「白銀さん、構えて。」


「はい。」


羽衣が真珠層のような淡い輝きを放ちながら、私の肩から、生き物のように滑らかに、そして禍々しく宙をうねる。


玲瓏れいろうあめ


私が先に攻撃を仕掛けた。柔らかな羽衣の端が瞬時に鋭利な矛へと変貌し、無数の弾丸のような攻撃を降らせる。シルクのように繊細な質感のまま、空気の抵抗をゼロにする超高速の刺突。


空気を引き裂く音さえ置き去りにし、榊さんを狙った。


直後、背後から放たれた榊さんの一撃を見向きもせずに防ぐ。


たなびいていた羽衣の残りが、意志を持つ壁となって私を包み込む。激しい衝撃が走るが、羽衣はその表面でエネルギーを幾重にも屈折させ、霧のように霧散させてしまう。


「もっと速く!!もっと重く!!」


榊さんの声が飛ぶ。


私の瞳が鋭く細まる。


私が大きく一歩踏み出し、舞うように体を捻ると、羽衣は巨大な大蛇のごとき質量を持って旋回した。薄く透き通るような布地が、その瞬間だけは数トンの鋼鉄に匹敵する質量を宿す。


ゴォォォォオ、と大気を圧する轟音。


美しく繊細な薄衣が、空間を深々と削り取り、巻き起こる旋風が周囲の機材をなぎ倒す。


それはもはや、天女の装束というよりも、形を変え続ける「純粋な暴力の芸術」だった。


「月光・朧月夜」


榊さんの重い一撃をかわす。大きく飛んでさらに羽衣を足場に飛び上がる。


「着地点を意識して!!」


飛ぶことで大切なのは飛ぶこと自体じゃ無い。着地だ。


羽衣で衝撃を緩和しながら床を滑る。


「月映え」


真っ直ぐとした攻撃を榊さんに降らせた。


「残照」


羽衣に榊さんは木刀一本で押し返す。


かんっと私の身体に木刀が当たった。


「っ…!」


「うん。良い動きだったよ。死角を狙って飛び上がるのは羽衣を使っていて良かった。防御は羽衣で全体を包むんじゃ無くて一部を守って攻撃も同時にできたら良いんじゃないかい?」


「はい。」


「もう一回。」



また稽古は始まる。


「ふっ……!」


短く息を吐き出し、私は一歩踏み出す。手首のわずかな返しで、床に流れていた羽衣が生き物のように跳ね上がった。


螺旋を描きながら、前方の榊さんを猛烈な速度で打ち据える。


光明輪こうみょうりん


大きく円を描くように斬り込んでいく。


乾いた衝撃音。流れるような旋回、しなやかな跳躍。しかし、その軌跡は冷徹なまでに正確に。


「次は、多角防御!!行くよ!!」


榊さんの声が飛ぶ。


玲瓏れいろうあめ


榊さんから放たれた雨のような斬撃。


私は視線を逸らさず、羽衣を自身の周囲に巡らせた。


(一点だけで良い…一点を見極めて。)


銀の薄衣が繭のように彼女を包み込み、飛来する攻撃を次々と弾き飛ばしていく。


「眩き」


榊さんに一撃を入れようとする。が、弾かれた。


汗が額を伝い、制服のブラウスがカラダに張り付く。息は上がっているが、身体はとても軽やかだ。


「もっと風と同化して!重さを消す!」



「月映え」



重い一撃。榊さんの木刀を…僅かに押し返した。


「そこまで!!」


私は目を閉じ、空中に浮遊する羽衣を優しく引き寄せた。それは戦いの道具であり、私の体の一部。


「最後の一撃はとても良かったよ。もう少し重さを乗せられるとさらに良いと思う。」


「ありがとうございます。」


「今日はここまで。お疲れ様。」


とたとたと玲くんの方まで走った。


「陽翠さん、お疲れ様でした。動き、凄かったです。」


「えへへ。ありがと。帰ろうか。」


私達はそれぞれの家へと帰っていった。


───

「ただいっ!?!?」


帰ってきた瞬間。ただいまを言おうとした瞬間。出帆にぎゅっと抱きしめられた。いや、ぎゅっとかいうレベルじゃない。


「え、ちょ、痛…」


「誰。」


「え?」




「……あの男。誰。」

嬉しくて「……」多用しちゃった。

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