私のもの
お互い一歩も引かない。皮膚が裂けて血が流れる。
「私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物私の物!!!!!!!!!!陽翠!!!!陽翠!!!陽翠陽翠陽翠陽翠陽翠陽翠陽翠陽翠陽翠陽翠陽翠陽翠陽翠!!!!!!!!!!」
「周・恋情炎!!!!!」
「残照!!」
肌が焼ける。痛みが走る。光と炎が溶け合うように見えて桃色と白は混じり合わない。
「うぐっ、、、、!!!!!」
踏み出した瞬間、痛みが走って倒れ込んでしまった。限界を超えて動き続けた反動、、、
「ねぇ、死んじゃうよ?流石にしぶとすぎてこっちも疲れてきたんだけど」
手のひらも腕も足も全部赤い。火傷とかいう騒ぎじゃない。
「今ならまだ間に合うから。撤回した方がいいよ。そろそろ死んじゃうんじゃない。」
「ならないよ、、、私は、、、出帆が、、、好き、、、だから。」
「なんでその気持ちが私に向かないの?私が同性だから?「違う」
そんな理由じゃない。そんな理由じゃない。
「好き」
何度でもそう繰り返される。そのたびに身体に傷が増えて血が流れる。止まない鼓動。まだこの足は、、、走れるはず。
「あなたは、、、私が好きなんじゃないよ。好きっていうことはその人の幸せを願うってこと。自分の物にしたいだけじゃ、、、ないの。」
「互いに支え合って生きていく。別に私は1人でも生きていけるけど、、、出帆がいない世界では生きていたくない。それが好きってことだよ。」
「そんなっ、、、じゃあどうしろって?どうしようもないから叫んでるんじゃないの?」
「生きれないんだよ!!!!!好きにすがって生きて居ないと生きれない!!!一生相容れない世界なら、、、
陽翠殺して私も死ぬ!!!!!!!」
「龍・恋情炎!!!!!」
炎で創られた龍が出現した。
ここに来ての大技。こんなに体力が残ってたなんて、、、
「ああああああああ!!!!!!!!!!」
紅い龍は私を襲おうとこちらに首を伸ばしてくる。アイはバチバチと光を纏って叫ぶ。
美しいほどこの瞳を埋め尽くす。生命を失った感情の炎。ガーネットの色彩。
『ねえ、陽翠は死んだらどうするの?』
出帆からのいつかの質問。
星になりたい。でも死んだってみんなから忘れ去られるだけ。
諦めたら?アイのものになればこの悪夢から抜け出せる、、、、、、
『陽翠!!』
『ひーすいっ!』
『白銀』
『陽翠ちゃん!』
『白銀さん』
『陽翠』
そんなんだめだ。
私、自分自身を過去に縛り付けてた。過去を受け入れずに独りだってずっとずっと。独りじゃないって思っても本当は信じ切れてなかったんだ。
腕の傷。火傷の跡。この全てを抱きしめて。
呪いの出口。永久の夜の狭間。
目を覚ますんだ。あなたの悪夢から。
「っ、、、!!!!!」
痛くない。痛くない。
龍の上を走る。龍は私に襲いかかるけど気にしない。だってこれは私の物だから。私の人生だから。
「ごめんね。凛。気づけなくてごめん。」
凛の表情が変わった。涙が頬を濡らしている。
走る。走る。凝固した血が崩れてまた血が流れる。
凛はこちらに向かって手を広げた。
「ごめんね。」
「月光・朧月夜」
大きく飛んで上から凛の左胸を貫いた。
光が満ちる。朝日が私達を照らした。
龍が散った。
────────
結城凛の一生。
それは一言で語れそうなほど希薄で他人に支配された物だった。
自分の意思で選んだものはない。全て選ばれたもので囲まれた日常。
些細なことで涙がでるようになった。
朝が怖くて起きられなかった。
努力は向いていなかった。
日に日に泣くことだけが得意になっていった。
そんな日々の狭間で。
疲れたも言えず。
歩みを止めることもできず。
ただ陽を追い求めて走り続けていた。
それでもいつだって陽翠と見ていた景色は本当に綺麗だった。
忘れることないあなたの笑顔。
自由を追い求めてきたくせに独りでは歩けない。
孤独が怖い癖に人を自分の領域に入れられない。
好きな人のことを好きな癖に傷つけた。
(最低だ、私。)
それでも言い続けてないと頭がおかしくなりそうだった。何かにすがってないと生きていけなかった。
親のことを屑だと言うなら私も屑であることにもっと早く気づけば良かった。
私の炎で焼いた愛おしい人。
どうか、神様、どうか。
生まれ変わったらもう一度人間にしてください。
*****
「凛」
龍は崩れてゆっくりと凛の身体も崩れていく。
「ひっ!?」
私は凛に向かって走り出した。
そして、強く抱きしめた。
「来世では、、、友達になりたいよ」
「うんっ、、、うんっ、、、」
「陽翠」
「なあに?」
「またね」




