奥義
(綺麗、、、)
自分自身が選んでい終わりにした癖にまだ未練は私の中で燃えている。
(陽翠、浄化師だったの、、、そんなこと言ってくれなかった。)
言うわけないでしょ。普通。私達と仲良くしていたのもただ捜査のため。潜入任務。
(本当に?)
「凛」
「凛!!」
「りーんっ!」
「凛」
本当だったら一体何なの?壊したのは私なのに、それでもまだ愛が欲しいの?
嫌だ。欲しいのは一つだけ。
本当に?全部欲しいんじゃないの?
全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部
光の浄化師に共通すること。人間の記録ではまだたどり着けていない。
(闇に堕ちた人間を見ること。)
陽翠の前では誰が堕ちたのだろうか。
「僕はもう死ぬ。こんな能力も世界もいらない。愛に譲渡する。もう戦いたくない」
私が魔物に成ってすぐ、「哀」が戦いを放棄した。哀は強い魔物だった。そのくせ人を全然食わない。元の感情だけで強い、変な雰囲気の同い年の男。どことなく雰囲気が気持ち悪かった。
*****
僕は堕ちた。
最愛の人の目の前で堕ちていった。どうしても愛されたかった。
その瞬間だったんだ。
僕の感情は一瞬にして盗まれた。
愛、恋、優、好。それを白銀さんに伝えて哀、怒、悲、俱が盗まれた。
「やっと見つけた。この感情。肉体は死んだけど魂は私が使ってあげる。」
名を忘れて名が消えて哀としてこの世に留まり続けた。
僕は人を殆ど襲わなかった。
冬の日、いつも心がじくじく痛んだ。
白銀さんに呪いを残してしまったこと。重い想いを遺して飛んだこと。
それでも僕はいつもいつも君を探してしまっていた。君がいなくなった瞬間世界は色を失っていった。
「私の七情になるなら願いを叶えてあげるわ。」
その時僕は迷いなく願ったんだ。
「白銀陽翠の幸せを。」
意外そうで不服そうな顔をした心刻様は僕の願いを叶えてくれた。
(ああ、、、嘘だろ)
青藍学園に白銀さんが来た。そして僕には視えてしまった。彼女の水晶の力が。溢れ出る浄化の気が。
彼女は僕を祓わなきゃいけない。そうしたら彼女を傷つける。
僕は消えることを選んだ。
流凪出帆。彼が白銀さんを幸せにしてくれる。僕はもう役目を終えた。願いと肉体が消え、祈りは切れた。呪い呪われた鎖は僕が手ずから断ち切った。
そして結城凛という名の少女は七情最強の魔物、「アイ」に成った。
『そんなことするなよ』
思わず声をかけてしまった。もう役目を終えたのに。
「何?誰かいるの?」
『哀。アイの魂に残った哀の欠片』
『お願いだ。白銀さんを、、、傷つけないでくれ。最初で最後の愛した人だから』
「嫌。それは私も同じ。私の物にならないんだったらこの世界ごと壊す」
『愛した人の幸せを願えないんだったらそれは愛したとは言わない。』
「は?だからなに?死んでなお不快な男。私に力を譲渡したんだったら大人しくしとけば良いのに。」
『君の気持ちは、、、愛なんかじゃない。ただの醜い独占欲の塊だ。』
「そんなわけない。それはあなたの愛より私の愛がずっと重いって証拠。陽翠はあなたの名前も覚えてないのにまだそんな惨めったらしいこと言ってるの?」
『覚えられてなくていい。忘れられた方が白銀さんにとっては幸せだ。僕はどう頑張っても白銀さんの幸せを願うから』
「あっそ。邪魔だからもう消えて。力だけ渡しておけばいいのに。」
辛うじて残っていた魂の欠片はアイの黒に浸食されていく。
(最期に、、、見れてよかった)
手一杯の祝福を君へ。
*****
「残照!!」
「月白!」
本願寺さんと榊さんの攻撃が通っていく。本願寺さんの短刀が壁を貫き魔物を固定する。榊さんの光は赤い糸を全てなぎ払い、魔物は力を失っていった。
「月映え!」
「伏流水!」
私と出帆は迫りくる糸を切って切っていく。魔物の腕を一本落とすことに成功して魔物に焦りが見え始めた。
「鏡花水月」
「水鏡」
桜月さんと水滝原さんが心臓を狙った攻撃を放つ。刀は胴に食い込みはするものの硬すぎて切ることができない。
「っ!?!?」
「水滝原さん!!」
「碧!!!」
赤い糸が鈍い音を立てて水滝原さんの腹を殴った。数メートルほど吹っ飛んだが
「問題ない。」
すぐに立ち上がり攻撃を再開する。本願寺さんの短刀をはじき返して自由を取り戻した魔物は糸の上を素早く移動していく。
「あはは!問題しかないわよ。ざーんねん。これでクインテット1人と水1人はおしまいね。」
「奥義 真名縛り・静水」
「はっ、、、!?!?」
「!?」
がしゃり、と音がして赤い鎖が出帆と水滝原さんを繋いだ。出帆と水滝原さんの刀からとめどなく溢れ出ていた浄化の水。
その流れが、、、止まった。
「ざーんねん。もうあなた達は力を使えないわ。これは私の奥義。この技で何人も浄化師を葬ってきたのよ。」
「っ、、、月白!!」
桜月さんが魔物を斬ろうするが赤い糸に捉えられた。
「ねぇ、、、あなた名前、なんて言うの?桜月、、、綾星ちゃん?他の人はなんて言うの?言ってくれたらみんな苦しませずに殺してあげる」
「、、、誰が教えるかばーか」
羽衣で赤い糸を叩き切って桜月さんを解放する。
「残念だけど奥義を知った人は全員殺すことにしてるの。それが私が生き延びてきた秘訣。私、臆病だから」
「紫煙!!」
「光風霽月」
「月光・朧月夜」
雀宮さん、本願寺さん、榊さんが三方向から攻撃を仕掛けた。その間私は羽衣を目くらましに伸ばして伸ばしていく。
「ふーん、小賢しいのね。」
魔物はぞっとするような光を湛えた目で3人を捉えた。
「血毒霧」
赤い霧がぶわっと辺りに舞った。一番遠くにいた私はその様子がはっきりと見えてしまった。
「血、、、」
「がっ、、、がはっ、、、」
榊さんと本願寺さんは避けたけど雀宮さんはまともにくらった。その血を帯びた毒霧は、、、彼女の身体を蝕んでいく。
「この中で水晶の力がない人はあなただけ。水晶の力があると私の血の細胞は消えちゃうから。でも、、、なかったらどうなるのかしら?」
「ふっざけんじゃねぇよ!!!!!!!!!!!!」
夜を切り裂くような怒号。桜月さんの喉から発せられたそれはもはや悲鳴に近い叫びだった。
「桜月!!!」
水滝原さんの叫び声は届かない。
ただ桜月さんは、、、走った。
『絶対誰にも言うなよ。』
あの時水族館で桜月さんが明かしたこと。彼女の本心と生い立ち、祈りと願い。霞んだ希望と淡い夢。
私しか知らない。なら、私は、、、
桜月さんの心に従うしかないんだ。




