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鬱金香・雀

えっ嘘──────。


次の瞬間、私の目の前には7人の魔物。


「白銀。」


凜々しい声がして振り返るとそこには桜月さんがいた。


「よぉ。結城。生徒に紛れ込んでた魔物たぁお前だったのか。」


神楽さんと四ツ木さん。桜月に雀宮さんに水滝原さん。他にも色んな浄化師の人がいた。


「お前は誰だ?そこの別嬪さんの魔物。」


白い着物を着た女の魔物を中心に6人の魔物が立っている。その6人の中に、、、凛だったものの姿。


「心刻。4眷属の内の1人よ。あなたが妙な気配の浄化師?ありがとね。ここの生徒はみーんな美味しかったわ。あなたが無能だからこそ味わえた味。」


「ここの生徒はみんな濃い感情を持ってるのね。不思議。」


「それに今回のパーティーは色んな感情が生まれてる。私の部下にもたくさん栄養が行き渡ってて嬉しいわ。」


「随分とお喋りな魔物なんだな。」


そう言って全員が武器を手に取った。私も勿体ないけどドレスを破り羽衣を出現させる。


「ふうん。残念。もっとお喋りしたかったわ。」 


「刹那往来」


心刻がそう静かに言うと全方向から攻撃を仕掛けていた私達は宙に浮かんだ。


「凛っ!!!」


他の魔物達も飛ばされた中、心刻の傍に1人残った凛。


「だいっきらい」


そう小さくつぶやく声と共に、私と雀宮さんは空の彼方へ飛ばされた。



パーティーの空気は夜に切り裂かれて悲鳴が顔をだす。


(なんとかして着地しなくちゃっ、、、)


まばゆき!!」


技で衝撃を緩和して着地した。


「陽翠ちゃん!」

「雀宮さん!」


同じく飛ばされた雀宮さんが私の名前を叫び、駆け寄ってきた。


「陽翠ちゃん、大丈夫!?」

「大丈夫です!」


私達は迫り来る気配に備えてお互いに武器を構えた。


右?左?下?


違う。


「上っ!!!」


の七情、怨嗟」

の七情、狂喜っ!!」


目の前には二体の魔物。一人は黒い喪服のような服に身を包んだ男でもう一人は赤いワンピースを着た女。


「うまそうじゃのう、うまそうじゃのう!!」

「待て狂喜。この小さい方の女は厄介だぞ。分けさせろ。」


ぱちん、と音が鳴り、景色が回った。


「はっ、、、!?」


「ここじゃここじゃ!!ここで儂と踊ろう!」


そこはパーティー会場だった。


*****

「……足元から、引きずり込まれそう」


私のスニーカーが、深く積もった腐葉土に沈み込む。


地面は、数十年分の落ち葉と、誰かが捨てた古い教科書や、破られた写真、枯れた花束が混ざり合い、黒く発酵した「泥のスープ」と化していた。そこから立ち上るのは、甘ったるく、それでいて胃の奥を逆なでするような「魔物」の臭い。


頭上では、入り組んだ枝葉が網の目のように空を覆い、視界は鉛色の薄暗闇に閉ざされている。風が吹くたび、枝同士が擦れ合い、「ギギギ……」と、誰かの恨み節のような音を立てた。


「怨嗟」は、その森の最深部、ひときわ巨大な、幹に深い空洞を持つ古木の上に立っていた。


そいつの武器は、、、形を持たない、泥と鎖の塊だった。


泥の中からは、かつて捨てられた「誰かの愛用した品々」であろうものが、骨のように突き出している。


錆びた腕時計、割れた手鏡、片方だけの靴――それらすべてが、持ち主から切り離された時の「理不尽な未練」を、森の湿気を吸って増幅させていた。


(怨嗟、、、ですかねえ。ここまで名が体を表している魔物は初めてです。)


魔物の周囲では、時間が腐り始めていた。


私の周囲の草木が瞬時に黒ずみ、朽ちていく。


空間がぐにゃりと歪み、彼女の脳裏には、この森に「何か」を捨てていった人々の、醜くも切実な後悔が濁流となって流れ込む。


「、、、捨てたのは自分なのに、いざ無くなると取り戻したくなる。人間って、本当に身勝手ですねぇ。」


この物達からはそんな気配を感じた。


私は水晶の力がない。この状況をなんとかして陽翠ちゃんに加勢しないと。


この魔物は本体じゃない。ただの本体の一部にすぎない。


私はナイフを握り直した。カチリ、という微かな音が、森の沈黙を震わせた。


影の中から、泥を弾き飛ばされた。


「呪鎖・網代木」


魔物がそう言った。


「紫煙」


ここは森の中。体術を使って魔物を祓う私には格好の場所。


「憎い、、、憎い!!俺ばかり損をしているっ、、、!!あいつらを許さないっ、、、!」


怨嗟はそのようなことをぶつぶつと吐き出しながら私に鎖を向けてくる。


鎖、、、ね。鎖なら得意。それに、あの人の方がずっと速い。


『涼ちゃん!行くよー!』


稽古をお願いすると屈託のない笑みで返して絶対に付き合ってくれる。


『心晴の武器は特殊だからね!気をつけて!』


黒い霧と発狂するような恨みが鎖にまとわりついて一撃一撃が重い。その分当たれば死ぬな。


「そうですねぇ。許さなくていいと思いますよぉ。でも、その恨みを他人にぶつけて、自分まで汚物になる必要はないと思いませんかぁ?」


雀宮涼の瞳が、深く沈んだ沼のような「黒」に染まる。


私が戦う理由は正義感ではない。自分自身がかつて抱いた、決して消えない「心」を飼いならすためだ。


「忘れ草」


木で身体を支えて上から体重をかけて魔物の腕を切り落とした。


「どす黒い感情」が私へと流れ込んでくる。普通なら発狂するほどの憎悪はそれを静かに受け止めた。


「重いですねぇ。……でも、私のほうがもっと重いんですよぉ。」


少しだけ足先を掠って血が滲んだ。


「ずるい。ずるいんだよ!人を蹴落として得して生きてきたんだろうなぁ!俺はもうとっくに忘れられて消えたってのに!」


「へぇ、、、」


これ以上付き合うつもりはない。こいつは結構強いけど憎しみに任せた攻撃は隙が多い。ていうか動きが単純。


「あっ!!」


私はそう言って森の奥を指さした。


「はあ?」


そう言って魔物がそちらを見た瞬間。


「翠煙」


後ろから魔物の心臓を突き刺した。


上から飛び乗って。渾身の力で。


馬鹿みたいに単純で子供っぽくて卑怯な刃はざくりと心臓を貫いた。


「あ゛っ!?嘘だろ!?お前そんなこと、、、」


思ったよりこの魔物は馬鹿だったみたいで心底驚いた。



「えーと、こんな卑怯な手を使って申し訳ありませんねぇ。でも、こちらも死にたくないんですよぉ」



腐葉土に混じって灰になった魔物を見て己の醜悪さに惑った。


結構なことしましたねぇ、、、私。この魔物、全然キャラ立たずに終わってしまいましたよ。


「陽翠ちゃんのとこ行かないと。」


そう言って夜の闇に駆けだしていった。




こぼれ話


怨嗟は人を100人と少しほど食っていてかなり強かったのですが雀宮さんのアホみたいな戦略にひっかかって負けました。本当です。本当に怨嗟は強かったんです。

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