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私達に合う音

約束の週末。


「葵子お嬢様、今回はこちらをご用意いたしました。」

「ありがとうございます。」


きらきらした空間。


目の前にグラデーションを作るように並ぶドレスは本当に綺麗だった。


「好きなの選んでいいわよ!あげるわ。」


葵子が言うが普通にドレスなんて選んだことがないからわからない。


「葵子毎年ありがとね。」


「いいわよ!だってー、みんなと選びたいしー!」


たくさんの形とたくさんの色。


「みんなどんなのにするの?」


「私はミニ丈!楽だし!可愛いし!」


「私は普通にロングかなー?」


「陽翠は?」


「んん、、、別に、何でも良いかも。」


あっ、やべっ。


桜月さんに同じようなことを言った後のことを忘れていた。


「「「ふーん。何でも良いんだー!!!」」」


どうやら私は皆に世話を焼かれる体質らしい。


「んー、一応長袖がいいかな。寒かったらいやだし。」

「おっけー!任せて!」


まどかと葵子と椿と一緒にお店の中を回った。あまりに多い色のせいで目がクラクラしてきた。


「んー、これは?どうかな?」


まずまどかが手に取ったのはワインレッドのロング丈のもの。着替えてみるとなんか私には似合わない。私の髪や目は黒でも青寄りの黒だから合わないのかも。


「かわいい、、、けどなんか違うかな?」


椿はそれを見て次に緑色のオフショルダーを渡してきた。膝丈くらいの長さで可愛いけれどこれも私にはあってない気がする。


「陽翠は何となく緑じゃないのよね、、、こう、もっと青味がかった、、、」

「見てみてー!!これは!?」


そう言ってまどかが持ってきたのは黒色で辛うじて袖はあるものの露出が異様に多いドレス。胸元とかめちゃくちゃ空いてるし丈も短い。


「「「却下!!!」」」


「まあ、陽翠似合いそうだけどね。」

「、、、」


椿は自分の身体を見下ろし、恐らくつま先がしっかりと見えただろうことを確認してからまどかにその服をそっと返させた。


「私、胸元詰まってるやつにするわ」

「詰め物したらいいじゃん」

「偽ったら後が辛くなるのよ」


最後に葵子がトドメをさし、完全にノックアウトされた椿は幽霊と化した。


「あ、、、」


ふと私の目に一つのドレスがとまった。


「これ着てみてもいい?」


葵子たちが振り返ってこちらを見、ぱっと顔を輝かせた。


「いい、いい!着てみて!」


試着室の中に入って袖を通してみる。鏡の中に映る自分は、まるで見知らぬ誰かのようだった。


試着室の重いカーテンを開けると、皆がぱっと笑顔になった。お店の淡いオレンジ色の照明が、ドレスの裾に散りばめられた細かいスパンコールを反射して、足元に小さな星屑を散らしている。


選んだのは、真夜中の空を切り取ったような、深い紫がかった紺色のドレスだった。


(この色、、、あの色と同じ。花紺青だ。)


ゆとりのある袖は肘くらいで一旦絞られてからまた広がるデザイン。長さは足首くらいのロングで腰の下からたっぷりと揺れている。露出は比較的少ないのに雫型に空いた窓から肩が見える。


「やっぱり、もっと可愛いピンクとかの方が良かった?」


私が自信なさげに裾を掴むと、葵子はぶんぶんと首を振った。


「ううん、全然! すごく綺麗。なんていうか、大人っぽくて……ちょっとドキッとした。そのドレス、今の陽翠にぴったりよ」


「えっ、かわいっ、、、」


葵子とまどかの言葉に、胸の奥が少しだけ熱くなる。


「流凪くんとぴったりだよ!!」


椿が目をきらきらさせて言った。


「さーてと、次は葵子だよー!!」

「えっ、わっ私!?」


「今年こそ和水さん、落とすんだよー!!」


今度はまどかと椿が葵子を捕獲して私もすぐにドレスを脱いで元通りに掛け、加勢した。


「葵子は去年は桃色で一昨年はボルドーだったよね。」


「そうなんだ。葵子って赤系好きなの?」


「好きっていうか、、、そのほうが女の子っぽく見えるじゃない?」


そういう葵子は長くて艶のある髪の毛とふわふわの白い肌が目立っていてもう充分女の子っぽい。


「葵子が好きなの選んでみなよ。私もそうしたし」


「そうだよー!!葵子はかぁいいんだからどんなの着ても可愛いの!」


「えぇ、、、」


鏡の前に立つ彼女の指先が、しばらく迷ってからその一着に触れた。


ラックに並んだ色とりどりのドレスの中で、それは異質なほどに静かだった。混じりけのない、朝の光をそのまま形にしたような白。


「これにするわ」


ふわりと広がるチュールを手に取り、颯爽と試着室へ向かっていった。


少し艶のある生地と細やかな花の刺繍。レースの短い袖からは真っ白な腕がのぞいている。


上品で、気高くて、どこか可愛さも漂っている。


「一番、私らしいと思うから」


ちょっと恥ずかしそうに顔をそらして言った彼女の破壊力は抜群だった。


「かっ、かわっ、かわわっ、、、」


まずい。ほぼ膠着状態と化したまどかの絶叫への前座が聞こえてきた。椿もそれに気がつき、即座に自分と葵子の耳を塞ぎ、余った腕で私の耳も押さえた。


「可愛いいいいいいいい!!!!!!!!」


大地が割れ、シャンデリアが揺れた。気がした。


「やー!!!かわいすぎてかわいすぎて!!!!やばい天使!?大丈夫!?可愛すぎて和水さん死んじゃうよ!?」


限界突破したまどかの絶叫も一理あると思った。そのくらい彼女は可愛かった。


「葵子、すっごくかわいいよ!なんか葵子って感じ!」

「似合う似合う!!!最高!なにこれ可愛すぎ!」


「ほっ、褒めたって何もでないんだからねっ!!」


葵子の声とまどかの絶叫。椿のはしゃいだ声と私の弾んだ声はお店にかかったクラシックよりよほど私達にあっていた。










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