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あなたの抱えているもの

「おーい白銀。」


インターホンのカメラを覗き込む桜月さんの声で頭が徐々にはっきりしだした。


「おはようございます。桜月さん。」

「ん。おはよう。飯食ったか?食べてなかったら私が作るが。」

「お願いします。」

「了解。外出る準備でもしといてくれ。」


桜月さんは珍しくスカートを履いていて似合っている。私は桜月さんと色味を揃えようと黒色で袖口にフリルのついたブラウスとくすんだピンクのミニスカートを履いた。


髪の毛を丁寧に梳かしてヘアオイルを少しつけてから結ぶ。前髪は小さめのコームでさっと整える。


(目元、、、あんま腫れてないな)


泣いて赤くなった目元はすぐに冷やしたおかげでいつも通りの目元になっていた。


大きめな黒目はいつ見ても少し暗く見える。無駄に長い睫毛も大きい目も通った鼻も。


嫌いだ。


昨日瑠璃歌のことを思い出したからなのかいつもより少しばかりそう思ってしまった。


リビングに向かうともうすでに美味しそうな朝食が作られていた。さっと作られた朝食はクロワッサンと目玉焼き、サラダとコーンスープ。


「今日は水族館に行くぞ。ここなんだが。」


ご飯を食べている私の正面で桜月さんがスマホの画面を見せてきた。


「星街水族館リニューアル!!」


「へえ。綺麗なところですね。」

「最近リニューアルしたそうだ。昔碧と行ったことがあるんだが。」

「碧?」


碧って誰だ?本願寺さんの下の名前は、、、月乃だから違うし、桜月さんの友達?


「水滝原だ。女子みたいな名前だよな。本人が嫌がっていた。」


「女子みたいな名前といえば青藍学園の出帆と同じ組に水戸雫って人がいて、、、」


「やっぱ本人は嫌がるのかなぁ。」


「珍しい名前だと覚えやすいですけどね。私はよく宝石の方の翡翠って書かれますよ。」


陽翠という名前も白銀という名字も自分以外に会ったことがないから面白い。


「桜月さんも珍し目な名前ですよね。」


名字でなら寿高校の時の友達に綾瀬白雨あやせはくうという友達がいた。元気かな。あの子。


「そうだな。あまり見ないな。」


「よく考えると私の回りには珍しい名前の人が多いですね。出帆も水滝原さんも桜月さんも、あと雀宮さんも名字が珍しいですしね。」


「確かに雀宮は他に聞いたことがないな。本願寺さんもかなり珍しいし。」


「青藍学園の友達はみんな名字が珍しいですね。天幢寺とか伊集院とか都萌とか有栖川とか美姫とか花手毬とか」


「お金持ちのお家だからなぁ」


まあ確かにお金持ちのお家は名字が珍しい、という先入観がある気がする。


「さ、そろそろ行くぞ。」


私達は星街水族館へ向かった。


────────

「......!」


薄暗い空間に照明が当たってきらきらとしている水槽。


白い細かい粒の底砂と管理の行き届いている苔がちっとも生えていないそのガラスの箱の中には、優雅に泳ぎ踊る小さな海水魚たち。


たくさんの色の熱帯魚たちに出迎えられ、入場ゲートを通ってすぐのところで既に足が止まってしまう。


「懐かしいな。昔はもっとクラゲを全面に押し出した感じたった。」


マップを見ながら桜月さんが呟く。


「白銀は魚が好きなのか」


水槽の間近で魚を見ていた私に桜月さんが聞いてきた。


「はい。魚が好きっていうより動物が好きですね。小さい頃の夢は獣医でしたから。」


動物のお医者さんになりたかった。浄化師の道に進んだことで消えてなくなったけれどそれでも憧れの職業。いつかなれたらいいな。


「、、、そうか。」


私達は小さな水槽も余すこと無く全て見て、たまにボードに書かれた説明書きを語った。


「わあっ!!」


着いた大きなクラゲの大水槽はたくさんのクラゲが泳いでいる。


桃色、黄色、水色、紫っぽく見えるのもいる。レースみたいにふわふわ揺れていて綺麗だった。


「綺麗だな。昔と変わらない」


「水滝原さんとは何で来たんですか?」


「クインテットになったお祝いだな。私達は元バディであいつは祝ってくれる人が他にいなかったようだ。」


あら可哀想。クインテット昇格って結構凄いことなのでは?


「三年前のちょうど今くらいの季節に来たんだ。あいつ、私とイルカの名前が似てるとか言いやがった。」


「何て言うイルカだったんですか?」


七星ナナセ


なるほど。似ている。くすっと笑ってしまって桜月さんがむっとした。


「イルカショー、あるぞ。後で見よう。」


クラゲを堪能した後私達はカフェへ向かった。


「私来月誕生日なんだよ。」


唐突に桜月さんが言い出した。来月ってことは、、、六月?


「そうなんですね。なんか欲しいものとかありますか?」


「欲しいもの、、、?ないな。基本的に自分で買うし。」


「えー」


「気持ちだけ貰っておく。白銀は秋だよな?欲しいものとかあるか?」


「ないです。」


「そっちもじゃないか。」


文句を言いながら桜月さんは写真を探してきた。


「ほら、これ。三年前までこんな感じだったんだ。」


「へえ。確かにところどころ変わってますね。あれ?今日と同じ服?」


「そうだ。あれからそんなに着てなかったから着ようと思って。着る機会もなかったし。」


画面の中に写る桜月さんはピースをしていたり不意打ちされたような顔をしていたりと様々だ。


「ていうか私桜月さんになんかして貰ってばかりですね。お礼とかも全然できてないし。」 


なんか少し後ろめたい気持ちになって言った。最近人に迷惑をかけてばかりでなんだか気持ちが悪い。本当はこんな人間じゃないのに。


「お礼なんて別に、、、あ。」


「ん?」


「欲しいもの、今できた。」


「はい?」



「白銀が今抱えているもの、全部。」




こぼれ話

綾瀬白雨は寿高校で陽翠と同じクラスで仲の良かった子です。何も言わずに急に転校した陽翠のことをとても心配していてまた会いたいと思っています。

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