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可惜夜

久しぶりに見た傷は相変わらず汚いものだった。


服は長袖。夏は薄いシャツで学校に登校。浄化師の制服はゆとりのある大きめな長袖。私服もブラウスもしくはカーディガン。


(きったないなぁ、、、)


いつも見ないようにしてたからまじまじと見ると本当に汚い。


私には悪い癖がある。絶対に直せと桜月さんにも言われて治療を進められたけどなんとなく受ける気がしなくて断った。


右手で左手を抉るのだ。


何かに耐えるとき、泣きそうなときにこらえるためにやってしまう。僅かな痛みと痺れで気分をなんとか保つ。


もう痛みはないのに掴まれた瞬間に生々しい記憶が蘇って泣きそうになった。腕を掴まれて熱湯をかけられる。なんでかけられたのかなんて知らない。多分理由なんてない。


次の瞬間ぽすっと抱きしめられた。少しがっしりした身体は自分よりも体温が高くて温かかった。


(少し前にもあったっけ、、、)


今思えば私は何度も抱きしめられている。麗奈が死んだときもたくさん慰めてくれた。


でも今回は明らかに違った。優しい。今までよりずっと。今までにも増して。


優しく包み込まれた。


ごめんなんて言わないで。私が悪いから。朝が怖いなんて。起きたくないなんて。もうずっと過去のことなのに縛られたまま。どこへでも飛べるのに虫籠に囚われて。


「頑張ってきたんだね。もう大丈夫だよ。僕がいる。頼ってよ。僕だってちゃんとしてるよ。」


頼れるのかな。私は。


人は二回恋に落ちる。


一回目は愛を教えてくれるけど決して叶わない報われない恋。


二回目は温かく寄り添うような真実の恋。


一度離れた私は二回目の恋に落ちたのか。


この夜が明けないで欲しい。今だけは私でいられるから。


懸命に生きてきた。頑張ってきた。頑張ったから。


あなたも頑張ってる。無責任なんて言ってごめんね。いつもいつも、ありがとう。


温かい腕の中、私はゆっくりと瞼を閉じた。


*******

「陽翠が体調不良で一回家に帰った!?!」


都萌まどかは絶叫した。何気に一番起きるのが早い私はみんなの分の朝ご飯作っちゃうぞ☆と意気揚々とフレンチトーストを作りみんなを起こそうとまず陽翠の部屋へ突撃した。


「おっはよーー!!!今日の朝はーー!!!

フレンチトーストでーす!!!!」


朝から超ハイテンションで扉を開け大音量で声をかけたが、陽翠がいない。


えっ


いない。


いない!?!?!?!?



「やばい!!!!起きて起きて起きて!!!!私達のプリティーパーフェクトガール陽翠がいなーーーい!!!」



椿と葵子を私物の喋るサボテンを片手にたたき起こし、3人で探しまくった。


「えっ、いない!?そんなことある!?もうどこかに行ったんじゃないの!?」


「そんなことないよ!私一番最初に起きたもん!」


「こっちにもいないわ!」


わちゃわちゃわちゃわちゃみんなで探していて警察に連絡しようとしたときに。


「白銀さん、体調不良で一回お家に帰ったわよ」


と高等部一年女子寮監督係、英語担当の鶴咲りや先生に言われた。


「まず先生を頼ってよ、、、なんで先に警察がでてくるのよ。」


よよよ、と泣きまねをする鶴咲先生は基本的に「りやちゃん先生」と呼ばれている。だって歳近いし。


「りやちゃん先生なにそれ!?私達聞いてない!?」


「昨日の夜に体調不良で帰ったわよ。特に異常がなさそうだったら明日には戻りますって。」

「キノウノヨルニタイチョウフリョウデカエッタワヨ。トクニイジョウガナサソウダッタラアシタニハモドリマスッテ。」


私の手に持った喋るサボテンがりやちゃん先生の言葉を復唱した。まじでやめれ。笑うから。


葵子と椿は決壊して後ろで笑い転げている。


「そうなんですか、、、」


昨日連れ回しすぎたかな、、、体調大丈夫かな、、、とりあえず私達の朝食のフレンチトーストは三分の一ずつ量が増えた。


******

白銀が帰ってくる。らしい。


昨日の夜中二時頃、神楽から唐突に連絡が来た。


「白銀を一旦返す。白銀が大丈夫そうだったら明日にでも返してくれ。」


なんちゅう非常識な時間帯にメッセージを送ってくれるんだよ。うとうとしてたらブルーライト光って目がかっぴらいた。不眠症の眠気を返せ。


電話で事情を聞くと屋上で流凪と怒鳴り合いをしていたらしい。まずこの時点でびびった。え、さっきまで友達達とらんらんしてたよね?それで帰ってきて怒鳴り合い開始?


このままでは不審者情報が入ると四ツ木と共に止めにいき、2人で話し合わせた。部屋から出てきた流凪は


「陽翠寝ちゃいました。明日だけでも桜月さんの元に返すことはできませんか?」


と言ったらしい。ここで頼られたのが嬉しい半分何があったんだ、と思う気持ち半分。だがそこに付け加えられた


「陽翠は桜月さんのことを一番信用していると思うんです」


に心配が押し切られ嬉しさが全開になった。


早速3課のリーダーに仕事を押しつけ休みをもぎ取り、白銀とどこかに行こうと段取りを決めだした。


ぱたぱたと脚を揺らしながらスマホを眺める。どこがいいだろうか。


「ショッピングモール、、、カフェ、、、遊園地、、、プラネタリウム、、、?」


何かどれもしっくりこない。うーん、どうしよう。


「あ。」



星街水族館リニューアル!ここでしか見られない魚や展示、おしゃれなカフェスペースも!



きーめた。


水族館に行こう。



こぼれ話

陽翠の腕の火傷は引っ越してすぐにできた物。この火傷ができてから右手で左手を抉る癖が始まりました。


こぼれ話

まどかは料理が大得意。たまにみんなの分のお弁当を作ったりお菓子をつくったりしています。


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