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夜景

「わ!何この子!お肉運んできたよ!」

「どうやって頼むのかしら、、、難しいわね、、、」

「真姫!お肉の焼き方ってこれであってる?」

「え、わかんないよ!自分で焼いたことないもん!」

「この子お肉とったのに帰らない!」

「柚希、そのボタン押すんじゃない?」


(お嬢様だ、、、)


服を買い、雑貨を見、カラオケに行き、そして焼き肉屋に来た。


「はい、この辺焼けたよ!」

「美味しそう!白銀ちゃん、ありがと!」


梅宮先輩と花手毬先輩、椿、朱音、葵子は焼けたお肉をマイペースに食べ、まどかと真姫はタッチパネルの操作に挑戦し、凛と私がお肉を焼いている。


「おいしー!!!」

「白銀ちゃん、最高!」

「おいし!」

「おいしい、、、です、、、」

「とっても美味しいわ。ありがとう。」


このお嬢様達と遊ぶのは三歳児を散歩させているようでとても楽しかった。ていうかみんな初めての事に夢中で面白い。初めてのカラオケに目を輝かせ、初めて自分で買う洋服をるんるんで選び、初めてのゲームセンターのうるささにひびる。


この何不自由なく育てられてきたでたろう八人のお嬢様と平凡とはかけ離れて生活してきた私。どちらが幸せだろうか。


外のことをほとんど知らず可愛いまま育った蝶か。それとも羽をちぎられようと結果的に自由に飛ぶ蝶か。


「きゃー!!これ美味しそう!壺、、、ハラミ?ですって!長ーい!」


トングで長いハラミを壺から引っ張り出し、きゃあきゃあはしゃぐ凛とまどか。


「わ!すごい!これ切ってたべるんだよね?」

「多分そう!はさみついてきたし!」


ハラミはだんだん焼けてきてタレの焦げる香ばしい匂い。


「すいちゃん切れる!?」

「任せろー!!」


長いハラミをキッチンバサミでざくざく一口サイズに切っていく。


「んー!!美味しい!」

「これは元からタレに漬けられてるんだ!」

「お米美味しい!」

「このハサミ、うちの子会社が作ってるやつだわ。」


最後にさらっと凄いことを言った人が居たような気がする。


「今日は私のお父様がお金だしてくれるから!食べまくろう!」


真姫がドヤ顔で言う。


「元をとるってこういう感覚なのね、、、」


葵子が幸せそうにお肉を食べながら言った。

もきゅもきゅと膨らむ桃色の頬が可愛すぎる。ハムスターなのかもしれない。


結局時間ぎりぎりまで居座ってご飯を食べた。

─────────

「さあ、お待ちかねの観覧車でーす!!」

「いえーーーい!!!!」


四人乗りとのことで三人ずつ乗ることになった。私は葵子と真姫と乗ることになった。


「わー!!すごい!動いてる動いてる!」


徐々にじりじりと観覧車は回り、上がっていく。下の方には宝石箱をひっくり返したような夜景が広がっている。


「うわぁっ、、、!!」


煌めく夜空が地面にも水鏡で写ったような幻想的な情景に心を奪われた。


「すごいよ!すごい!」

「とっても綺麗だわ、、、!、」


「ねえ、陽翠!!写真とろう!」


皆で笑顔を作ってぱしゃり。その後に真姫は加工アプリを起動させてそのアプリでも写真を撮った。


「鱗粉みたいなフィルターね。」

「葵子ぉ、、、」


再び私達は目の前の夜景に目を向ける。きらきらした光は昼間のように明るくて目がくらむ。


「これ、全部人なんだよね。」

「そうよ。全部、人が生活した印なの。」


そうか。これ、全部人なのか。この夜景の元には無数の人がいてそれぞれの人生と物語を紡いでいるんだ。


「人多っ」


真姫がムードも何もないことを言い放ってきた。


「あのゴンドラ、椿と梅宮先輩と花手毬先輩よね。」

「その下は凛とまどかと朱音?」


この夜景と和やかな日々はいつまでも続いて欲しい、切実に願った。


───────

「じゃ!またね!」

「おやすみー」


葵子の家の車で送って貰って私達は家に帰った。


「疲れたぁ」

「楽しかったね!」

「写真、後で送るわ」


思い思いの感想を述べて私達は部屋に帰った。身体を引きずってお風呂に入り、髪を乾かすのも面倒くさくてそのままベッドにダイブした。


ピロン!


「ん?」


メッセージが届き、葵子かなと思い見てみると出帆からだった。


「今から会える?会えるんだったら屋上来て」


********

雀宮涼は恵まれていない。


水晶の力はなく、要領が悪く、血反吐を吐くような努力で無能な自分を覆い隠してきた。


血を吹き上げ倒れた魔物を一瞥した。自身の肩からも血が流れていて手当てするのが面倒臭い。


(陽翠ちゃん、最近会っていませんねぇ)


今は四眷属の浄化、長期潜入を行っている。本当は私が年齢を誤魔化して参加するはずだった。桜月さんが失った青春を楽しんでこいと。


断ってしまった。自分なんかには勿体ない。才能溢れる若手。陽翠ちゃんに流凪くん。年齢もちょうど良いし青春を体験して欲しかった。


、、、いや、嘘だ。嘘ではないけど嘘だ。真っ赤な嘘だ。赤い糸でラッピングされた真っ赤な嘘だ。


死にたくない。死にたくない。生きていたい。


私は両親に愛されて育ってきた。近所の人にも可愛がってもらったし私自身も元気の良い子供だったので好かれた。


15で1人になって浄化師になることを決めた。そして最近わかった事実。実家の近くに行くと18年ほど前にそこに住んでいたおばあさんに言われたんだ。



「あんた涼ちゃんかい。大きくなったねえ。お姉ちゃんとはうまくやってるかい?」



お姉ちゃん?姉?私は一人っ子のはずだ、と伝えると確かに私には五歳上の姉がいたと言われた。


このお婆さん、ぼけてるんじゃないか。近くを見渡したけど付添人のような人は見当たらなかった。


とりあえずその場は誤魔化したけど姉という言葉は私の頭を巡って離れなかった。


お姉ちゃんがいたらどんな人なんだろう。優しいのかな。厳しいのかな。どんな見た目で、どんなことを話すのかな。落ち着いた人?私みたいにおちゃらけた人?何が好きで、どんな趣味なのか知りたい。


「姉さん、、、」


魔物が小さくつぶやいて塵になった。どことなく不快な気持ちが湧き上がってきて魔物の残骸を一瞥すると乱暴に歩き出す。


姉はどんな人なのか。今どこに居るのか。何で離れ離れになってしまったのか。


「名前は、、、確か、ちおりちゃん、だったっけねぇ」


(ちおり姉さん)


私はまた夜空を駆け抜けた。



陽翠に会いたい。

僕はそう思った。この前屋上でご飯を食べたときから全然会っていない。それに陽翠と2人だけで会うことはまずなかった。


(どうしよう、、、)、


心はゆらゆら揺れてやがてスマホを手に取った。


なんて言おう。会いたい?そんなことは僕には書けない。


結局素っ気ない文面になってしまったけど


「いいよ」


の返事が返ってきた。


僕はジャージの上にパーカーを羽織って部屋を出た。

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