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私の知らない笑顔

「陽翠、みてみて!あれ!」


お昼休み、椿に指さされた方を見ると葵子と身長の高い男子が喋っている。葵子は白い肌を桃色に染めて恥ずかしそうに、嬉しそうに笑っている。


「あの人が和泉さん。葵子の好きな人!」


その和泉薫なごみかおるは葵子と家が近く幼なじみらしい。葵子の片思い歴13年。その辺の夫婦か。


「陽翠、椿!屋上で一緒にお昼食べない?」


凛がひょこっと扉からこちらに顔をだして言った。凛は最近よくうちの組に来てお昼を一緒に食べようや勉強教えてと言いに来る。やっぱりこういう仲の良い友達って作ろうとして作るものではないからありがたく思う。


「いいよ!陽翠と凛先に行って屋上で待ってて!」


椿がまどかを誘ってタイミングを見計らい、葵子も連れてくるようだ。


「うちの学校の屋上結構綺麗なんだよ!花とかいっぱい植えてあるしベンチとかも可愛いの!」

「そうなんだ。楽しみ。」


凛はきらきらした目で笑って二人で屋上に移動する。今日はいつものゆる巻きにふわふわにほぐした編み下ろしを追加していて特別感がある。小さな白いリボンが結び目についていて可憐な雰囲気をだしている。


「髪、今日は編んだんだ。可愛いね!」

「えっ!嬉しい!!頑張ったんだ!」

「髪の毛巻くの上手だね。私巻いたことないからなぁ」

「ありがと!たくさん練習したんだ!」


私の髪はロングのストレートでポニーテールにしている。白いリボンは今や私のトレードマークみたいな物だ。


出帆、巻いたらどんな反応するかな。


いや、待って待って!!この前メッセージでクラスの女の子が何か妙に近づいてくるのが怖いって言ってた。髪の毛も香水も作り込まれてて怖いって。


私もそんなことしたら「あざとく可愛く見せようとする女子」に分類されちゃう!?


「陽翠?どうしたの?」

「うぇっ!?なっ、何でもないっ!!」


むんっと凛が眉を寄せて頬を膨らませる。ハムスターみたいになったほっぺたをつんっとつつくとぷにっとした柔らかい感触。


『陽翠もちもち!めちゃくちゃ伸びる!』


麗奈はよく私の頬をもちもちと触っていた。まどかや椿もよくぷにっては癒されているパワースポット。凛もぷわぷわでさわり心地がいい。


「ぷにぷに」

「陽翠も!!」


負けじとぷにり返す凛と私は屋上に着いた。


「わあっ!!」


春の花がきらきらと光り輝くように咲いている。辺り一面に香る甘い香りが心を洗い流す感覚。



「、、、陽翠?」



振り返ると出帆が立っていた。購買で買ったであろうメロンパンを持っていて隣には三人の男子がいる。


「えっちょまって!もしかして楓組の白銀さん!?」

「あっ!楓組の転入生の?ていうか結城もいるじゃん。」

「、、、。」


それぞれ赤っぽい髪の毛の人、ストレートの軽めのマッシュの人、センター分けの人。


「初めまして!!俺、宇佐美勇悟うさみゆうごって言うんだよ!よろしくな!」

「僕は楓真絢人ふうまあやと。白銀さんは出帆の知り合いなの?」

「、、、水戸雫みとしずく。」


「陽翠、ここでご飯食べるの?それなら一緒に食べようよ。」


出帆がすばやく私の手を取ってベンチに向かっていった。凛が驚いたように眉をひそめている。あれ、同じ組だよね?


「うわー!!流石いず!!イケメンにしかできねぇー!」


宇佐美さんが囃し立てたのでそれとなく手を解いた。


「凛、どう?皆で食べる?」

「、、、いいけど。」


「陽翠ー!ってあれ!?雫!?なんでいんの!?」


椿がまどかと葵子を連れてやって来た。


「あっ、椿!」


椿がとてとてと駆け寄ってきて水戸さんのことを見た。


「雫!?珍しい!いつもの陰気な雰囲気はどうしたの!?」

「、、、下の名前で呼ぶな。」

「あー!!そうそう!白銀さん、こいつ下の名前で呼ばれると怒り出すから気をつけろよ!」


私達は大ぶりの木製ベンチとテーブルの席に座った。


「はーい!また買ってきたよ!どデカ卵蒸しパン!前買って美味しかったからさ!」


まどかはまた卵蒸しパンを買ってきたらしい。皆でふわふわをちぎって口に運ぶ。


「これ買ってる人居たんだ!いつか買ってみようとは思ってたんだけどデカすぎるかなって思ってたんだよ!」

「美味しいよ!これ。皆で分けるのにちょうどいいからさ!」


宇佐美さんとまどかは意気投合しているようだ。出帆は私の向かい側に座っていて私は凛と葵子に挟まれている形になっていた。


「白銀さん、出帆の友達だったんだね。」


「ちょまって!今気づいた!いずのアイコン、白銀さんと撮ってんだ!」


一瞬で空気が止まった。まどかの目は一瞬で光り輝き、椿の身体はもうすでにこちらに乗り出している。葵子の形の良い唇も弧を描いていて、凛は固まっている。


えっ。

えっちょっまって。


出帆の方を見るとぽかんとしている。確かに出帆のアイコンは私とのツーショットだ。えっ、変えなかったの?あれ。



「「「ええええーーーーーーーー!!!!!!」」」


女性陣の絶叫が澄み渡った青空にこだました。


「どっどっどっどういうこと!?えっ二人ってそういう、、、!?」

「ええー!」

「陽翠、なにそれ!?私知らないわ!!」


出帆はばっとスマホを取り出して何やら操作をしている。


「あ、いずアイコン変えた。」

「夕焼けの写真になってる」


この一瞬で出帆はアイコンを変えたらしい。何という早業だろうか。


「前から仲良かっただけだよ!ね?出帆?」

「、、、うん。」


不満げな顔をしているけれどこれでとりあえずは終了だ。


「なぁんだ。」

「ちぇー。」


唇をとがらせるまどかと椿。残念だったな。二人とも。

********

ほっぺ、触られちゃった!!


ふわふわした気持ちの中、屋上を目指す。ぷにって!ぷにって!この感覚、一生忘れない。


髪の毛も褒めてくれた!結び目の白いリボンは陽翠とお揃いにしようと思ったんだ。


にこにこ笑っている陽翠が眩しすぎる。ぴかーんって。向日葵が咲いたみたいな表情は思わずにやにやが溢れ出た。


宙に浮かびそうな気持ちの中、


「、、、陽翠?」


と言う声が聞こえてきた。


男の子の声。陽翠のことを名前で呼んでた。振り返ると同じ組の転入生の流凪出帆だった。


次々と同じ組の男子たちが現れて話しかけて、私だけの陽翠じゃなくなっていく。


「陽翠、ここでご飯食べるの?それなら一緒に食べようよ。」


そう言って流凪は陽翠の手を掴んだ。


手を、掴んだ。


時が止まった。感覚がした。


何で陽翠に触ってるの?陽翠は嫌がらないの?何で陽翠のことを名前で呼んでるの?



頼むから、頼むから。


頼むから!!!


今すぐにその手を離せ!!!!



思いが伝わったのか2人の手は離れた。陽翠から解く形で。


良かった。思い違いだった。良かった。


椿たちがやってきた。まどかがまたどデカ蒸しパンを買ってきて、皆で分けた。


私は陽翠の隣の席。


あいつは向かい側。


それなのに、ほんの少しの優越感もすぐに消えてしまった。


「ちょまって!今気づいた!いずのアイコン、白銀さんと撮ってんだ!」


は?


すぐに確認すると流凪が陽翠の肩を抱くような距離感の写真だった。


陽翠も普通の顔。むしろ私の前よりも柔らかい、、、笑顔。


私の知らない、見たこともない笑顔。釘付けになったまま固まった。


指先が冷えて心臓がどんどん速く打つ。気持ち悪いくらいの鼓動と背中をつうっと伝った冷や汗。奥歯が砕けるほどに噛みしめて、ぎろっと前を見据えた。


すぐに憎たらしいアイコンは紫がかった青と橙のグラデーションの夕焼けの写真に変わった。


「前から仲良かっただけだよ!」


その言葉が頭に入らなかった。


仲良かっただけでそんな距離感?葵子と和水さんも、椿と水戸だって。そんな距離感じゃない。


違う。違う違う。違う違う違う。違う違う違う違う。違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!!!!!!!!!!!!!


陽翠は好きな人なんていないって言ってた!!言ってた。言ってた、、、?


「もしいたらどうする?」


言ってた?言ってた。言ってた!本当に居る人はそんなこと言わない!陽翠はそんな曖昧なこと言わない!


私は願ったんだ!

祈ったんだ!

繋いだんだ!


、、、本当に?


間違いはなかった?ないと、言いきれる?断言できる?


愛。哀。あい。


あいを送ってあいをもらってあいして、あいしてほしいって。


考えるな。


そんなわけない。


運命の赤い糸はもうすでに絡まり始めた。







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