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恋衣

「恋衣」という言葉がある。らしい。離れない想いが心にまとわりつくこと、という意味だ。僕は今恋衣にとらわれているのかもしれない。


いつからだろう。陽翠のことが好きになったのは。会ったときからな気もするし最近な気もする。でも、気持ちを伝えたいとは思えない。


思い出せない記憶、覚えられない出来事、死と隣り合わせで細い綱を渡るように生きている。明日死んでしまうかもしれない。全て無駄になるかもしれない。


朝を迎えるたび。

夜を受け入れるたび。

陽翠のことを見るたび。想うたび。


いつもほっとするんだ。


こんな不安定な状況で自分の好意を明確にしたくない。


伝えるのが怖い。嫌われちゃったらどうしよう。迷惑がられたらどうしよう。


鈍く痛む頭のせいで思考がネガティブになる。だけど、


僕は陽翠が好きだ。


この気持ちだけは忘れたくない。


────────

目が覚めると隣に陽翠がいた。閉じられた瞼は長いまつげが強調されていて白い肌に映えている。パジャマのチャックが下がっていて襟元から真っ白な首筋と鎖骨、豊かな胸が見えていた。


陽翠がいる。


ベッドで。


隣で。


一緒に寝ている。



「!?!?!?!?!?」



声も出せずに驚いた。僕、昨日なにした、、、?思い出せ、思い出せ、、、


覚えてない。


やばい。わからない。なんで一緒に寝てるの!?


「んんっ、、、」


陽翠がゆっくりと目を開けた。


「出帆、おはよ。大丈夫?もう頭痛くない?」


「なっ、、、なんでっ、一緒に、寝てるの、、、?」


「えっ、なんでって、、、出帆が寝よって言ったんじゃん」


覚えてない!!なにそれ!?僕なにしてるの!?


「えっ、ほんとにだいじょ、、、、

「チャック!下がってるから!その状態で起き上がらないで!!」


パーカー風のスウェットが重力に従って下りたら間違いなく下着が見える。僕は光の速さで陽翠のパジャマのチャックを閉めた。

心臓がものすごい速さで打っていて顔が熱い。


「えっ、ありがと、、、ほんとに大丈夫?頭痛くない?」


「頭、、、?大丈夫だけど、、、」


頭?なんで急に頭なの?昨日打ったっけ?


「、、、まあ、大丈夫なのかな?起きれそうだったら起きてご飯食べよう。もうお昼だけどね。」


さらりと言った陽翠がリビングに向かった。1人部屋に残された僕はスマホを確認すると水滝原さんからラインが入っていた。


「流凪、大丈夫か。」

「昨日何かあったんですか。」

「お前が頭痛で倒れて病院に運ばれた。今日の仕事は休みだ。」


僕が頭痛で倒れたのはわかった。わかったけど、、、


「なんで隣で寝てたの、、、?」


僕が一緒に寝ようと言ったらしいが、記憶がないことが一番怖かった。


*********

(出帆、大丈夫かなあ。)


昨日急にうずくまって病院に行った。本当に痛そうで辛そうで。記憶を無くした副作用なのか知らないけれどものすごく理不尽に感じてしまった。


出帆は何も悪くないのに。


なんで苦しまなきゃいけないの。


頭の中でもやもやとこだまして離れない。

それにしても、、、


(出帆、あったたかったなぁ、、、)


握った手から伝わる温度。自分より幾分高い体温と身長。苦しそうに歪んでいた顔が緩むのを見届けてから私も眠りについた。


「、、、なんであんなに焦ってたんだろ」


尋常じゃない焦り方だった。いつもクールで浮世離れした印象だったのにめちゃくちゃ焦ってた。可愛かったけれども。


ピロン


桜月さんからラインが届いた。


「仕事終わった。本願寺さんとショッピングに行く。欲しいものはないか。」

「食器用洗剤がなくなりそうなのでそれを。」

「プレゼントのつもりで言ったんだが。」

「すみません。」

「まあいい、流凪は大丈夫か。」

「昨日のことは覚えていないようです。」

「そうか。ちゃんと薬飲ませろよ。」


お昼ご飯、どうしようか。さらっと食べられそう。かつ、朝は食べていないのでお腹にたまる物がいい。


「これだな。」


とりあえずうどんにすることにした。


あったかいうどん。出汁はパック。とことん楽をしたい気分。お揚げやら葱やらを足せばまあよしとしよう。


「陽翠、、、。」

「ん、出帆。もうすぐできるから座っといていいよ。」


「あのさ、、、僕、何もしてないよね?」

「ん?どういうこと?」

「昨日、、、一緒に寝た、、、だけだよね?」

「そりゃそうでしょ。その他になにかあるの?」


随分と変なことを聞いてきた。うどんができあがったので食卓に運んで食べる。


「今日、仕事休みだよ。何かする?」

「んー、何しよう、、、」


特にやりたいことがない。やりたいこと、やりたいこと、、、あ!


「今日の夜、一緒にご飯食べに行こうよ!」

「外食?」

「そう!出帆と行ったことなかったからさ!行こう!」

「いいね。」


外食。何気に久しぶりかも。何食べに行こうかな。


「何食べたい?」

「なんでも。陽翠は?」

「んー、そうだなぁ、、、」


桜月さんと雀宮さんと行ったのは焼き肉。本願寺さんとはカフェで麗奈とはアイス。夜ご飯だからな、、、


「お肉食べに行こう。」

「やった。」


今日の晩ご飯はお肉に決定した。

おまけ

水「どうかしたのか?」

流「朝起きたら隣に陽翠が寝てました。」

水「待ってろ。桜月に相談してくる。」

流「やめてください。」

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