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桜月綾星は語りたい

そのあとに契約の話や今後の話をして、桜月さんと雀宮さんがご飯に連れて行ってくれた。


「かなり例外的なケースだがもう今日から白銀は会社で寝泊まりしてもらう。」


結局高校は中退することになった。友達もいたし成績も良かったけど特にやりたいこともなかったので未練はない。


「会社に寝泊まりするところなんてあるんですね」

「併設されているマンションがあるからな。」

「とりあえず陽翠ちゃんは私の部屋でーす!」


雀宮さんはもうすっかりおちゃらけている。


「荷物とかはどうしたらいいですか?」


元々荷物なんてほぼ無いに等しいけれど。


「明日私と涼がデパートに連れて行ってやるから好きなのを選べ。会社の金だから高いやつを買ってやる。」


今日の飯も会社の金だしな。といいつつ届いたお肉を網に乗せる。焼き肉なんて久しぶりだ。五年ぶりくらいかも。


「ところでなんだが、流凪とはどういった関係なんだ?」


出帆も浄化師として働くそうだ。記憶をなくして魔物を憎む気持ちだけが残ったようなものらしい。


「幼なじみですよ。小さい頃から仲が良かったんです。よく気にかけてくれていました。」


父から殴られて家から追い出されて泣いていたときにそばにいてくれた。下手な慰めも無かったけれど心から優しさが伝わる温かい手を思い出す。


「そうか。」


桜月さんは特に深入りしてこない。どこかクールで浮世離れした印象だった。


「陽翠ちゃんと流凪くんは私が住んでいるマンションの上の階に住むことになるよ!何かあったら頼ってね!」


雀宮さん、あなたが頼ってきそうです。


「家事とかはできるのか?できないのなら涼に教えて、、、もらえないか。」

「得意料理はゆで卵ですからねぇ」


それは料理じゃない。


「家事はできます。生活能力も高いつもりです。」

「そうか。涼を頼んだ。」


頼まれちゃった。

熱々のお肉でネギ塩をくるんで口に運ぶ。美味しい。


「流凪くんはひすい、という単語は覚えていたが白銀のことを覚えているわけではない。脳に大きな傷があるわけじゃなくて精神的なものだからもしかしたら白銀に会うことで好転するかもしれない。」


チシャ菜を口に挟んで豪快に口にカルビを押し込む桜月さん。細いのによく食べるなぁ。


「いきなり流凪くんと住みだすんじゃなくて少しずつ慣れていくのが正解だと思う。それに」


流凪くんには才能がある、と。


なんと出帆は車で雀宮さんが言っていた身体から武器を作り出すことができるらしい。肩あたりから刀を引っ張り出すことができるそうな。


「流凪くんの攻撃は水のようになめらかで力強い。彼はそのうち最強の駒になるだろう。」


そうか。出帆、強いんだ。


「明日買い物をしたら白銀も訓練に入る。特別に私が指導する。」

「はふはふひはんはひほうふるんれふかー」

「食いながら喋るな。」


雀宮さんはもぐもぐ咀嚼してからごくんっと飲み込んで


「桜月さんが指導するんですか。」

と言いなおした。


「そうだな。白銀は身体能力も高いようだし期待しているぞ。」

「わかりました。」


「浄化師の浄化というのは分類があってな、

水、光、太陽、月、煙がある。そのうち水、光が扱える人は格段に少ない。私は月を扱っていて涼は煙を使っている。

流凪くんは水が合っていそうだから水で訓練している。ただ突き刺すだけでも魔物は死ぬが、それは低級な物だけだ。独立した魔物には効果がない。」


すごい。真面目な話をしているのにさっき桜月さんが頼んだ上ロース十五皿が気になって話が入ってこない。


「もしかしたら白銀には光が合っているのかもしれないな。」


「えっ?」


「お前には光が見える。名前の通り、陽が見えると言った方が正しいかもな。しかも清らかだ。汚れていない。水晶の力も使えるとしたら最強だ。」


「すみません、何を言ってるんですか?」


「こういう人なんですよう。私なんか見た瞬間『煙だな』って言われたんですよ。もっとキレイなやつが良かったなぁ。」


えっ酔ってます?ろれつ回ってなくない?


「こいつはソフトドリンクでも雰囲気で酔えるんだ。未成年なのに。」

安上がりな、、、


「水晶って言うのは浄化とはまた違う。どちらかというと体質だな。そいつがいるだけで場が浄化される。神社の人バージョンみたいなもんだと思ってくれ。」


わかりづれー。ていうか上ロース十五皿の迫力えぐー。店員さんの腕ぷるぷるしてんじゃん。店員さんも一気に運ばなくていいのに。


「水晶の力はある程度鍛えないとわからないがお前は水晶の力が使えそうだ。私もちょっとだけならあるぞ。」


むっ、と手のひらを上に向けて力を込めるとぼんやりした桜色に光る玉が出てきた。


「これが水晶の力の象徴だ。これがあるだけで魔物を弱らせることができる神アイテムだ。」

ちょっと誇らしげでかわいい。


むふふっとした顔を真顔に戻して桜月さんは


「お前は大凶明媚については聞いているか。」


だいきょうめいび。誰。知らん。初耳。


「知りません。」


「そうか。大凶明媚は魔物の頂点、諸悪の根源と考えてくれていい。あいつは1500年以上前から生きている独立魔物なんだ。彼女は人間でありながら初めてこの世に魔物を作り出した。今いる魔物はすべて大凶明媚の眷属であり、大凶明媚が死ねば死ぬ。」


トングでお肉をひっくり返す。私も続いてお肉をひっくり返した。


「ごく稀に魔物を作り出す人間がいる。抑圧された環境の中、どこにも行けない感情が固まってそのような魔物が創り出されるんだ。大体の場合、そのような魔物は人間ごと殺してしまう。その人間自体が魔物になってしまうから。」


そこで一区切りおいて焼けた肉を口に運んでいく。三枚重ねてご飯に乗せ、それを一口で食べている。


「私たちの目的は大凶明媚の討伐。1500年浄化師が追ってきた独立魔物を殺してこの世から魔物を消し去るんだ。」


雀宮さんは黙ってカルビを食べている。こっちもよく食べる。


「大凶明媚っていうのは殆ど痕跡がないんですよぉ。何かを求めるように人を殺して、殺して、仲間を増やしているんです。」


やっと口を開いた。雀宮さんは酔っているような、真面目なような不思議な表情をしていた。


「大凶明媚の手がかりがつかめるまで、他の魔物を狩って行くのが私たちの仕事だ。わかったか。」

「わかりました。」

「そうか。それじゃあ会計をして雀宮を何とかして、雀宮の家に泊まってくれ。私は雀宮の隣の部屋だから何かあったら呼んでくれ。」


代金なんと12000円。女性3人で食べる量なのか。これ。


「帰りの車は私が運転する。雀宮に任せるよりも安心だろう。」


任せてくれ、車庫入れ以外は得意だと。


浄化師は全員揃って車庫入れが苦手なんだろうか。







こぼれ話3

浄化の種類というのはパワーストーンの浄化をイメージしています。水は流水で清める、月は月光浴、太陽は日光浴、煙はセージの煙にくぐらせるような物のイメージです。月と太陽をまとめた物が光で、扱いづらく使えるのは浄化師の中でも0.5割くらいしかいません。

こぼれ話4

雀宮さんと桜月さんは会社にいるときはリボンのついたブラウスとパンツの制服を着ていますがご飯に行くときは雀宮さんはワンピース、桜月さんはジーパンとパーカーに着替えています。

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