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白銀陽翠はこの美しい世界がわからない・天音麗奈は美しい世界を走り終えた

左腕を失った麗奈。その身体にはもう多すぎるほどの量の血が流れ出ていた。


「嘘でしょ、、、れな!!れな!!!」


「陽翠、、、」


げぼっと血を吐き出した麗奈。麗奈の血がスカートに丸く広がって。桜月さんも、出帆も絶句していた。


「陽翠、ごめんね。明日、遊べないや。プリン屋さんも、行けない。」

「そんな、、、やだ、、、やだよ、、、」


指を絡めて握った麗奈の右手は急速に冷えていって。


「誘ったの、そっちじゃない、、、。なんで、なんで、、、しんじゃやだよ、、、」


涙が頬を伝う。泣けないなんて思ったのが間違いだったんだ。私は最初から泣けていた。それを隠してたんだ。


麗奈はまだ17だ。弟が居る。家族がいる。優しくて、温かい麗奈から優しさが血に溶けて流れ出ていくようだった。


「ねえ、陽翠、、、」

「なに、、、」

「ありがとう。友達に、、、なってくれ、、、て、、、陽翠は、高校のこと、、教えてくれたよね、、、一緒に遊びにも、、、行ってくれて、、、」

「やだ、やだよ、、、れな、なんで、、、」

「私も高校生、、、なりたかったなぁ。陽翠と2人で、、、どこかに、行きたかったよ」

「いけるよ!いけるから!だから、、、」


死なないでよ。もっと生きてよ。なんで、私みたいな空っぽが生きて優しい麗奈が死ぬの。やだよ、やだよ。


「ごめんね、、、今まで、ありがとう、、、辛い思い出に、、、なるなら忘れても、、、いいから。ううん、やだな、、、忘れないで、、、傷になったって覚えていて。、、、最期の、わがまま、、、聞いてくれる?」

「うん。ずっと、、、ずっと、忘れないよ。」

「そっか、、ありがと、、、またね、陽翠、、、」


ほどけた指から消える温度。光を宿して輝いていた茶色い目はもうどこも見れていなかった。冬の静けさの中、1人の美しい少女はこの世から消えてしまった。


「うわあああああん!!!!」


泣いてもどうにもならないというのに。冷えた身体に少しでも私の熱が灯るように強く、強く抱きしめた。何年も一緒に居たわけじゃない。ほんの数週間。それなのに。もう私の中で麗奈は本当に大切な友達で。ぎりぎりの命の渡り綱を渡っていたから、貴方の明るさは本当にまぶしかった。日が沈んで、お互い家に帰ってもメッセージでたくさん話した。家族のこと、出帆のこと、兄弟のこと、、、


「れなっ、れなぁ、、、」


桜月さんが麗奈の横に膝をついて涙をこぼした。出帆は後から抱きしめてくれた。麗奈と過ごした記憶。一緒に行った初めてのゲームセンター。2人でとったぬいぐるみ。お揃いで買ったキーホルダー。2人で撮ったプリクラ。帰り道の夕暮れのバス停で「またいこうねっ」て、、、


「うわあああ!!うわああああ!!!!」


数々のわからないことの中でも麗奈の死が一番わからなかった。綺麗で、明るい貴方はどこへでも行けたはずなのに。なんで、貴方は死んじゃうの。私を遺して。弟を遺して。母の敵をとって。


「やだよ、そんな、、、やだよ、、、」


涙が涸れても、枯れきらなかった。心の中に大きな穴が空いて。冷たい風が吹き抜ける感覚。ああ、痛い。痛い。会いたい。会いたい。

どこまでも私は弱かったんだ。


***********

ああ、死ぬんだな。死のを間際にして漠然と思った。最期の銃弾は心臓を貫いて。同時に魔物の最期の爆発で左腕が吹っ飛んだ。心臓貫いてお母さんの敵をとった代償。玲、蓮、ごめんね、、、お姉ちゃん、死んじゃうね、、、

受け止めた陽翠の目に涙が溜まっていった。


「陽翠、、、」


一緒に遊びたかったなぁ。最近のプリン屋さん、行きたかったなあ。浄化師の給料で余裕ができてきて、玲も蓮も喜んでたのに。

2人で絡めて繋いだ陽翠の手は温かくて。代わりに自分がどんどん冷えてってるんだ、と感じた。


ねえ、陽翠。友達になってくれて、ありがとうね。大好きだよ。だから、もう忘れて。私、重いの嫌いだし。


ううん。嫌だな。やっぱり、覚えていて欲しい。記憶が傷になっても、ずっと覚えていて欲しい。忘れないで欲しい。なんて、わがままなんだろう。


陽翠の目から涙がこぼれ落ちた。どんどん溢れて止まらなくて、いつの間にか自分も泣いていたことに今更気づいた。桜月さんも泣いていて、流凪くんは陽翠の肩を抱いている。流凪くん、、、陽翠をしあわせにしてね。頼んだよ。


薄れていく視界と遠のく意識。精一杯、またねって言った。ありがとう。今まで。友達になってくれて。光をくれて。また、来世で会えたら、また友達になってくれるかな。


──────────

「姉ちゃん、嘘だよね?そんな、、母さんが、、、」


双子の弟達は現実を受け止めきれない様子だった。玲と蓮。玲はしっかり者のお兄ちゃんで蓮はおっとりした泣き虫な弟。


「大丈夫だよ、、、お姉ちゃんが、何とかするから、、、大丈夫、、、」


父は居なかった。弟が生まれてすぐ、事故で死んでしまった。

浄化師になるって決めたときは、玲にやめろって言われた。命を懸けるなって。でも、給料もよかったし、何より私達みたいに親を失う人が減って欲しかった。


浄化師になって、半年が過ぎた。初めて、バディを組んだ。延寿浜杏里(えんじゅはまあんり)っていう、優しい人だった。月を使っていた。とても強かった。なのに、死んでしまった。バディになって半年後に。


「大丈夫か。」


浄化2課のリーダーの桜月さんは杏里と同じく月を使う人だった。優しく頭を撫でてくれた。お母さんみたいに優しい手で、安心して泣いた。


そこからまた、一年が過ぎた。今度のバディは二階堂実悠(にかいどうみゆう)という人だった。ぶっきらぼうだけど優しい男の人だった。浄化師の仕事に耐えられなくて、辞めてしまった。


そして三人目のバディが陽翠だった。初めて見たときは儚くて、脆そうで。触れたら壊れるガラス細工みたいな繊細な印象で。でも、身長がコンプレックスっていうかわいいところがあって。一緒にゲームセンターに行ったときはぬいぐるみを2人でとって。たっくさん2人でラインして。


幸せだった。ううん、しあわせ。一本棒とったら辛いにもならないし、土をとったらお金になるわけでもない、純粋なしあわせ。浄化師になってからできた初めての友達。


私は、貴方と出会えてしあわせだったよ。もし、いつか、生まれ変わるとしてもまた私がいい。優しい母と不器用な父。陽向の道を歩ませてくれた世界一大好きな両親。2人の弟。かっこよくて、学校でもモテてるんだって。玲、みこちゃんとしあわせになってね。そして陽翠。どこまでも純粋でまっすぐな私の友達。大好きな、みんな。

────────────

ふと目を覚ました。ここ、どこだろう。真っ白でふわふわした空間。だんだん靄が晴れていくと開けた原っぱにでた。きれいだ。ちぎれた腕も傷ついた身体も元通りになっていた。無性に走りたくなって私は走った。


川を飛び越えて、草を踏みしめて私は走った。中学の時、陸上部だったんだ。走るの大好きなんだよね。


走っていくと景色が急に変わって陽翠と来たショッピングモールが見えた。夕暮れのバス停は並んで話した普通じゃないくらいの幸せを思い出させてくれた。


また私は走った。景色が変わって夜になって。満天の星空の下には昔家族でよく来た桔梗の花畑。その中に2人の人が見えた。


「お父さん!!!お母さん!!!」


「麗奈!!!!」


2人の胸に飛び込んだ。


「ごめんね、ごめんね。お母さんが守んなきゃ行けなかったのに!」


「父さんも、すぐ死んじゃってごめんなぁ。本当に、大きくなってくれて。成長していくのを傍で見たかった。ごめん、ごめん!」 


「ううん。もういいの!いいよ!私はしあわせだったから!」


この美しい世界を、私は走り終えたんだ。




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