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天音麗奈は銃を放つ

「誰これ。」


れな、と言う人からのメッセージ。バディってなんだ?


「白銀陽翠です。よろしくお願いします。すみませんがバディとはなんでしょうか?」

「バディというのは2人1組の魔物を祓うときのペアです。1人で独立魔物と対峙するより2人よほうが生存率が上がりますので。」

「了解です。」


「ねぇ、どうしたの?」

「うわぁっ!!」


びっくりした。いつの間にかお風呂に入り終わった出帆が背後に立っていた。


「ねぇ、絆創膏、貼らなくていいの?」


あ、そうだった。今私は絆創膏を貼ろうとしている。切られたのが右手の甲だから右利きの私が貼るのは難しいんだよね。


「早く貼らないと痕残っちゃうかもしれないでしょ。早く貼りなよ。」


貸して、と。大きな絆創膏のフィルムを剥がして私の右手を掴み、ぺたっと貼った。二、三回上から密着させる。くっそう、いい男だ。


「ん。ありがと。」


平気な風を装って言った。


(やばい、心臓の鼓動がやばい。)


ドドドドドッと打つ心臓の音はうるさい。2人の時間を楽しみたいのに心臓が邪魔してくる。


「出帆、髪の毛乾かしてないでしょ。」

「あ。」


出帆の長い髪の毛はまだ濡れていてこのままだと風邪をひいてしまいそうだ。


「お礼に乾かすよ。」

「ありがとう。」


しっかり目にタオルドライをして手のひらにヘアオイルを数滴。髪の毛に馴染ませて乾かした。


(あれ、寝た?)


ドライヤーの轟音が響いていても気にせずこくりこくりと船をこいでいた。


「こんなところで寝たら風邪ひきますよっと、、、ほら出帆、起きて。」

「んん~、、」


そう言った出帆は私の指をぎゅっと握った。天使か。


「おやすみ、陽翠。」

「はい、おやすみ出帆。」


そう言って私達は眠りについた。



「こんにちは。天音麗奈です。麗奈って呼んでね。」


「白銀陽翠です。よろしくお願いします。」


今日からバディとなる天音麗奈さんは茶髪を後で一本の三つ編みにした優しそうなかわいい人だった。


「今日2人は浄化依頼の入った独立魔物の浄化に向かってもらう。」

「「はい」」


魔物が住み着いている場所に向かいながら麗奈は色々な事を喋っていた。


「私、弟2人いるんだ。双子なんだよ。お母さんとお父さんが死んじゃってから私が働いてるの。陽翠は?」

「兄弟はいません。雀宮さんに連れられて浄化師になりました。」

「そうなんだ。」


そう言って麗奈は笑った。面白いこともないだろうに。


「ねえ、陽翠は魔物、嫌い?」

「わかりません。」


正直魔物が嫌いかと聞かれるとわからないのだ。魔物は出雲と出帆の両親を殺して出帆を記憶喪失にさせたけれど、別に生きてたって死んでたってどっちでも良かった。私だって死ぬときは死ぬんだ。そんな考えは死ねって言われ続けたからなのかな。


「そっか。あ、ここみたい。」


「今回の独立魔物は少し強いらしいよ。」

「はい。」


「あら、かわいいお嬢さん達だねぇ。名はなんと言うんだい?」


喋った。ここまで流暢に話す魔物には出会ったことがなかった。


「天音麗奈。陽翠、いくよ。」

「はい。」


青天白日せいてんはくじつ)!!」

光芒流し(こうぼうながし)!!」


麗奈は銃を使って戦うようだった。淡く光を持った弾丸はまっすぐに飛び、魔物の目を、私は脳を切った。


「おやおや、綺麗な技だねぇ。太陽に、光、か。でも、今まで会った浄化師の心はみーんな食っちまったんだよ。」


知るか。気色悪い。じゅるじゅると音を立てながら切られたところが再生していく。やたらと髪の長い女の姿の魔物はどうしようもなく気色悪かった。


「でも、どんなに綺麗な技でも当たらなかったら意味が無いからねぇ。」


そう言って長い腕を伸ばし、肥大化させて麗奈を掴みにかかった。麗奈が軽くいなして銃を魔物に向けて撃った。


秋陽しゅうよう


その弾は魔物の手に防がれた。肉厚な腕は弾を飲み込んで再生した。チッ、と麗奈の舌打ちが聞こえてくる。


「そっちのつり目のお嬢さんは弱そうだねぇ。なんだい、そのしょぼっちいナイフ。笑っちゃうねぇ!」


ケタケタと笑いながらこちらに手を伸ばしてきた。やたらと甘い、不快な匂いが立ちこめる。


月映え(つきばえ)


心臓を狙うとがしり、と大きな腕に掴まれて宙に浮かされる。どんどん甘い匂いは強くなって、気持ち悪い。


「弱いねえ、弱いねえ。銃ならまだしも、ナイフじゃねえ。」


「陽翠!」


麗奈が魔物に向けて銃を撃つが外れた。麗奈にもう一本の手が襲いかかった。鋭い爪で麗奈の太ももに切れ目が入る。そのまま魔物は麗奈も掴んで宙に浮かせた。


残照ざんしょう


羽衣で魔物の両腕を切り落とした。予想外の攻撃に魔物は慌てた。麗奈は驚いた顔をしていたが、くるりと宙で回って体勢を立て直し、銃を撃った。


「なんなんだい、その錬成武器!痛い、痛い、、、」


爪で引っ掻いて羽衣を切ろうとするが柔らかくしなって切れない。なのに攻撃すると硬い硬い刃に変化する。

叫びながら大通りに魔物が出ようとした。大通りには人がたくさん居る。罪のない人が犠牲になるのは駄目だと即座に思う。


「大通りに出さないで!!」


「キャアッ!!!」


路地の前を通りかかった女の人が魔物に掴まれた。まずい。がたがたと震えた彼女は恐らく初めて見るであろう魔物にひどく恐怖していた。


「こいつがどうなってもいいのかい、、、「月光・朧月夜」「曙光優美しょこうゆうび


間髪入れずに羽衣で心臓を突き刺し、麗奈は魔物の腕を撃った。羽衣が美しい光を放ちながら突き刺さり、貫通した羽衣は魔物の血も付いていなく、とても綺麗だった。


「グエエッ!!」


汚い音を出しながら魔物は塵になっていった。


「ひっ、、、!!」


落ちそうになった女の人を羽衣で受け止める。ぽすんっと柔らかい布が受け止め、そっと地面に下ろす。


「大丈夫ですか!?怪我はありませんか?」


麗奈が確認をしたら女性は震えながら首を縦に振った。


「助けてくれて、ありがとうございます、、、」


恐怖に見開かれた目はふるふると震えていて相当怖かったんだろうということがわかった。


「貴方たち、何者なんですか、、、?」


…これは言って良いのだろうか。政府公認とはいえほとんどの人は魔物の存在を知らない。え、どうしよ。隣の麗奈もなんと言おうか迷っているようだった。


「悪の敵。」


そう言ってこれ以上の返答に困った私達は走り去った。


「え、あれ、なんて言うのが正解なんだろう。」

「確かに、」


麗奈はここまで来たら大丈夫だろうというところまで来ると立ち止まって言った。


「陽翠、悪の敵って凄くいい表現だと思うよ。」


悪の敵。咄嗟に出た言葉だけどそれがいい表現なのか。


「確かに正義の味方ってどっちが正義かわかんなくなったらとまっちゃうもんね。」


正義の味方と悪の敵。同じような意味だと感じたが強いていうなら正義の味方は恩着せがましい気がしてきた。


「麗奈、傷。」


浅く切られていてもう血も止まりかけているけれどそれでもちゃんと洗って消毒した方がいいだろう。太もものホルスターの中から水を取り出して洗い、大きめの絆創膏を貼り付けた。


「陽翠、ちっちゃい。かわいい。」


ちっちゃい。ちっちゃい!?


「ちっ小さくないし!!!平均だし!!!」

「えっ?」


急な焦りに驚いたのか麗奈が顔をあげた。


「陽翠、身長コンプレックスなのー?かわいいのに~。」

「かっ、かわいくないし!!!!!!」


にやにやした麗奈のからかいは15分間続いた。


「ただいまー」


洗濯物を畳んでいると出帆が帰ってきた。


「おかえりーってどうしたの!?それ!?」


なんと出帆はおさげになっていた。長くて艶やかな黒髪はおさげにすると中性的な顔立ちとあいまってとてもかわいい女の子のようだった。


「クインテットの女の人に捕まった。あの、凄い服着た、、、髪の毛の毛先がピンク色の、、、」

「本願寺さん?」

「多分そう。水滝原さんと訓練したあとに休憩してたら本願寺さんが背後に来て結ばれてた、、、」


とりあえず記念に写真を撮ってほどくと毛先がなみなみしたウェーブスタイルになっていた。似合っている。


「今日、バディの人と会ったの。天音さんっていう人だよ。」

「僕も、バディ組んだんだよ。」

「へぇ、なんていう人と?」

「桜月綾星っていう人。」


えっ、桜月さん?桜月さんと組んだの?


「桜月さん、陽翠のこと知ってたよ。」


そりゃあ知ってるでしょうよ。そんなんね。


「桜月さんと組んだんなら安心だよ。良かったね。」

「そうなの?」

「そうだよ。優しい人だからね。」


「ふーん。ね、今日のご飯、何?」

「唐揚げ。今から揚げるよ。」

「僕もやる。」


じゅわじゅわと立ちこめる油の美味しそうな匂いはあの魔物のやたらと甘い匂いを消し去ってくれた。






こぼれ話16

魔物は食べた心の量が多ければ多いほど強くなり、賢くなります。この魔物は150人ほど食ったようです。

こぼれ話17

麗奈の弟の名前は玲と蓮。2人とも15才でお姉ちゃん大好きっ子です。

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