水滝原碧は採血なんてしたくない
「今日は会社の健康診断なんだ。一昨年の健康診断の採血で水滝原さんの担当が若い女の人でね、、、顔真っ青にしてトラウマになったみたいなんだよ。」
うわあ。そりゃあ嫌だな。
「流凪くーん!水滝原さんどこに行ったか知らないかい?」
「僕も言われて、、、今探してて、、、」
「そうだなぁ。今年はどこに隠れてるんだ。」
去年は隠れているところを見つけた瞬間逃げられたらしい。
「水滝原さーん。でてきてくださーい。」
榊さん。ゴミ箱の中を探さないでください。
「そんなところにはいないんじゃないですか?」
「居るんだよなーそれが。本当に困った先輩だよ。」
そういうもんなのか。とりあえず私もゴミ箱を開けたとき。
居た。
本当に居た。
えっ、気持ち悪い。
「───────ッ!!」
「水滝原さん!採血!」
その瞬間。水滝原さんは走り出した。
「速ッ!?」
「逃げられた!挟み撃ちしよう!僕が向こうに行くから追いかけて!」
「陽翠、行こう。」
できる限りの速さで水滝原さんを追いかける。速い。速すぎる。
正面から榊さんが来た。
「ふっ!!」
壁を蹴って横に逃げた。
「嘘でしょ!?大人気なっ!?」
「そんなものなくて結構!俺は採血はしたくない!」
走りながらそう答えた。
「水滝原さん!もうやめてください!看護師さん困ってます!」
「知るか!!」
かなりのスピードで走って逃げる水滝原さん。追いかける私達。端から見たらものすごい図だ。
「陽翠、大丈夫?走って良いの?」
出帆は1人私の心配をしている。違う違う。今はそこじゃない。
「白銀さん!羽衣!あれで捕まえられるかい?!」
そうか。その手があったか。
羽衣を伸ばし水滝原さんの身体に巻き付ける。
「泡沫!!」
なんとこの人、神器までだして抵抗する。
だが、羽衣は柔らかすぎてしなって切れない。
「捕まえた!!」
こうして水滝原さんは捕獲された。
「俺は採血なんかしたくない。」
羽衣にがっちりと捕獲されながら水滝原さんはつぶやいた。
「あれは、一昨年のことだったんだ。渋々健康診断に向かって採血をされる時、準備していたのはおばちゃんだったんだ!俺はそこで安心しきった!なのに!採血をしたのは若いお姉さんだったんだ!力はいってますねーとか俺のせいにしてきたんだぞ!痛かった!」
「針の方を見るからじゃないですか!」
「刺されるタイミングがわからないのが一番怖いんだ!!」
「もうあの看護師さん居ませんって!」
「毎年1人はああいう若いのいるだろう!」
「水滝原さん、大人げないですよ。」
ザクッと言葉の槍を刺したのは出帆。
「そうか、流凪、お前もか、、、。もう俺には味方はいないんだな、、、。」
「はーい次の方ー」
羽衣で固定され、榊さんに目隠しをされ、本願寺さんから面白いからと頼まれたので出帆が写真を撮っている中採血は終わった。
「もうやりたくない。」
「次は来年だよ。本当に2人ともありがとうね。白銀さんが居なかったらもっと時間がかかっていたよ。」
「大丈夫です。」
「陽翠、帰ろ。」
2人で家に帰った。
「陽翠の錬成武器、凄かったね。綺麗だったよ。」
「ありがとう。そういえば出帆はどんなの使うの?」
「僕はこれ。」
そう言って肩から取り出したのは薄水色の刀だった。
「水滝原さんと同じ形の武器なんだ。」
「綺麗だね。」
薄水色の刀は窓から入る夕日を反射して綺麗に光っていた。水のような、清らかで美しい色だった。
「ねぇ、今日のご飯なに?」
「お魚と味噌汁。一緒に作ろうか。」
「うん。」
魚焼きグリルの中で焼かれる魚。里芋と豆腐とわかめの味噌汁。炊飯器の中でぼこぼこ音を立ててるお米。
「水滝原さん、面白い人だったね。」
「あれは面白いを行きすぎてるけどね。確かに面白かったかも。」
どこか他人事のようにつぶやいている。出帆から送られてきた採血中の写真を本願寺さんが欲しがっていたので送ると「笑」というスタンプと「これ去年の写真」というメッセージと共に本願寺さんに羽交い締めにされて榊さんに目隠しをされる水滝原さんの写真が返ってきた。
「ねぇ、出帆。これ。去年の写真だって。」
「今年よりひどい、、、」
そう言って苦笑する出帆の横顔を眺めていると。
「あれ、出帆ここどうしたの。」
よく見ると出帆の首筋に細く赤い線が走っていた。
「ちょっと切られちゃった。」
白い首筋には赤い線がとても目立つ。
「早くなーおれっ」
とおまじないをかけてみると
「陽翠も」
と大きめの絆創膏に変わった手の甲の傷を指さされた。かわいいなぁ。守りたいなぁ。
ピピピと音を立てて魚が焼けた。
「よし、盛り付けて食べよう。」
ご飯をもきゅもきゅと食べる姿が愛おしい。
「どうしたの。」
「なんでもないよ。」
「ふーん。」
謎のキメ顔でつぶやいた。
「ねえ、陽翠はさ。僕のこと、嫌じゃないの?」
「へ?」
「僕、すぐに忘れちゃうから。この前助けてあげた人がお礼を言いに来たんだけどわかんなくて黙ってたら怒って帰っちゃった。」
なんじゃそりゃ。お礼を言いに来たのに怒って帰るとは。礼儀のなってないやつめ。しばいたる。
「嫌じゃないよ。楽しいよ。」
「そうなの。」
きょとんと目を大きくした出帆が言った。
「陽翠、優しいんだね。」
そっか。私、優しくできてるんだ。
「えへへ。ありがと!」
「ちょっとは謙遜しなよ。」
ぷうっと頬を膨らませた出帆はとんでもなく破壊力があった。
「やーだねっ!」
たわいのない会話で生まれた笑い声は2人の食卓に響いた。
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「天音麗奈、明日から白銀陽翠とバディをくんでもらう。」
麗奈は驚いた。
「白銀さんって今日の錬成武器の子ですか?」
「そうだ。これからは独立魔物の浄化にも当たってもらいたいし錬成武器にも慣れて欲しいからな。」
「了解です。」
「ありがとう。これが白銀のラインだ。」
QRコードを読み取ると白銀さんであろう女の子とクインテットの本願寺さんが満面の笑みで写った写真がアイコンの「白銀陽翠」というアカウント。
「この子が白銀さん、、、」
「歳は16、お前の一つ下だ。光を扱っているから太陽のお前と相性が良いだろうと思ってな。」
とりあえず、自己紹介のメッセージを送った。
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「誰これ。」
陽翠のスマホの画面には「れな」という人からのメッセージ。
「浄化2課の天音麗奈です。明日からバディを組むことになりましたのでよろしくお願いします。」
というメッセージが入っていた。
こぼれ話14
天音さんは15で浄化師になった陽翠の2つ先輩の女の子。太陽を使っていて銃を使って戦っている。
こぼれ話15
水滝原さんの今回の採血の担当はベテランのおばちゃんでした。




