流凪出帆は丸を決めた
「うちここ一回来てみたかってん!ひとりではいんの気まずいし陽翠ちゃん女子高生やから2人やったらはいりやすいわ!」
連れられたのはかわいいパンケーキ専門店。
「心晴ちゃんがよう行っとるって写真見せてくれてからずーっと来たかってんな!」
「そうですか。」
本願寺さんは落ち着いたデザインのコートとブーツ、私はいつものフレガリで来た。
「陽翠ちゃんどれがええ?うち奢んで!」
「えっと、、、」
クリームがたっぷり乗ってカラフルなチョコレートがかかった物、季節のパンケーキ、アートパンケーキなんかもある。
「これでお願いします。」
私が指さしたのはブリュレパンケーキ。きらきらしたキャラメルが美味しそう。
「ええやん!うちはなー、」
本願寺さんは苺とクリームがたっぷり乗ったキラキラしたかわいい物を頼んだ。飲み物はそれぞれコーヒーと紅茶を頼んだ。
「うち和食のお店しか行ったことなくて心晴ちゃんにおすすめされたけどひとりでこられへんかってーん。」
だってさぁ。見てみいや。周りを見渡すと同い年くらいの女子、女子、女子高生。たまにカップルが混じっている。
「うちこんなとこひとりでおったら干からびてまうわ。綾星ちゃんも流凪くんと陽翠ちゃん送って帰ってきたとき凄かったで。」
こんなんやで、こんなん。とぐでーっとした感じを表現する。どうやら桜月さんの爆走はきらきらに耐えられなかったらしい。哀れ。
「お待たせいたしましたー。こちらブリュレパンケーキとコーヒー、苺のパンケーキと紅茶になりますー。」
一瞬定員さんが迷った後にどっちとも付かない位置に料理を置いていった。
「きゃーおいしそっ!写真撮りたい!」
パシャっと嬉しそうに写真を撮る本願寺さんの横で私も写真を撮った。
「はい、チーズ!」
いつの間にか横に来た本願寺さんは私と2人で自撮りをした。人生初自撮り。
「陽翠ちゃんにも送るわ!綾星ちゃんからラインもらったねんなー」
ポチポチと操作したあとに
「あれっ陽翠ちゃんアイコンそのままやし登録名もフルネームやん。味気ないなぁ。」
送られてきた写真は「Tsukino」というオシャレなフォントの人とモデルみたいに撮った本願寺さんの写真のアイコンの人からだった。
「さーっ!食べようか!」
わくわくした顔でパンケーキを上品に切ってぱくっと食べた本願寺さん。
「んーっ!おいしいっ!」
ほわほわ幸せそうな顔をしている。桜月さんに似ているな。私もぱくっと一口食べた。かりかりになった砂糖のほろ苦さと甘さがとっても美味しい。ちょこんと添えられた生クリームもあっている。
「美味しいです。ありがとうございます。」
「ええよええよー!これから関わることも増えてくやろうしな!仲良くしよー!」
終始ハイテンションな本願寺さんとパンケーキを完食したあと、家まで送ってもらった。
「ばいばい陽翠ちゃん!また行こなー!!」
「はい。」
本願寺さんを見送って玄関を開けると
「おかえり、陽翠、、、手、どうしたの。」
手?見るとすっかり忘れていたが魔物に引っ掻かれた手の甲が包帯で巻かれていたのを思い出した。
「ちょっと引っ掻かれただけだよ。」
「痛くない?大丈夫?」
「意識したら確かに痛いけどこのくらいなら大丈夫かな。」
ぎゅっと手を握られた。
「──────ッ!」
悲しそうに、労るような目は昔よりもどこか虚ろに見えてしまう。私よりも一回りも二回りも大きくて少し骨張ったがっちりした手はとても温かかった。
「今日、ご飯僕がするよ。」
「えっ、大丈夫?そのくらい、、、」
「水に濡らせないでしょ。」
確かに。これ包帯じゃん。
「じゃあ、野菜とか切ってくれる?炒めたりするのは私がやるよ。」
「わかった。」
2人で台所に立って料理をした。今日のご飯は焼きうどん。ざくざくと出帆が野菜を切っている間にレンジでうどん玉をラップに包んで蒸す。切れた野菜をじゅうじゅうと炒めている間もう一つのコンロで出帆がうどんを炒める。
「えいっ」
うどんと野菜を合流させて味を調えたら完成。
「ん?」
席に着いたときに出帆のスマホに通知が入った。
「水滝原さんがちゃんと食べてるかだって。写真送っても良い?」
「いいよ。」
パシャっと写真を撮って操作をした後に2人で食べ始めた。
「今日、陽翠、何してきたの?」
「見回り。その時に独立した魔物がいてね。ちょっと傷ついちゃった。その後に本願寺さんとパンケーキ食べに行ったの。」
「パンケーキ?」
「これこれ。」
本願寺さんから送られてきた写真を見せた。
「美味しそうだね。」
「今度一緒に行こうか。」
「うん。」
「陽翠は丸、変えないの?」
丸?丸って何?
「これ。」
アイコンのことだった。丸て。
「変えても良いけど何に変えたらいいのかな。」
出帆もアイコンを変えていない。あっ、そうだ。今日の本願寺さんとの写真にしようっと。
ご飯を食べ終えたあとに設定でかえた。
「陽翠、こっち。」
ぱしゃっと出帆が私の肩に腕を回して2人で写真を撮った。
「僕、これにしようっと。」
こうして流凪出帆の丸は決まった。
時は流れ三日後。私は独立魔物と戦っていた。
強い。
強い。
強すぎる。
「ウガアアアッ!!」
魔物の伸ばした手をかわす。攻撃範囲が広すぎる。
「眩き!!」
魔物の腕を切ったが。どうしよう。心臓まで届かない。もっと遠距離から攻撃できたら────。
あれ。なんだか肩甲骨の辺りが熱い。なんか、ひりひりする。その瞬間。
「バチィッ!!!!」
バチバチと光を放つ羽衣が私の身体から生えた。
おまけ
本「あっ陽翠ちゃんアイコン変えてくれとるやん!私とのツーショット、、、
榊「本願寺、どうしたんだ?」
本「己の肌艶の衰えを感じた。JKと並んで写真撮ってもうたらあかんわ。」
榊「なんてったって本願寺は30、、、ギャア!!」




