予期せぬ来訪者
王都へ文書を送ってからひと月が経った。
が、やはり返事は一向に届かない。
分かっていたこととはいえ、ここまで何も無いとさすがに心にくるものがある。机に突っ伏したい気持ちでいっぱいではあるのだが、山積みの書類がそれを許してはくれなかった。
「……ひと月も経ったのに減った気がまるでしないな。むしろ増えたんじゃないか……?」
「再審議が必要なものも含まれていますから、あながちその感覚は間違ってはいないかもしれませんね……」
遠くを見るような目で書類を眺めていた僕に、クラムが申し訳なさそうな表情を浮かべながら返事をした。
「結局、申請は無視されてるみたいだし、これからどうしたもんかなぁ……」
「いっそのこと、公爵家個人として補佐官の募集をかけてみては?」
「いや、信用に値するかどうか判断が難しいし、何より雇う金がない……!」
補佐官制度により派遣された者であれば、ある程度能力面の信用はおけるし、賃金の補助も受けられる。だが、個人で雇うとなると、人を見る目に自信のない僕ではハズレくじを引きかねない。ただでさえ我が家の財政はギリギリなのだ。これ以上お荷物を背負ってしまうと、公爵家は間違いなく沈んでしまうだろう。
「はぁ〜、何かこの状況を打開する妙案でもフッと舞い降りてこないもんかなぁ……」
そんなことを口にしたところで、何か状況が変わるはずもなく、諦めて山積みの書類に手を伸ばそうとした。
その時、書斎の扉をノックする音が聞こえてきた。何事かと思い、入室を許可すると、一人のメイドが部屋に入ってくる。
「失礼いたします。王都からお客様がいらっしゃいました。旦那様にお目通りを希望されておりますが、客室へご案内いたしましょうか?」
「は?王都から客?」
予期していなかった報告に、思わず気の抜けた返事をしてしまう。ポカンとしていた僕に、クラムがハッと気づいたように告げてきた。
「もしや、例の補佐官の方が来られたのでは?!」
珍しく弾んだ声を聞き、僕は我に返った。たしかに、今日はいつも通り来客の予定もない。その可能性が高そうだ。
「そ、そうかもな。それじゃあ——ひ、ひとまず客室にご案内しておいてくれ……」
自分でも引くくらい動揺してしまい、震えた声でメイドに命じた。
こんな調子で、補佐官と果たしてまともに話せるのだろうか……。
そんな不安を胸に、身支度を終えた僕は書斎を後にするのだった。
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