領主は考える
作業小屋を出発してから、およそ一時間後。
僕たちは、件の採掘候補地――C地点へとたどり着いた。
地図上で見たよりも実際は広く、風が通る分だけ開放感もある。
だが、森を抜けた奥まった場所ということもあり、人の気配はまるでない。
「じゃあ、早速取り掛かりますぜ!」
張り切った様子のベンが、二人の炭鉱夫に指示を出しつつ、調査を始める。
同行した残りの僕たち4人は、特に手伝えることもなく、静かに炭鉱夫たちの作業を見守っていた。
皆、真剣な眼差しを向けている中、僕だけは少し離れた場所で落ち着かず、辺りを見回したりしていた。
「旦那様、いかがなさいました?」
いつの間にか隣に立っていたフィラナ嬢が、柔らかな声音で問いかけてくる。
「い、いや。特に何かあったわけじゃないんだけどね……」
何でもないよ、と言えば済むはずだった。
けれど、フィラナ嬢からまっすぐな瞳を向けられた途端、僕の中の何かが決壊した。
「正直、不安でいっぱいなんだ……」
押し込めていた本音が、ポツポツと溢れでていく。
「この場所を選んだのは、ただの勘でしかない。今回はフィラナ嬢が助けてくれたけど、本当なら僕自身の言葉で皆を納得させるべきだったんだ。つくづく自分の至らなさを感じるよ……」
少し離れたところから、岩を削る音が聞こえる。
「鉱脈だって、本当にあるかどうかも分からないんだ。僕の下した判断で、皆に迷惑をかけてしまうと考えたらどうにもね……。いっそのこと、他の誰かに領地を託した方が領民も幸せなんじゃないかとすら思えてくるんだ」
そう告げて彼女に目をやると、フィラナ嬢は数瞬悲しげな表情を浮かべた。
しかし、すぐに穏やかな表情に戻った。
「旦那様、ご心配なさらないでください」
フィラナ嬢は静かに首を振る。
「不安を抱くのは、それだけ領地と人を想っている証です。それに、勘というのは案外、信用できるものですわよ」
そう言って、彼女は表情を綻ばせる。
「私は、旦那様の判断を信じています。大丈夫ですわ。他者を慮る者には、きっと奇跡が起こると思いますもの」
瞬間、黄色い声が聞こえてくる。
「坊ちゃん!出ました!出て来ましたよ、お目当てのもんが!」
僕はフィラナ嬢と顔を見合わせる。
「ほらね?起きましたでしょう」
ふふっと微笑む彼女を見て、胸の奥が軽くなったように感じる僕であった。
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