表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

高まる期待

 屋敷を出てから一時間後、窓の外にふと目をやると、ジュエラ鉱山のすぐ近くまで辿り着いていた。


「フィラナ嬢、もうすぐ鉱山に着きそうだよ」


 声をかけると、少し驚いたようにフィラナ嬢が顔を上げる。


「あら、もう着いたのですか?」


 そう言いながら、懐中時計を取り出して時刻を確かめる。

 ほんのわずかだが、彼女の眉が動いたように見えた。


「ん?どうかしたのかい?」


「いえ、思ったよりも早く着いたと思っただけですわ。それよりも、無事に連絡が届いていると良いのですが」


「心配いらないさ。ピーロは優秀だからね。今ごろはもう屋敷に戻ってるだろうさ」


 ピーロというのは、我が家で飼っている伝書鳩のことだ。


 領内であればどこにでも連絡できるうえ、ピーロのような一部の優秀な訓練された鳩は、王都まで飛んで行くこともできる。

 今回は、ベンや商会の担当者と話をする必要があるため、屋敷を発つ前に先触れをピーロに託したのだ。

 

 そんな話をしているうちに、馬車がゆるやかに速度を落とし、やがてその動きを止めた。

 窓の外には、岩肌がむき出しになった山の斜面が広がっている。


「旦那さま、ジュエラ鉱山に到着いたしました」


「あぁ、分かった」


 クラムの声に返事をすると、すぐに馬車の扉が開かれた。

 目の前には、ベンと小綺麗な装いをした青年が並んで立っていた。


「やぁ、グラット殿。忙しい中、申し訳なかったね」


「いえ、スライブ公爵様より御用向きとあらば、このグラット、他のなにをおいても馳せ参じる心持ちでございます」


 そう言って、青年――グラットは恭しく一礼した。

 一見してまだ若いが、その動作には訓練されたような無駄のなさがあり、商人というよりも文官のような印象を受ける。


「フィラナ嬢もお久しぶりですね。本日もご機嫌麗しゅうございます」


 その丁寧な言葉遣いには、以前の商談で見せた柔らかい笑みが重なる。


「えぇ、ご無沙汰しておりますわ。本日は、急な申し出に対応していただき感謝いたします」


 フィラナ嬢も落ち着いた様子で微笑みを返す。


「坊ちゃん!挨拶も済んだみてぇだし、本題といきましょうか。鳩まで飛ばされて、いったい今日はどうされたんで?」


 そう口火を切ったベンの声音は、わずかに心配の色が混じっていた。

 新商会との鉄鉱石の取り引きも決まり、これからという頃合いに、領主から緊急の話があると連絡されれば、不安にも感じるだろう。


「実は見てほしいものがあるんだ」


 僕は胸ポケットから件の小瓶を取り出すと、二人に見えるように前に出した。


「この中に入っている石の欠片を見て、どう思う?」


 二人は小瓶に顔を近づけると、まじまじと眺めた。


「うーん、キレーな石とは思いますが……。まぁ、ちと透き通っている感じはしますね」


「そうですね。状態から察するに、磨かれているわけではないのでしょうから、自然由来にしては……いや、まさか!」


 グラットは驚いたように息を飲み、こちらを見る。


「えぇ、この石はジュエラ鉱山の北側の浜辺で拾ったものでございますが、私どもは宝石の原石ではないかと予想しておりますの」


 フィラナ嬢の落ち着いた声が響くと、二人は思わず顔を見合わせた。


「宝石の……原石、ですと?」

「宝石の……原石、だと?」


 二人の驚きが重なる。


「ま、まさか……そんなもんがこの鉱山から出るなんて、聞いたこともねぇ!」


 予想外の話に、ベンは興奮を抑えきれないようだ。


「もし本当に宝石鉱脈があるとなれば……それは、領の価値を根底から変えるほどの発見になります。ぜひ、現物を確認させていただきたいのですが」


 一方でグラットは、さすが商人というべきか、興奮を押さえ込むように低く言葉を続ける。

 その真剣な口調に対し、フィラナ嬢は静かに微笑むと小さく頷く。


「えぇ。ですので本日は、北側の崖周辺を中心に調査を進めたいと考えておりますわ」


「一応、こちらに来る前に目星をつけてきたからね。二人の意見も含めて話が出来ればと思っているんだ」


 ベンとグラットは、僕たちの来訪に合点がいったという表情で頷いた。


「なるほど!そいつぁ一大事だ!ならその目星について、早いとこ話し合いといきましょうか!」


「あぁ、よろしく頼むよ」


 意気揚々としているベンに促され、僕たちは鉱山調査に向けて作戦会議をするため、作業小屋へと足を運ぶのであった。


読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、下部の☆マークにて評価をお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ