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屍公爵と埃を被った制度

初めて執筆してみました。

楽しんでいただければと思います!

 燃えるような赤い髪を風になびかせながら、一人の令嬢が北の地に降り立った。


「ここですわね、私の新天地は……!」


***


「………また、ダメだったな」


 書斎の机に積まれた書類の山を横目に、ついでのように置かれていた封筒の中身を確認しながら呟いた。


「まぁ、僕も似た立場だったら婚約なんてしないだろうね……」


 我ながら情けなく思いつつも、自嘲気味に言葉を漏らす。


 そんな僕ことディカード=スライブに向かって、執事であるクラムが慰めるように話しかけてくる。


「そんなことは仰らず、次の方を探しましょう。きっと旦那さまの魅力を分かってくださるご令嬢もどこかにいらっしゃいますよ」


「いやいや、うちは公爵家といっても名ばかりのものだし……。おまけに僕の見た目もこんなだよ?繋がりを持ちたいと思う方がどうかしてるってものさ」


 我がスライブ公爵家は、ステアリス王国の北部に領地を持ち、それなりに家格に見合った暮らしをしていた。


 だが、そんな日々は突然終わりを告げた。


 6年前に起こった流行病によって、両親と後を継ぐはずだった優秀な兄を失ってしまったのだ。

 残されたのは、勉強も運動も不得意で平凡な僕だけ・・・。

 急きょ家を継いだ僕は、慣れない領主としての仕事に追われ、心身ともに疲弊していった。

 その結果、身体は痩せこけ、いつの間にか貴族の間で「屍公爵しかばねこうしゃく」と呼ばれるようになっていた。


「まぁ、婚約者は無理だとしても、せめて優秀な補佐官には来て欲しいところだけどね。 今日も王都からは何も連絡はないのか?」


「はい、本日届いた封書はそちらだけです……」


「そうか……。まぁこの数年何の音沙汰も無いんだ。そう簡単にはいかないよな……」


 あまり期待していなかったとはいえ、いい加減うんざりしてくる。


 ステアリス王国には「補佐官制度」というものがある。


 この制度は、領地の運営に苦慮している領主に対し、貴族の没落を防ぐためにその仕事を補佐する者を、原則一年間、国が派遣するというものだ。

 制定されたのは開国時代らしく、現在では制度を利用することは己の力不足を公言するものとされ、忌避すらされている制度である。


 とはいえ、近年は領地の経営が難航し、実際に没落した家も出ていると聞く。

 そう思えば、この制度を残しておいた王国の判断も、あながち間違いではなかったのかもしれない。


 この制度を知った数年前の僕は、

「王都から優秀な人材を派遣してもらえば楽できる!」

などと思い込み、意気揚々と申請を出したわけだが、結果はご覧の通りである。


 そんな僕を見かねてか、クラムが少し考えるようにして口を開いた。


「念の為、申請の進捗を王都に確認されますか?」


「うーん、前にも一度連絡したけど、その時は返事が無かったんだよなぁ……。でも他に頼れる人材もいないし、最後にもう一度だけ確認してみるか……」


 正直気は進まない。


 仮にも公爵家から出された申請を数年放置しているのだから、きっと相手にされていないのだろう。

 そんなことを思いながら、僕は王都への文書をしたためるのだった。


 まさかこの一通が、スライブ領の運命を大きく変えることになるとは、このときの僕は知る由もなかった。


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