幕間 苦労人、橘宗二の回顧
こんな仕事をしていると、時々どうしようもなく救われない話にぶち当たることがある。
裏社会の事情に首を突っ込んで、そのまま消えていくような奴は、正直自業自得だと思っている。
……たとえそれが親しい人間であってもだ。
何だったら、俺自身もロクな死に方はしないだろう。
こんな生き方を選んでしまった時点で、自分の望んだ結末なんざ期待するだけ無駄だ。
だが、自分で望んだわけでもないのに、こんな因果な商売に関わっちまったやつはまた別だ。
それも、分別のつかない子供なら尚更だ。
それなのに、あの子らは本人の選択もないまま、気づけば裏の世界にどっぷりだった。
ある殺し屋組織を壊滅させたとき、首謀者の拠点には何人かの子供たちが集められていた。
皆、殺しのための訓練を積まされ、罪悪感もなく、顔色一つ変えずに人を殺せる──そんな人材を育成していたらしい。
踏み込んだ瞬間、何人もの子供がナイフ片手に襲いかかってきた。そこに殺気はなく、淡々と正確に急所を狙ってくる手際は、思わず称賛してしまうほどだった。
直後、それが年端もいかない子供たちの仕業だと知って、暗澹たる気持ちにさせられたがな。
それらを制圧して、一人ひとり連れ出す中、最後にいたのが華蓮だった。
誰も彼も普通の生活なんか知らず、まともな生き方をしてこなかった子供たちばかりで、わかった範囲じゃ親も碌なもんじゃなかった。
借金まみれで二進も三進もいかないくせに、この期に及んで金勘定もできないクズ。
楽な方へ楽な方へ流れて、気づけば色んな連中に食い物にされているのに、それでも尚人のせいにして現実逃避するクズ。
そして、子供を抱えていながら先を見通せず、無責任に振る舞うクズばかりだった。
そんなクズどものせいで、子供たちが子供らしく生きられないのは駄目だ。
だから、手を尽くして学校へ行かせ、まともな仕事を与え、何とか明るい場所を歩けるようにしてやったつもりだった。
だが、華蓮だけはどうしても表の世界には馴染めなかった。
学校へ行けば気に入らない相手を殺しかけ、仕事をさせても無気力で物にならず、うまい食事というご褒美がなければやる気も出ない。
……こう考えると、他の子供たちはよく社会復帰できたもんだ。
結局、華蓮は今も裏の世界にいる。命令する相手が変わっただけで、やることは変わらず。
組織から命じられた人間を殺す、それだけだ。
なんとなく、そんな姿が凛鈴と被って、どうしても放っておけず……かといって社会には戻してやれず。
感性も常人とはかけ離れてしまったから、孤独のままだ。
せめて、似た者同士、少しは孤独を紛らわせられれば……そう思ったが、安直だった。
そして、つくづく自分の甘さが嫌になる……




