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幕間 新参者、神谷華蓮の追憶

 最初の記憶は何だったろうか。

 多分、コレかなって思うのは、ゴミが積まれた異臭が漂う狭い部屋、かな?

 食べるものなんかもちろん無くて、気まぐれに現れる女が食べ残したゴミを漁るの。

 運が良ければ食べられる、悪かったら何かを食べるどころかあの女に殴られたり蹴られたり。

 外に出たことも無くて、そのゴミ溜めがわたしの世界の全てだった。


 でも、そんなクソみたいな世界もある日唐突に終わる。

 家賃でも滞納したのか、ゴミ屋敷に苦情でも出たのか、あの女に引き摺られるように外の世界に出た。

 まぁ、その直後位にあの女はわたしを放ったらかして消えたけど。


 人とまともに話したこともないし、そもそも外でどう生きたらいいかもわからない。

 適当な路地で行き倒れていたら、今度はあの男に拾われた。

 アイツはわたしに食べ物とナイフをくれた。そしてその使い方を、身体の使い方を、世界と社会と生き方を教えてくれた。


 そこにはわたしと似たような奴らがいて、みんな一緒に殺しの技術を学んでた。


 ある日、仕事だといって街に連れてかれて、「アイツを刺してこい、練習通りにやれ」って言われた。


 初めての殺しは拍子抜けするくらい簡単だった。人の多い雑踏では、小さな子供は割と見落とされる。

 それを利用して目標に近づき、私はナイフを身体に突きこんだ。


 習っていた急所に吸い込まれるように刺さるナイフ、軽く捻って引き抜き、刀身を拭ってそのまま立ち止まること無くその場を後にする。


 後ろから悲鳴とたくさんの声が聞こえたけど、聞こえないふりして、怪しまれないように、けれど急いで速歩きしてわたしは逃げた。


 その日は好きなものを何でも食べていいって言われた。

 好きなものがわからないって言ったら、アイツは苦笑してハンバーガーを食べさせてくれたっけ。

 おもちゃが付いていたのも嬉しかったな。


 その後も、仕事をうまくやると食事がもっと美味しいものになる、ベッドも柔らかくなる。


 だから必死に技術を習って、たくさん殺した。


 やり方は大体おんなじ。街なかの人混みの中で目標を見つけて、気付かれないように一突き。

 確実にやれる場所は何度も練習して、どんな体格性別でも一撃でやれるように。


 そのうちアイツは現場に付いてこなくなって、それでも命令通りにやる。


 しばらくそれを続けてたら、今度は不意打ちだけじゃ無くて、正面から一対多の仕事なんかもやるようになった。

 これも、一緒にいた子供たちと立ち回りを何度も練習して、本番でもうまくこなせる様になると、ご褒美はどんどん良くなる。


 当時はよくわからなかったけど、高級ホテル? とかのフレンチ? とか。

 殺しのナイフは使えるけど、料理のナイフなんてその時初めて見たかな?

 振り回してたらさすがに怒られちゃった。


 そんな生活をしばらくしてて、お腹は空かなくなったし、寝床も清潔で暖かくて、それなりに充実した日を送っていたんだけど、


 そんなある日アイツは突然いなくなった。


 元々わたしたちに一々行き先を告げはしなかったし、しばらく拠点を開けることも多かったから気づかなかったけど、なんか仕事をしくじったらしい。

 いつものように自分の部屋でゴロゴロしてたら、見知らぬ男たちが拠点になだれ込んでくる。

 何人かは咄嗟に抵抗して返り討ちにあったみたいだけど、わたしはご褒美のないのに動きたくなかったから、大人しく男たちに従った。


 その後、一緒にいたかつての子供たちは学校行ったり殺し以外の仕事するようになって、少しずつ別々の生活を送るようになった。


 でも、わたしは今も殺しをしごとにしている。


 ご褒美もないのに動きたくないから、だから今もご褒美を求めて──

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