幕間 ある配達員、藤嶋晃のボヤキ
雨が降りしきる中、配送の仕事を一つ終え、一服がてらにコンビニで買ったコーヒーを片手に、俺は車内で依頼人からの荷札を確認していた。そしてその中に、見たくない名前を見つける。
――羽鳥凛鈴。
俺のいくつかある依頼元たちの内、何人かのお気に入り。
殺しや誘拐、臓器売買等で出る不用品の最終処分先、の一つだ。
そういう廃棄物は埋めようが沈めようが、年数が経てば必ず露見する。素人仕事にありがちな話だ。
じゃあ、見つからないようにするにはどうするか?
一目でそれとわからないように解体してやればいい。
……自分で言ってて外道な話だが、同業者やそこに依頼した連中が割とそんな理由で挙げられることもあるしそれ自体はまぁいい。
よくある、っていうのも変な話だが、そういうもんだしな。
問題は、この依頼人の最終処分、つまり解体と廃棄ってのは完全に分業化されていたってことだ。
出荷元で荷物をまとめて梱包、加工屋と呼ばれる解体人まで届け、加工屋は肉と骨とその他に綺麗に分ける。
そして肉は最終処分場であるあの古びたアパート、つまりあの女のトコロってわけだ。
自分の依頼人ながら、こういった汚れ仕事をここまでシステマチックに管理できるってところに薄ら寒いもの感じるな。
まぁ、柄は文字通り綺麗に消えてなくなるんだから、元の事件が何なのかは知らんが、ソレが表沙汰になることはない。
正に闇から闇へ、だ。
……ただな、やっぱりこんな仕事やってるとやりきれないって思うこともままあるさ。
明らかに軽いバッグを持たされたとき、あの女の家で空けた段ボールから心臓やら肝臓やらが抜かれていたとき。
そんなときには否応なしに社会の闇が見え隠れする。
なにかやらかして、その制裁でバッグに詰められるようなやつに同情はしないがね。こうして誰かが喰ってくれるなら、社会の片隅もちょっとはキレイになってるってもんだろうさ。
だが、明らかにヤバい商売の商材として扱われ、その残りが廃棄物扱いってのは何度やっても心にクる。
そんなモノをみてうっとりしながらどうやって食べようかって思案するあの女の姿は何度見ても寒気がする。
……まぁ、だからといってそれに異を唱える気なんてサラサラ無いが。
俺はそんな事を言えるような立場にはないし、 そもそも今更いい子ぶるなって話でもある。
それより何より、1から10まできっちり分業され尽くしている組織の歯車になってる俺がどうこうしようとしたところで何も変えられんだろうさ。
歯車を交換したらそれで終わり。不要な歯車は廃棄物として出荷され、俺の後任か同業者が運んで、最後はあの女の食卓だ。
一応運ぶのはあの女のメシだけじゃなくて、相変わらず密輸だの不法投棄だのの仕事もあるから実入りは悪くはないんだがな。
なんで、そこまでの文句も実はない。……まぁ、精神衛生にもう少し気を配ってほしいとは思うがね。
……って、この伝票よく見たら特急案件じゃねぇか。また徹夜コースかよ……
あの辛気臭いヤードで上がり待ちとかイヤすぎる……




