幕間 ある配達員、藤嶋晃から見た羽鳥凛鈴
予約忘れて、投稿遅れました
申し訳ありません
俺がこの仕事してるのは、別に誇りがあるとか、正義感がどうとか、そんな話じゃない。
一言で言やあ、「選べないだけ」だ。
誰かに拾われて、しがみついて、飯食うために肩書きつけて、今こうして車を走らせてる。
人間がやるべき仕事じゃないのは、とっくにわかってる。
武器も運んだ。麻薬も運んだ。
生きてる奴も、死んでる奴も。
“処分”される前のものを、笑顔で引き渡されたこともあった。
けどな。
それでも、アイツだけは、別格だ。
羽鳥凛鈴。
最初に依頼が来たときは、「食品関係。特殊調理用」って聞いてた。
依頼元はうちの組織が手を出せない“上”からだ。
名前も顔も知らねえ。けど、どこかの部門で“始末された”連中の一部が、どうやら羽鳥凛鈴のところに回ってるらしい。
最初の荷は“手足付き”だった。
当然、俺は聞いたよ。「処理済みか?」って。
担当が言ったのは、「調理されるから問題ない」――だと。
……その瞬間、全部察した。
あの女は、“処理”の最終段階を担ってる。
しかも“丁寧に、美味しく”だと?
狂ってやがる。
何が「趣味は料理」だ。
何が「料理研究家」だ。
あんな料理作ってて何がプロフェッショナルだ。
それでも俺は荷を運んでる。断れない。
降りたらどうなるか、痛いほどわかってるからな。
実際、何かやらかしたらしい若いのが一人、引きずられるように何処かへ連れてかれたかと思ったら、次に見た時は物言わぬ姿になってたわ。
それを"加工屋"に運んだのも俺だし、その加工屋からあの女に届けたのも俺だ。
なんともイヤなルートだが、下手な断り方したら次は俺がその荷物になって、あの女の食卓に上るんだろうな。
言っておくが、俺はディナーの食材に立候補する趣味は無い。拒否権なんか無いのさ。
だが、俺が本気で怖くなったのは別のことだ。
あの女――事もあろうに肉を“お裾分け”してる。
誰に? 隣人。通りすがりの主婦。つまりその夫とガキまで"あの肉"を美味しく頂いてるってわけだ。
はっきり言って正気じゃねえ。
お前が食ってるのは何だよ。
その冷蔵便、どこから来たと思ってやがる。
冷蔵庫に入り切らないとか言われた時も焦ったが、コレはそれ以上だ。
もし、事が公になったらどうする気なんだ? 表に出していい肉じゃないだろ、あれは。
でもな、もっと信じられないのは――
肉を貰ったそいつらが、何も疑わずに笑いながらその肉を食ってるってことだ。
マジで狂ってるとしか思えないね。
……正直もうやめたい。あの女の周りにはまともな奴なんて一人もいない。
同じ死体処理でも、まだゴミとして埋めるほうがマシだった。
カタギなんて贅沢は言わない、せめてこのイカれてるとしか思えない現場だけは勘弁してくれ。
まぁ、どれだけ願っても何も変わらないんだけどな。
それで、俺は今日も内臓抜き取られたり、どこかの組織に消された奴らを、あの女共の食卓に運んでる。
やめられない。
あの女の笑顔が、穏やかで、優しくて、俺の背筋を凍らせるから。
……あと、一度食事の席に招かれたことがあったが、断固拒否した事だけは伝えておく。
本日は2話構成てす。




