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【BL】前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか  作者: Bee
前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
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「ん? 俺、誰かに似てました?」


 まさか……、いや、そんなわけないか。


「いや、ちょっと知人の若い頃に似ててね。つい」

「へぇ。若いときの顔をずっと覚えてるなんて。相当仲のいい方なんですね」

「うん、まあ、そうだな。……仲が良かったんだ」


 キャンキャンとロッシュが鳴きながら、自分のほうを見ろと言わんばかりに、二本足で立ち上がって俺の足にしがみつく。


「ロッシュ、もしかしてもう疲れたのか?」


 仕方ないなーといいながら抱き上げると、男性も「かわいいなー」と言いながら立ち上がり、さっき唸られたにもかかわらずまたロッシュの頭を撫でた。


 当のロッシュは頭を振って、その手を振り払っていた。


「ここにはよく来られるんですか?」

「ああ。家が近くなんだ。ロッシュはこの河川敷がお気に入りで、散歩はここって決めてる」

「じゃ、俺もまたここ来ますね。俺も最近、よくこの辺でトレーニングしてるんで」

「トレーニング?」

「俺、大学でトレイルランやってて。よくこの辺を走ってるんです」


 若いと思ったら大学生なのか。


「トレイルラン?」

「山道とかの不整地を走る競技です。この河川敷、端のほうは階段があったり坂があったり、でこぼこしてて不整地なみに荒れてるんで、よく来るんですよ」

「へえ」


 確かに言われてみれば、スポーツウェアを着ている。今はこんなおしゃれなランニングウェアがあるんだな。おじさん走るの興味ないから知らなかったよ。


 それにしても山か……。本当に彼は黒木を彷彿とさせる。もしかして本当に黒木だったりして。


(まさかな。でも生まれ変わるなら、どんな人になるのかとか、目印とか聞いておけばよかった)


 でも黒木よ。もし彼が本当にお前の生まれ変わりだとしてさ。

 生まれ変わったら恋愛の相手にって、お前。こんな若い子、俺の相手になるわけないだろう。

 どうせ恋愛には発展しない。せいぜいこうやって散歩で挨拶するだけの仲が関の山だ。



 ――と、当初はそう思っていた。


 不思議なことに、あれから一ヶ月後の今、なぜか彼は俺の家にいて、ロッシュの頭を撫でようとしては、キャンキャンと吠えられている。


 彼が本当に黒木の生まれ変わりかどうかはわからない。

 それこそ、神のみぞ知ることだ。


「ユウジさん、俺コーヒー淹れますね」

「ああ、ありがとう。じゃあ俺は、以ってきてくれたパウンドケーキでも切ろうか」

「今日は、チョコチップとバナナのケーキですよ」

「へぇ。今日のも美味そうだ」


 勝手知ったると言わんばかりに、彼は遠慮なくキッチンに立つと、慣れた手付きでコーヒーの準備を始めた。


 ちなみに、ケーキも彼の手作り。

 スポーツマンの彼がケーキを焼くなんてと最初は驚いたけど、お母さんがケーキ作りが得意で、よく一緒に作っていたそうだ。


 彼がコーヒーをセットしている間に、俺はその隣で、ナイフを取り出し、ケーキをカットする。


「……ユウジさん。俺、ユウジさんと仲良くなれてスゲー嬉しいです」

「え? なんて? あ、いてっ」


 耳元でそう囁かれ、動揺が手元を狂わせる。


「大丈夫ですか!? 見せてください。あー……ちょっと切れてますね。俺、ユウジさんのこういうおっちょこちょいなとこととか、大人なのにスゲーかわいいなって」

「……」


 ――ああ神様。こいつは絶対に黒木ですよね!?


 上目遣いで、チュッと俺の指の血を舐め取る彼を見て、俺はゴクンと唾を飲み込んだ。

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