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06・王太子殿下①


 女王陛下から王太子殿下の第一執務補佐官となるように異動を命じられた翌日。

 私は王太子殿下の執務室前にやってきていた。


 ――き、緊張する……。


 重く閉ざされている執務室への扉。

 この扉の先に王太子殿下がいらっしゃるのだと思うと、どうしても緊張してしまう。

 私は鼓動を落ち着かせるように、胸の前でぎゅっと両手を握りしめた。

 一度、深く深呼吸をする。

 

 ――大丈夫、大丈夫よソフィリア。女王陛下は私を認めてくださったのだから。


 陛下から昨日いただいた「お前の仕事ぶりを買っている」をいうありがたいお言葉を思い出す。

 女王陛下に王太子殿下の第一執務補佐官として選んでいただけたのは、光栄なことなのだ。

 せっかく与えられた機会。精一杯頑張らなくては!


 ――よし!


 私は意を決して執務室の扉をノックする。すると、中から「はいはいー!」という妙に明るい男の声が聞こえてきた。

 次いで、がちゃりと目の前の扉が開かれる。

 

 中から扉を開けてくれたのは、一人の爽やかな青年だった。

 襟足のあたりで束ねられた青年の茶髪は、まるで日の光を浴びた麦畑のようだ。

 青年は私の姿を認めると、琥珀色の瞳をきらりと輝かせた。


「あ! もしかしてソフィリア様ですか?」


「え、あ、はい!」


「お待ちしておりました! どうぞ中へ!」


 ――明るくていい人そう……。


 青年の明るい声を朗らかな微笑みに、ほんの少し緊張が和らぐのを感じる。

 執務室の中にいたということは、この青年が王太子の侍従だろうか?


「殿下殿下! ソフィリア様がいらっしゃいましたよー!」


 青年は王太子殿下に向けてか室内へと呼びかけると、私の方へもう一度振り向いて「どうぞ!」と室内へ入るように勧めた。

 彼に勧められるまま、私は扉をくぐる。

 

 全体的に木製の家具で揃えられた執務室内は、落ち着いた空気が漂っていた。

 部屋の左右には本棚が置かれ、ぎっしりと本が詰まっている。

 私の新たな直属の上司となるであろう人は、そんな部屋の最奥に置かれた執務机の前に座っていた。その後ろには大きな窓があり、快晴の青空が広がっている。


「エリオット……。わかったから大きな声で騒がないでくれ」


 執務机で作業をしていたらしい金髪の青年は、茶髪の青年の声量に眉を(しか)めながら俯けていた顔を上げた。

 顔を上げる動作に合わせて、青年の金の髪がサラリと揺れる。窓から差し込んでいる陽の光を受けて、より煌めいているように感じられた。

 

 ――ああ、やっぱり。この間中庭で私を受け止めてくれた人だ。


 先日中庭で、シュミット様に肩を押された時に、私の背中をそっと支えてくれた金髪の青年。

 やはりこの人が王太子殿下だったのだ。

 


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