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W婚約破棄された伯爵令嬢はクーデレ王太子から愛されていることに気づかない  作者: 雨宮羽那
第4章

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33・殿下はストレート


「――……リア」


「えっ、ウィリアム様!?」


 どこから呼ばれているのだろうと周囲を見回してみると、私たちが先ほど出てきた城の入口の方からウィリアム様が私の名前を呼びながらこちらへ向かってきているようだった。


 ――ど、どうしてここにいるの?


 てっきり執務室にいると思っていたのに、ウィリアム様はなぜ城の前庭などに来たのだろうか。今日はウィリアム様に外出の予定は無いはずだ。


「ウィリアム様、どうされたんですか?」

 

 私は困惑しながらもウィリアム様の元へ慌てて駆け寄る。

 ウィリアム様は私の姿を見て、ほっとしたような顔をしていた。


「君を探していたんだ」


「私を? な、何かございましたか?」


 わざわざウィリアム様自ら探しに来るほどの用事があったのか、と私は身構えてしまう。

 しかし、私の問いかけにウィリアム様はゆるりと首を横に振った。


「いいや、俺がただ君に会いたかっただけだ」


「……っ」


 ウィリアム様のセレストブルーの瞳が、真っ直ぐに私へ向けられる。

 ストレートな言葉と、私へ向けられた視線の奥に甘やかな熱を感じてしまって、私はすっかり言葉に詰まってしまった。

 

 午前中、執務室で共に仕事をしていたというのにウィリアム様はおかしなことを言う。それなのに私はウィリアム様を茶化すことも、あしらうことも出来ない。

 それは、ウィリアム様の態度に、嘘や誤魔化しの色が欠けらも無いからだ。

 だから、こちらも真っ直ぐに向き合わなくてはいけないという気持ちになる。


 私が返しに困っていると、ウィリアム様は遅れて私たちの方へやってきたブランカ様の存在に気づいたようだった。

 

「あれ、君は……ブランカ?」

 

「ご無沙汰しております、殿下」


「久しぶり」


 ウィリアム様はブランカ様へちらりとだけ視線を向け、それからすぐに私へと向き直った。

 ウィリアム様の視界には、ブランカ様はもう入っていないかのよう。


「それで、ソフィリア。俺は君を誘いに来たんだ。一緒に中庭へいかないか?」


 ――私、ウィリアム様と話すのが気まずいって思っていたはずなのに。


 先ほどまでは確かにそう思っていた。それなのに、ウィリアム様に話しかけられただけでその思いは吹き飛んでしまった。

 ウィリアム様が、わざわざ私を探してまで誘いに来てくれた。たったそれだけのことでこんなにも嬉しくなるなんて、思ってもみなかった。


「で、ですがウィリアム様、私、午後の仕事がありまして……」


 私はウィリアム様とは違って普通の人間だ。爆速で仕事を片付けられるウィリアム様とは異なる。

 私には午後の仕事が残っており、いくらウィリアム様からの誘いでも、仕事を放って中庭へ行くのは気が引けた。


「急ぎのものはないだろう。それに、仕事ならエリオットに任せればいい。一応あいつに言ってきてはいる」


 そんな私の心情に気づいているのか、ウィリアム様はそう言葉を続ける。


「え、な、なんと言って出てきたのですか?」


 一応エリオットはこのことを把握しているらしい。それならまだ、と思わなくもないが、ウィリアム様はエリオットに一体何と言ってでてきたのだろうか。

 

「ソフィリアと休憩したいから探してくる、と言ってきた。エリオットは『承知です! 後のことは俺におまかせを!』とか言っていたから大丈夫だ」


「エリオット!?」


 ウィリアム様はいつも通りの無表情でさらりと答える。テンション高くウィリアム様へ返事をしているエリオットの姿が頭へ浮かんで、私はめまいがする心地だった。

 

 ――執務室は大丈夫かしら……。


 果たしてエリオット一人で大丈夫なのか。

 有能なはずのエリオットだが、調子に乗るとなにかしでかすのはもう承知のことだ。彼のテンションが高いと、妙に不安になってしまう。

 

「俺は、君にそばにいて欲しい」


 しかし、ウィリアム様に畳み掛けるように言葉を重ねられて、私は自分が断れないことを悟った。


 ――この王子様、意外と強引なんだけど!?


「……っわ、わかりました! お供いたします!」


「ありがとう」

 

 ウィリアム様の押しに負けて、半ばやけになった私は了承する。私の返事に、ウィリアム様はどことなく嬉しそうだった。


「……ああ、そういうことなのね」

 

 私たちの様子をしばらく見守っていたブランカ様は小さく呟いた。

 そういえば完全にブランカ様を放置してしまっていた。振り返ると、ブランカ様は穏やかな表情で私たちを見つめていた。


「わたくしは殿下のそんな態度も表情も、何一つ引き出せなかった。ソフィリアさん、お幸せに」

 

「そ、そういう関係じゃ……!」


 ブランカ様の言葉を咄嗟に否定しようとしたが、それよりも前にウィリアム様に手を取られた。

 柔らかく握られて逃げられなくなる。

 

「行こう、ソフィリア。じゃあブランカ、またね」


「……ええ。おふたりとも、また」

 

 ブランカ様はにこりと微笑んだ。私へ向けてか片手を振ってくれる。

 私はウィリアム様に連れられるまま、前庭を後にすることになった。

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