卒業出来ない
『あぁ~明日で楽しかった学生生活が終わるんだなぁ〜。
嫌だなぁ〜卒業したくないなぁ〜』
明日は通っていた大学の卒業式。
卒業したら働かなくてはならない、今までの勝手気ままな学生生活から社会や会社のルールに従って暮らす会社員になるんだから、当然だけど。
そんな事を思いながらある神社の前を通った時、俺の耳に『その願い叶えてやろう』って声が聴こえた。
え? ってなって、回りを見渡したけど俺以外に人の姿は無い。
だから空耳だと思ってた。
卒業式の当日の今日、卒業式が行われる講堂に足を踏み入れて空耳じゃ無かったって気がつく。
だって講堂で此れから行われるのは入学式だったからだ。
なんだ? なんだ? と回りを見渡すと、後ろに俺の入学式を観ようと付いて来た親父がいる。
禿が進行して髪が殆ど無くなった親父じゃ無く、4年前のまだ髪が半分程度残っていた頃の親父がいた。
大学生活をまた4年過ごせると知って俺は歓喜する。
声が聞こえた神社にお礼参りにも行った。
でも卒業式の日に講堂に入ると、入学式の会場になっているってのは1回だけじゃ無かったんだ。
何度も何度も繰り返される。
最初は良かったよ、値上がりする株とかを購入したり高額当選するロト7を購入したりして、最初の学生生活では行けなかった海外旅行に行ったりタワーマンションの最上階を購入したりした。
でも……入学式の俺に戻ると、それらの儲けた金も購入したマンションの部屋も持って無い普通の学生に戻っているんだ。
それに4年間の学生生活を数百回数千回繰り返していたら、やりたい事ややりたかった事をやり尽くしてしまった。
学生生活を終わらせたいと思い自主退学しようとしても自殺を企ててみても、なんやかんやと邪魔が入り出来ない。
もしかしてなんだけど、あの時俺に声を掛けたのはあの神社の神様じゃ無くて、通りすがりの悪魔か悪神だったんじゃないかと今思ってるんだ。