43話
「皇女様お誕生日おめでとうございます。」
パーティー会場に入ると、私とフィリックは兎にも角にもクレム皇女に挨拶に行った。
主催者に最初に挨拶に行くのが当然のマナーだからである。
「ありがとう、まさかフィリック卿に祝ってもらえるとは思わなかったわ。」
以外にもクレム皇女は丁寧に返事を返してくれた。
まぁ、嫌味たっぷりだけど、事前に聞いていた印象よりは悪い人ではなさそうだ。
というより
「この国を治める方の娘さんですから、当然です。」
フィリックの言い方が問題な気がしてきた。
これから皇族たちにあなたたち支えていくんじゃないの?公爵ってその筆頭でしょ?
もっと愛想振りまいたらどうなのよ!
「あなたって人は、昔っから可愛くないわねぇ。」
まぁ皇女の方も別段気にした様子はないからいいけれど。
それにしても、気になるのは……
彼女がこれだけ突っかかってくるのは、性格のせいなのか、公爵家との関係性でそうしてるのか、フィリックが聖女の婚約者だからなのか……理由が開目見当がつかないわ。
私が執筆した時は、皇女がいるって設定はしていたけど、出番なんかないから、名前すらつけていなかったし、性格なんて全く決めてなかったもの。
発してる言葉も意味も、嫌味なのか、愛情の裏返しなのか、本当に疑いや憎しみなどの負の感情でフィリックにあたってるのか……
ルナとして皇女にあったこともないから判断材料が少なすぎる。
フィリックが皇女と会話してる間、彼女を見定めるためにじーっと見つめていたのだけれど……それが良くなかったのだろう。
「今日は聖女の可愛らしい声が聞こえないわね。どうしたのかしら」
皇女に言われて、私は何か言わなきゃと思い口を開いた。
けれど、何か言葉が発せられることはなかった。
フィリックに口を塞がれたからだ。
「すみません、彼女少し風邪を引いてしまったようで、本日は声が出せない状況なので、お祝いの言葉は私だけで勘弁いただけましたら」
「そうなの…?重ね重ねあなたも災難ね。親戚も怪我をして……あなたまで体調不良だなんて」
何を言ってるのかしら。
私はこんなに元気なのに……あ、ほら、そんな見え透いた嘘つくから、クレム皇女が私に疑いの目を向けてるじゃないの!
「でもよかったわねフィリック卿、婚約者が無傷で。」
しかも嫌味まで言われる始末。
「他人の不幸を喜ぶような、できた人間ではないので」
「お上手だこと。」
そして、フィリックの返事に対し、皇女は再び扇子をバッと開いて口元を隠し、ニヤリと笑った。
この皇女、やっぱ嫌味な人。
「それでは、お祝いも述べさせてもらいましたので。失礼します。」
フィリックもいうことは言ったようで、退散しようと最後お辞儀をした。
「ねぇ、フィリック」
少し距離が空くと、私はフィリックに声をかけた。
「風邪設定、黙ってろ」
「そんなに強く言わなくてもいいじゃないのよ!大体なんで話しちゃダメなのよ!」
「声でバレるっての!」
あぁ、なるほど……だかららさっき私の口塞いでまで喋らせなかったわけね。
彼なりに、私がリイナじゃないってバレないように庇ってくれたわけだ。
「でも言ってもうう回くらいでしょ?そのくらいなら忘れてるわよ」
「皇女を甘くみるな、あの人は一回で何でも覚えられる化け物だ。どっちにしろ、会場にいる貴族とは話したことあるだろ?今日一日喋れないと思え」
「うそでしょ!?」
「事実だ。とにかく、入れ替わるんなら、そのくらい計算してから来い!」
ただでさえ、何千何万という人数と会っている皇女が、たった3回だけで相手の声までも覚えられるというの!?
人間の記憶力でそんなこと可能なのかしら……?
私が衝撃的な事実に頭を困惑させていると、フィリックはため息を吐き、譲歩案を出してきた。
「まぁ、俺とは別に喋ってもいいし、代弁もする。ただ、扇子で口元隠して話せ。」
もちろん黙っていられるような性格ではない私は、私は仕方がないので、扇子を開き小声で話しかけた。
「あの子は来ると思う?」
「……宣伝はバッチリだけどな……庶民にも知られてたし。どこにいてもリイナが来ることは耳に入ってるはずだ。」
「襲うとしたら、いつだと思う?」
「一人になったところを狙うかな……」
「一人……ねぇ……」
私は会場中をキョロキョロと見回す。
あの日よりも人がごった返していて、どこに誰がいるかもわからない。
というより、姿を消せるなら、辺りを見回したくらいじゃ見つけられるわけないわよね。
今ここにいるかどうか、判別はできない。
一人になるにしても、タイミングが大事だけれど……
「フィリック様……」
そんな時だった、フィリックが会場スタッフから声をかけられたのは。
なんだろう、公爵家に関係する仕事の話でもあるのだろうか。
「なんだ?」
その使用人はフィリックに耳打ちをする。
それを聞いたフィリックは表情を変えた。
「どうしたの?」
「……アレが届いたらしい」
「思ったより早いのね。で、なんでそんなにあたふたしてるのよ」
「搬入に少し時間がかかってるらしくてな」
「まさか、手伝えって言われたの?どんだけ持ってきたのよ……小瓶一本でも十分なのよ?
「神父が一発で命中できなかった時まずいからって。」
「まさか、皇宮中にやるつもり?」
「ということだろうな、容量オーバーで手続きとか確認とか必要なんだとさ」
そういえば、あれ一応、公爵なり聖女なりの差し入れってテイだったっけ……
じゃあ二人のどっちかが搬入口いかなきゃいけないのか。
私が偽物やってる以上、フィリックがいくしかないのよね。
「けど、あれないと話にならないものね……わかったわ、ここは私一人でいいし」
「だけど、一人にするわけには……」
「何言ってるのよ、どうせ一人にならないと誘き出せないでしょ。いい機会じゃない。」
「それは確保できる人間がそばにいればの話……誰もいない時に一人になっても意味が……」
「平気よ、大丈夫。一回呪われてる私に、もう呪いは効かないわ。魔法が効かないなら、子供くらい私の腕で抑えられるわ!」
私は自信満々でフィリックにそう伝える。
そんな私を見て不安そうな表情を一瞬見せるけれど、諦めて私にこういった。
「……一応声かけとくから、危なくなったら声かけろ」
「誰に、なんて?」
「なんでもいい、任せる。大声出せばなんとかなる。」
フィリックはそうとだけ言い残すと、それ以上くわいい説明をすることなく手を振って会場を出ていってしまった。
「……何よ、声出すなって言ったくせに。」
まぁ、なんとかなるでしょう。
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