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第40話 女子たちの夜



あれから時間が経ち、夜。


私は寝支度をするために、色々準備をしていた。


部屋のノックが聞こえてきたのはその頃だ。

ガチャリと扉を開くと



「ルーナッ!」



パジャマ姿で枕を持ち、満面の笑みで私の名前を呼ぶいとこの姿があった。


なんか怖くなったので、扉をゆっくり閉めようとすると、表情を崩さないまま、足でガッと扉を押さえられてしまい、それを阻止される。


怖い



「な、何……どうしたの?もう私寝るんだけど……」



「だから、一緒に寝よ?」



表情を変えないまま、首を傾ける。

聖女様は一緒に寝ることをご所望のようだ。



「間に合ってます」



「違う違う、そういうことじゃなくて!」



「何」



「ほら、いろんなことあったじゃん?今日?だから、一緒に寝てあげようかなーって。」



「おやすみなさい」



私はもう聖女だろうがいとこだろうが友人だろうがお構いなしになり、無礼承知で足をガンッと蹴り上げて、扉から足を剥がすと、再び扉をバタンと閉めた。


しかしそれで諦めるはずもなく、ドンドンと扉をさっきより強くノックをするリイナ。



「おちょくってごめん!嘘だから!パジャマパーティーしようよ!憧れてて一回やってみたかったのー!」



いつからそんな駄々っ子になったのよ

全く、今日私が抜け出すまで、ずっと文字通り付きっきりで看病してくれていたけれど、さすがに寝る時は退室してくれてたのに……どうしたのよ今日は……一緒に寝たいなんて。



「いいでしょこんな日くらい。心配なの……ルナ一人にすると、枕を一人で涙で濡らしてそうだもん」



もはやそれ、心配じゃなくてイジリよね。

別に枕を涙で濡らす予定なんか全くないんだけど……

まぁ、このままだとさらに騒ぎを大きくしそうだし、女同士一緒に寝るくらいいいか……。


私はもう一度扉を開く。



「まぁいいわ、どうぞ、入って。」



そういうと、リイナは子供のように喜んで部屋の中に入った。

そしてひとしきりキョロキョロした後で、ベッドの脇に座った。



「どう?神殿で寝泊まりするの慣れた?」



部屋にリイナを入れた後、寝支度の準備を再開と客人用《リイナ用》の紅茶を入れていると、リイナからそんな質問をされた。



「一週間も寝てればね……しかもほとんど外出してないからむしろ馴染んだわよ。」



「あはは〜」



私の嫌味を嫌味とわかってて受け取ったのか、気づかず受け取ったのかはわからないけれど、笑って流される。


でもそうか、もう一週間も私ここにいるのね。

儀式終わったらすぐ屋敷に帰るはずだったのに、一度も帰らずにここにいるのよね。

よく考えたら、ただここで寝かされて看病されてただけだから、どういう経緯でここで寝かされて、どういう治療を受けていつまで泊まるのかとか、何も聞かされてないわ。



「私、そろそろ帰らなくていいのかしら……もうできることは何もないわよね?」



「怪我は治ったみたいだよね。」



「こっちの方はできること何もないし……特に何か神父がしてくれるわけでもないし……」



「だけどさ、帰ったところで……っていうのもない?ここだったらいざって時助けてもらえそうだし」



私はリイナに紅茶を渡しながら、そう言われてちょっと考える。


まぁ……確かに。

一応今はリオスのおかげで健康面の問題は何もないし、死ぬまでは何もないから、治療とか本当に大丈夫なんだけど……


なんかあった時に助けてもらえるっていうのは……結構助かるかも。



「まぁ、……お世話になりすぎてて申し訳ないんだけど。」



「でも、私もお世話になってるし、聖女の親族ってことで特権でOKじゃない?」



「え、職権濫用?」




もしかして、私が頼めば誰も断れないから、親族のために部屋くらい貸してもらってもOkだよね!

みたいな考えで、今私部屋化してもらってるの?特例で?


不安だわーこの子の未来。


どうしよう、将来『私は聖女なのよ、みんないうこと聞くのが当然なの』みたいな子になっちゃったらー


なんて心配したけれど……いらぬ心配だったようだ。



「そうだね…まぁ、何を持って幸せかと呼ぶかによるけど、側から見たらやっぱ羨ましくて欲しい称号だよね。」



よくよくみてみると、リイナは少し寂しそうに笑っていた。

本気で言ったわけではないようだ……というよりも皮肉ってわざと自分で言っているだけのようだった



「聖女……もしかして嫌だった?」



「まさか、光栄なことだよ。聖女になれなきゃ、婚約許してもらえなかったし。公爵に直で言われたこともあるよ。伯爵令嬢ってそんなに悪い爵位じゃないし公爵家と結婚した伯爵令嬢はいっぱいいるけど、数の多い伯爵令嬢の中から、わざわざ私を選ぶ理由はないって」



「フィリックのお父さんって最低ね」



「頭が硬いだけだよ」



そういうと、私が渡した紅茶をすすった。

普通、この話の流れの場合、相手をフォローするのが相場だと思うんだけど……

今のリイナの発言はフォローにはなってないかな。


でも、この後の発言を聞くと、そんな気分にすらならなかったのだろう。



「こういうことがあるから、みんなこの座が欲しいし、皇女様は鬱陶しいんだよね。私が聖女である限り、ずっと狙われるわけで……。」



「リイナ?」



「私が……聖女じゃなくなればいいのかな?そしたら、面倒なこと全部なくなるかな?」



「ちょ……ちょっと、何を言い出すのよ。」



「聖女が他の候補者になれば……その魔女は……ルナの呪い、解いてくれるんじゃないかなって……だったら」



「それはダメ。」



私は力強くリイナにそう言った。

私は別に……そんなことを望んでいない。



「あなたが聖女じゃなくなったら……失うものが多すぎる。」



私が黒幕を降りたのは、何も自分が助かりたいからじゃない。

転生して、せっかく会えたリイナに……みんなに……幸せになって欲しいだけ。

庇ったのだって、感謝されたかったんじゃない。

ただただ……助けたかっただけ。


その過程で、聖女であることを捨てられても、何も嬉しくない。

それに……



「聖女になりたかった誰かが黒幕なら、それで解決するかもしれないけど……もし他の何かだったら?あなたの命を奪うことだったら?何の解決にもならないわ。あなたは、聖女になって、認められて、フィリックと結婚して幸せになるの!そのために、私も呪いとくから」



私が勢い任せにそうリイナに告げると、最初はびっくりしてポカーンとしていたリイナの表情も、次第にやわらぎ、ふふッと笑い始めた。



「私のことばっか。もうちょっと自分のことも気にかけてあげてよ。昔みたいにさ。」



「何言ってるのよ、気にかけてるから色々行動してるんじゃない」



っていうか昔の私って何よ。

昔の私は自分のこと気にかけてたって意味?それとも自己中って意味?


全く、慰めるつもりなら言葉を選びなさいよね。


私はリイナからカップを回収すると、所定の位置までカップを下げた。

後で神殿の誰かに下げてもらおう。



「ルナ」



私がカップの片付けをしていると、いつの間にかベッドの上に横になっていたリイナにこんなことを聞かれた。



「呪いをときたいのは……私のため?」



「え?」



「私のために呪いとくの?」



「なんでそんなこと聞くの?」



「クロウから聞いた。めずらしく落ち込んでたって。」



それを言われて、私は納得した。

全く、余計なことを……いつの間に吹き込んだのよ




「私が聖女じゃなかったら、呪いで死ぬかもしれない運命、受け入れてた?」



「何その自惚れ」



私はリイナの質問をバッサリ切る。

そしてカップを片付け終わった私は、ツカツカとベッドの近くまで歩きながら話した。



「死ぬことを受け入れるわけないでしょ、ぜーったいに嫌よ!」



「で…でも……」



リイナは焦ったように体をもう一度起こす。

と同時に私はベッドの脇に到着し、そこにどかっと腰を下ろした。



「……私はね、わがままなの。死なないのはリイナのためでもあり、自分のためでもある」



そしてフンっと鼻息を荒くしてそう答えた後、ふと私は発言の間違いに気づいて、言い直した。



「あ、違うな。自分が呪いを解いて生き抜きたいって気持ちの方が上かも」



それを聞いたリイナは



「ルナらしいね」



リイナがそういうと、私たちは顔を見合わせて、ふふッと笑い合った。







ここまで読んでいただきましてありがとうございます!m(_ _)m


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