始まり
特別な力を持つ二人のキズナの物語。
どうなるのかをお楽しみくださいませ!
俺の名は『クロス』俺が暮らす世界『ゼロジール』に生まれ…今はギルドの依頼をこなす冒険家だ。
この世界でギルド冒険家として生きてきたが…やはり一人で冒険へ出るとなると正直厳しいものがある。今では様々な依頼をこなしているが冒険家になりたての頃は一人苦労して冒険をしてきたのだ。
では…なぜたった一人でギルドの依頼をこなしてきたのか?
それには理由がある…。
この世界には剣と魔法が存在する、いわゆる力こそが全ての世界である。
そして世界には俺達人間族以外にもエルフやドワーフ等様々な種族が存在する。
勿論モンスターもだ。
だから剣と魔法での戦いは必定ではあるのだが魔力のある者は魔導士となる、または聖職者となる者…そして元々魔力が足りない者は戦士や武闘家となったりする者もいて、力、素早さも人並み以上にあればこそ、これも可能となる。
だが…俺はどちらも人並みでしかなかったのだ。
だから本当なら冒険家を諦めなければならなかったのだ。
しかし今ではギルドの依頼も人並み以上にこなせる。
その理由は…。
これは人には言えない秘密なのだが…。
俺には昔から誰にも言えない力があったのだ。これは俺の生まれた家に代々伝わる能力。
それは『魔神具』と呼ばれ古より伝わる魔神の力を宿した魔導具である。
俺はこの魔神具を扱う力を持っていたんだ。
この魔神具を俺と幼なじみの『シロナ』の家では代々守り、そして使用する伝承者として育てられてきたのだ。
しかしあまりにも強大で恐るべき力を秘めている為…門外不出…口外禁止の代物なのだ。
この秘密を共有できて秘密をお互い守れる者でなければ俺のバディ(相棒)としてやっていけないのである。
これが俺がしばらく一人で冒険をしてきた理由である。
だが…俺はひょんな事から昔からの幼なじみである『シロナ』と運命の出会いを果たしそれからずっとシロナと俺は相棒として共に冒険をしてきたのだ。
そして今日も今日とて俺達はある洞窟の前に来ていたのだった。
◇
◇
◇
「準備はもう出来てるけど?どうかしたの?」
「あ!いや…こっちも準備は出来たぜ!」
彼女の名は『シロナ』昔から近所に住む俺の唯一の幼なじみでもある。
そして俺も彼女もお互いのやるべき事を目指し成長してきたのだ。
俺は冒険家になるべくしてその道を進み、彼女は聖職者になる為にその道を進んだのだ。
それから俺は冒険家として少しづつ依頼などをこなし力をつけていき現在は並の冒険者以上になれたと思っている。
◇
◇
◇
「さぁ…シロ…じゃあ準備はいいか?」
「オッケー『クロ』!」
今回俺達はとある洞窟に、あるモンスターが住み着き近くの村に悪さをしてくるという情報を得てここに魔物討伐に来たという訳だ。
ここで有難い事にシロナは聖職者…自分の生まれ持った僅かな魔力を活かす為に努力し回復魔法を僅かだが使える様になったのである。
「この洞窟の最奥にはスライムの繁殖地があるらしい…だが…これまで中にスライムを討伐に来た冒険初級者達が何故か…帰ってこないそうだ。」
「それで私達に依頼が?」
「ああ…ギルドマスターからの直々の依頼だ…たまにはこんな依頼も協力しないとな?」
俺はそう言うとましろにギルドの依頼書を見せる。
ましろは俺から依頼書を受け取ると開き見る。
『レティス村より…村外れの洞窟内にてスライムの群れ発見される…至急討伐依頼。』
「なるほど…でもタダのスライムならきっと私達に依頼は回ってこないよね?」
「シロ…流石、感がいいな…どうやらこの一件には何か別の要因が絡んでそうだぜ…。」
俺はそう言うとましろは依頼書をしまう。
「魔神具…?」
「おそらく…な…」
俺は腰袋から一つの人工的なライトを取り出す。
これは俺が作った人工的な魔神具…『ライティア』簡単に言うと洞窟内に明かりを灯してくれる人工的な道具だ。
だが俺が作るこの魔神具には、あるエネルギー源が必要な為俺達二人にしか使用できないのである。
俺は洞窟内を見据えるとライティアを掲げる。
『ライトウェブ!!』
ライティアは光り出していきその光はまるで波のように洞窟内部へと光を灯しだしていく。
「流石!」
「オッケーだ!後は光の波が奥まで照らしていくから進もうぜ!」
「うんっ!」
こうして俺達二人は洞窟内部へと足を進めるのだった。
◇
◇
◇
俺は先頭に立ち洞窟内を進んでいく。
「スライムの群れって依頼書には書いてあったけど数種類のスライムがこの洞窟内にいるのかなぁ?」
「そうみたいだな…だけど特殊なスライムがいる事は間違いないだろうな。」
俺がましろにそう言うとましろは何かを感じ取ったみたいだ。
「なにか…奥に何かの魔法力を感じる……。」
「魔法力を持つ…スライム……か?」
「そうみたい…気をつけ…。」
ましろはそう言うと言葉を止める。
「どうした…シロ……?」
「キャッ!!」
俺が後ろを振り返ると先程まで後ろを着いてきていたはずの相棒の姿がそこから忽然と姿を消していたのだ!
「シロ!?」
俺は見渡すも何処にも彼女の姿はなかった。
足元も調べるもそこには何もない状況に俺は焦る。
(シロ……。)
頭上、そして辺りを調べるも俺の視界から忽然と消えたシロナの事を考えるとふと昔の事を思い出す。
◇
◇
◇
それは俺がまだ学生時代の事だ…。
◇
◇
◇
「あ!『クロ』!」
俺が振り返ると声をかけてきたのは幼なじみの『シロナ』の姿だ。
彼女は同じ学校に通っていた…まあ俺は高等…彼女は中等であったが彼女は幼い時から一緒の関係…ついつい俺のお世話をしてくれていた。
「なんだよ…『シロ』か?」
「なんだよ!じゃないわよ…じゃなかった!その言い方はどうかと思いますけど?」
「そうか?俺はずっと変わってないぜ!」
「そうだけどさ…学生にもなってるんだし色々さ!」
俺達はいつものように話すと二人で歩き出す。
すると『シロ』が口を開く。
「そう言えば…クロは高等卒業するけどさ…もうどうするか決めたの?」
「ん?ああ…もちろん!」
「冒険者…なの?」
「ああ…。」
「そっか……。」
あの時の『シロ』の寂しげな表情を俺の脳裏にずっと焼き付いている。
そして俺達はこんな会話をした後…俺は卒業し冒険者となり修行を続けてきたのである。
俺が冒険によく出る様になった事もあり『シロ』の顔を見る事もなくなり暫く経っていた。
そう…それから数年の時が経った。
俺がいつもの様にギルドの依頼を探している時だった。
ギルドに一人の聖職者の姿があった…。
どうやら冒険者登録をしようとしていたのだ。
「こんにちは!冒険者登録ですか?」
「はい!昨日晴れて聖職者の勉強を終えて冒険者としての許可が下りたのでこうして登録に来ました!よろしくお願いします!」
彼女は聖職者として初のギルド貢献にその目はキラキラとしていた。
(あれっ!?あれは…。)
俺は彼女を見るとどこかで見た懐かしい顔と声だった。
すると彼女も俺の視線に気づいた様子で俺を見るその目がうるうると輝いていた。
「クロ…ス。」
「シロナ…。」
こうして俺達二人は再会を果たした。
そしてその日から俺とシロナはバディとしてずっと冒険をしてきたんだ。
◇
◇
◇
「シロ…待ってろ!今行くから!!」
俺は我に返り目的をシロナ探しに変更し消えたシロナを探す事にする!
携帯用ライティアを頭に装着すると足元を照らす…。
すると床の一部分に見覚えのある印が記されている。
「これは…魔法陣か?」
俺は続きを照らすとどうやら本当に魔法陣が施されていたのである。
「転移魔法か…シロ……今いくぞ!」
俺は意を決し魔法陣に飛び込むのだった。
◇
◇
◇
シロナ視点
「ううぅぅぅ…ここは…?」
シロが目覚めるとそこは真っ暗な闇…自分が倒れていた魔法陣に気が付きふと我に返る。
「えっ!?ここはどこ?いつの間にか魔法陣で転送されたのかな…。」
私は辺りを見回してみるけど何もない闇の空間。
「クロ…大丈夫かな……。」
私はふとクロの事を考える。
◇
◇
◇
クロとずっと一緒に過ごしてきたのにクロが学校を卒業する事になり私は心が毎日の様に悲しみを覚える様になっていたの。
それまでは幼なじみとして…と言うより私達はお互い一人っ子だったせいもあり全てを分かち合う兄妹…相棒…お互い一緒にいる事が当たり前の存在になってしまっていた。
口には出さずともクロの卒業式の後に一緒に帰った時のクロはいつも明るく色々話していたのにその日のクロは少し違った様に感じた。
◇
◇
◇
「シロ!今日で俺と一緒に過ごせなくなるな!でもシロなら大丈夫だな!なんてったって俺の面倒みなくて良くなるもんな!はっはっは!」
そう言った彼の表情はいつもになくどこか寂しげに見えたの。
「もぉ!クロはそんな事言ってさ!でも本当にクロは忘れ物ばかりするし私がいないとダメなんじゃないの?」
「ん?そんな事はないぜ!俺だって少しは成長してるしシロの力を借りずとも…って……えっ……?」
次の瞬間…目から涙が溢れだしてくる。
「ひっ…ぐっ…うぅぅぅ…ぐすっ……。」
「シロ…。」
クロを前に涙は一向に止まらなかった。
私のこれからの寂しさの涙タンクはいっぱいで溢れ出し止まること無く私は泣きじゃくったの。
◇
◇
◇
クロス視点
俺はシロの後を追うため覚悟を決める!!魔法陣へと入ると目の前の空間は闇に入り込み俺の身体は流れる様にどこかへ移動していく。
この先には何が待っているのか…。
シロの無事だけを願い俺は身を任せる。
そう…俺はシロを救うべく…転移したのだ。