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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・12

「エアロビっすかぁ?うーん、そういう健康的なやつはうちのカラーじゃないんですけど」

 礼二くん少し困ったように他のマウントクリークメンバーを見る。女性メンバーが口々に、

「ツイストなら教えられるよ」

「んー、あたしもツイストだけ」

「エアロビ!あたしも習いたい!」

「ツイストと、あとR&Bなら少し」

「あたいはツイストとゴーゴーかな」

「え?五月さんゴーゴーってどんなのすか?」

 基本ツイストチームだからやっぱりエアロビックダンスは無理か。

「姉御、やっぱエアロビはジム行く方がいいんじゃないすかね」

「ん?礼二、何その姉御ってのは?そのお嬢ちゃん、どんな筋の姉さんなわけ?」

「そういやきちんとご紹介してなかったな。すみません。龍美の姉御は鬼人なんすよ。初めての年上女性鬼人ってやつです」

「微妙にややこしい言い方すんじゃないよ礼二。龍美ちゃん、この小僧よろしくね」

 そう言って礼二くんの頭をポンポンはたくのは女性メンバーのリーダー格、厚子さん。びっくりするくらい整った小顔に栗色のポニーテール。

 あたしは「いえいえ」と手を振って、

「こっちがお世話になるばっかりで。すみません、皆さんにまでお世話になっちゃって」

「いーよいーよ。それよか龍美ちゃん、バイクめっちゃ上手なんだって?」

「吉川さんに教えていただいたんで。でも厚子さんもバイク、乗られるんですよね?また今度教えてください」

 厚子さんはスタジャンにスキニージーンズ。ライディングブーツ姿。

「乗ることは乗るけど。てもダメだよ、女も二十歳超えるとさ。バイクもダンスもすぐ腰に来ちゃうんだ」

 周りのメンバーがそうそうと一斉に頷く。みんな二十歳前後に見えるのに。そうなのか。女の旬はそんなにも短いのか。

 そんな感じであたしの課外練習はつつがなく積み重ねられてゆき、結果、私のバイクとダンスの実力は着実に伸びていった。

 バイクの方は月に二三度吉川さんと礼二くんに練習に付き合ってもらう他、師匠の道場に置いてあるBMXを使ってバランス感覚を磨いた。

 エアロビの方は結局習わなかった。バイク練習の帰りに、マウントクリークのみんなにちょっと混ぜてもらってツイスト踊るだけ。でもまぁ一応有酸素運動だし。それに何より音楽に合わせてみんなで踊るのって楽しい。本当にいいリフレッシュになる。

 練習は嘘をつかないっていうけど、本当なんだと実感した。自分の鬼力、体力、運動能力が以前より高まっているのが自分でも分かるのだ。

 湯窓目先生が良い師匠だったからというのもあるが、マウントクリークのバイクとダンス練習も間違いなく効果を上げている。

 これまでは特に何かするでもなく、食べて寝て学校行ってという里の生活パターンだったのが、最近はまず朝起きて気息を整え瞑想する。食事もスナック類を控え、母の協力も得て野菜や海藻を一杯摂るようにしている。学校帰りにリュックを揺らしながらランニングで道場へ行き、中学生や、時には小学生のちびっ子と一緒に練習し(あたしまだ初級だから)、またランニングで家に帰り、学校の宿題を適当にやっつけ、食後は禅を組みながら鬼虫のざわめきに耳を澄ます。

 恐らく鬼門家庭ではごく当たり前の生活を、高校生にして初めて経験しているわけだ。そしてその効果のほどに自分でも驚いているというわけ。


 あ、何かあたし変わってきたなー


 そう思うことが嬉しい。努力って報われるんだ、人って変われるんだという素直な驚きと喜びがある。

 その一方、ミカちゃんはちょっと違う方向に変わっているみたいだ。相変わらず学校ではヘアカラーで誤魔化しているが、髪色がどんどん薄くなり、茶髪どころか金髪に染めているようだ。スカートの丈はまるでチアガールのように短くなり、化粧も派手というよりけばけばしいというレベルになりつつある。

 生活指導の先生から怒られそうなものだが、ミカは最近、学校に週の半分も来なくなってしまっているし、来てもすぐに姿を消してしまう。ミカはそんな生徒になっていた。

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