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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・10

 お師匠さんのバイクに乗れるのか、ダンスは踊れるのかという問いかけに、あたしは思わずドキリとしたが、特にあたしの事情を知っていたり、バイカーズやツイスターズとの絡みがある質問ではないらしい。

「鬼士はバイクに乗れなくちゃね。もちろん馬にも乗れた方がいいんだ。式典とか馬に乗ることたまにあるから。あとエアロビックダンスは鬼道や練気の訓練になるよ」

 なるほど。バイクは乗馬の名残、ダンスは気息を整え鬼力を操る助けとなるらしい。鬼道と相性が良いというわけか。

「ママチャリは持ってるけどバイクは持ってません。ダンスは十年以上やったことありません。子どもの時通ったバレエ教室も性に合わなくてすぐやめちゃいました」

 お師匠さんは鏑矢君らしいねと笑う。

「乗馬はうちでも年に何度か乗馬会をやるから。バイクはー そうだねぇ、練習用のBMXがあるからそれで練習するか。一台持ってると便利なんだけどな、バイク。中古ならそんなに高くないよ。ダンスはいずれ道場でも練習するから。ダンス講師は娘に頼んでるんだけどね」

 あたしが通う山科南鬼道倶楽部は道場生三十人ほどの小さな鬼道場だ。道場主の湯窓明幸史郎(ゆまどめ こうしろう)さんは奥さんと子供二人の四人家族。四人とも鬼人。一応鬼門出身で門跡は残っているらしいが、生まれも育ちも里で鬼門には親戚もいないらしい。三年前に念願だった鬼道場を開き、只今絶賛ローン返済中とのこと。

 バイクとダンスか。あたしは家に帰って机の引き出しを引っかき回した。しばらくして探し物を見つけた。

 名刺だ。あのギター弾きの少年から貰った名刺。名刺というか店の住所と電話番号が書かれたカードだ。

 あたしは電話のダイアルを回してしばらく待つ。二度目のコールで相手が出た。

「はい、77カフェです」

 女性の声。

「あたし鏑矢って言います。礼二くんの友達なんですが」

 受話器の向こうで「礼二」と呼ぶ声が聞こえる。しばらく間があって受話器に息がかかる気配。

「もしもし?礼二です」

 意外とクールな声。あれ?忘れられたかな?と思いながら、

「こんばんわ。あたし前に海沿いの公園で会った鏑矢だけど。覚えてる?」

「姉御っすか?いや本当に連絡もらえるとは思ってなかったですよ」

 無邪気で興奮した声。背後に客のざわめきが聞こえる。

「ごめん、仕事中かな?」

「えぇまぁ。家の手伝いで学校の予習復習もできないんすよ。なんです?デートのお誘いでしたら母ちゃんに行っていいか聞いてみないと」

 元気一杯の中学生声が響く。背後で何人かの笑い声。どうやら馴染みの客たちに会話を聞かせているらしい。

「デートじゃないわよ。あたし鬼道場に通い始めたんだけどさ」

「あ、いいな。俺も行きたいんですけど。月謝、高いんでしょ?」

「親が出してくれてる。まぁ週一月四回の塾代くらいかな」

「へぇー 月二十五円くらい?」

「もちょっと安い。進学系じゃなくて個人の復習塾って感じかな」

「俺も行こうかな。バイトして」

 礼二くん、ここだけ小声になる。親に気を使ってるのだろうか。

「実はその鬼道場のことで相談があって」

「いいすね、相談。一度されてみたかったんですよ」

 あたしは忙しい彼のために単刀直入に用件を話す。礼二くん合点がいった様子で、

「バイクとダンスですか。どっちも俺っちの得意分野ですよ」

「え、免許取れない歳でしょ?」

「免許要らないんです。コースで乗るんですよ。ダートコース。モトクロスバイクに」

 あたしは礼二くんと次の土曜日にまた波止場公園で会う約束をして電話を切った。

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