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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・8

 父の話によると最近バイカーズとツイスターズの衝突がちょこちょこ起こっているんだそう。

 父は鬼人警官として京都警察(正式には確か洛中警備隊だったかな)に勤務しているのだが、先週は兵庫藩警の応援で神戸に行っていたという。


 ん、神戸!?


 あたしの表情に気づいた父が尋ねる。

「龍美、何かあったか?」

 あたしは特に隠すことなく学校の友人からチームへ加わるよう勧誘されていること、神戸までダンスパフォーマンスを観に行ったことを告げた。

「なるほどな。チームの名前は?」

海猫(シーガルズ)

 父はふぅんと言って記憶を探っていたが、

「聞かん名前だが気をつけたほうがいいな。他のたちの悪いチームと繋がっていたりすることが多い。血の気の多い十代の連中は、とにかく暴れる理由を探してる奴が多い。連中には理由なんて必要ないんだな。乱闘だと聞けばそこへ飛び込んで行ってしまう。挙句に怪我をした、させられたで、最後はこれだ」

 父は両の拳を握り手首をくっつけて「お縄」をいただくジェスチャーをして見せる。

「特に最近鬼人が所属してるチームが問題を起こすケースが多いんだ」

 父の説明では、元々はファッションの一形態に過ぎなかったバイカーズとツイスターズだが、最近ではバイカーズは暴走族を、ツイスターズは駅前チーマー達を取り込むことで拡大し、ファッションやライフスタイルをめぐる争いから、公園や駅前といった地域の支配権をかけた争いにエスカレートしつつあるという。

 父は筑前煮の椎茸を口に放り込みビールで胃に流し込む。

「他のグループよりも頭一つ抜きんでるために双方が目をつけたのが鬼人だ」

 里の鬼人をグループに取り込めば、当然戦闘力は上がる。昔で言う「客分」として鬼人を迎えようとするチームが増え、グルーブ同士の競争は抗争に変わりつつあるという。

「そんな感じだったんだ」

 ご飯を口に運びながら、軽い気持ちで海猫に入らなくて良かったとホッとする。

「そんな用心棒みたいなことをする鬼人がいるの?怖いわねえ」

 母がのんびりした口調で言う。母は父と結婚して看護師の仕事を辞め、今は実家の調剤薬局の手伝いをしている。看護師も調剤師も鬼人に多い職業の一つだ。

 我が家は里にルーツを持つ鬼人家庭だ。元々院に暮らしていた鬼人たちも、一部の幹部を除いて院内に住むことができなくなり、今では院外、つまり里に暮らしている。

 しなしながら鬼門という世界は、院にルーツを持つか、里にルーツを持つかで区別されている。院にルーツを持つ裕福な一族を名鬼門と呼び、里にルーツを持つ一族はたとえ大金持ちであっても「お里の出」扱いだ。

「鬼人といっても色々だからな」

 父は二本目のビールを開け、自分でコップに注ぐ。鬼人向け雑誌などの記事によると、こうした晩酌という行為もそもそも鬼門にはなかったらしい。鬼人たるもの酒に酔ってはいけない。鬼虫を酔わせてはいけないということらしい。

「龍美、鬼人警官の娘がツイスターズのメンバーとして問題を起こしたりすると俺も格好がつかん。鬼人警官の給料はお世辞にも高給とは言えんが、お前らを大学に行かせてやるにはこの職が必要でな」

 父の言うことは分かる。京都警察鬼警一課係長 鏑矢仁也(かぶらや じんや)、薄給なれど誇りは高い。家族が逮捕されたりすれば、恐らく父は職を辞すだろう。

「ところで龍美」

 父は少しアルコールの香りがする息を吐いた。

「もう高校生だ。なかなか十分な事をしてやれなくてすまんが、鬼道場に通ったらどうかな。鬼門で生きるにせよ、里で生きるにせよ、うちの家族が鬼人であることに変わりはない。鬼道は学んでおくに越したことはない」

 その通りかなと思ったので素直に、

「うん。そうする」

と答えて、豚バラソテーとご飯をガッツリと頬張った。

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