表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

まとめて、研修生!

時代遅れ人間(2022/6/8)

作者: きりぞら



「えっそうだったんだ」



 ふと、声をあげた人間。隣でのんびりとしていた少年は人間の方へ顔だけ向けて、訊ねる。



「どうしたんだ?」


「図書カードってあるでしょ」


「本屋さんで本が買えるやつ?」


「そう、それ。

 今、穴があかなくなってるんだな」



「……はぁ?」



 少年の釈然としない声。それを自らの発見への驚きととったのか、人間は特に意識することもなく。一枚の紙……図書カードを掲げ、表裏にひっくり返しながらまじまじと見つめていた。



「ほら。前は磁気カードだったんだけど、ここの……上に数字も書いてたりして、穴の位置である程度の残高が分かったんだよな」


「うん」


「『あれーこれいくら残ってたっけ』、『お気に入りの柄だけど穴が空くのも仕方ないよな』、『二つ目空いたけどバランス悪くてちょっとへこむなぁ』

 ……みたいなのが全部無くなったんだ!」


「うん」



 興奮気味に話す人間だが、少年は同調も呆れ果てることもせずにただ頷くだけだった。



「しかも、直接行かなくても使えるようになったんだってね」


「ああ」


「誕生日とかに貰って嬉しくてさ、書店に行って。普段触れないジャンルの本とか、どれが良いかなーって考えてるひととき……

 あれも全部無くなっちゃうのかな!」


「いや、直接行けなくなった訳じゃないだろ。使い方は変えなくてもいいし」


「た……確かに、選択肢は増えれば増えるほどいいってだけか!」



 一通り話してようやく、人間も少年の冷めた態度に気付いたらしい。



「ねぇ、もっと驚いてくれてもいいと思ったんだけど」


「驚きはしないかな」


「ええ、どうして」


「俺、そもそも穴の空くやつを知らない」



今度は人間が釈然としない声をあげる番だった。



「……はぁ?」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ