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つくもフォン

作者: みぶ真也

 長年使っていた携帯電話が、とうとうダメになった。

 一晩中電源をつないでも充電できないのだ。

 携帯ショップに行くと、機種変更を薦められた。

 何しろ、8年3ヶ月も使っていたのだ。

 薦められた機種に変えることにした。

 新しい携帯電話は、今までのものとはぜんぜん違う。

 古い携帯を処分するかどうか訊かれたが、愛着もあるので引き取ることにした。

 この電話では、通話と、妖怪ゲームぐらいしかすることがなかったが、それでもいつも手元に置いていたからだ。

 その夜、新しい携帯電話の機能を使いこなそうと説明書を見ながら苦労していると、着信音が鳴り響いた。

 新しい方の電話ではない。

 もう回線がつながらないはずの、古い電話が鳴っているのだ。

 知らない番号からだ。

 恐る恐る出てみると、

「前に妖怪が居るよ」

 と一言聞こえて電話が切れた。

 同時に

 目の前の空間に、ゲームそのままに、目が三つある妖怪が現れた。

 電話を持っていない方の手には、いつの間にか妖怪ボールが握られている。

 狙いを定めてボールを投げると、三つ目妖怪がゲットできた。

 また、電話が鳴る。

 出てみると

「後に妖怪がいるよ」

 と言って切れた。

 振り向くと、巨大な龍のような怪物が赤い舌を出している。

 やはり、知らない間に右手に握られていた剣で龍と戦う。

 ゲームで鍛えていたので、剣さばきはお手の物だ。

 たちまち、龍の息の根を止めた。

 龍は一陣の煙になって消えてしまう。

 着信履歴に番号が残っているので、こちらからかけてみる。

「もしもし」

「あと一ヶ月使ってくれたら良かったのに」

 さっきの声が、そう言った。


「すると、あなたは8年と3ヶ月、この電話を使ってから機種を変更されたのですね」

 住職は、ぼくが差し出す古い携帯電話を見ながら言った。

「はい、機種変更してから古い電話に何度も着信があり、この電話で遊んでいたゲームそっくりの出来事が起きるのです」

「なるほど、つくも神じゃな」

「それは何ですか?」

「どんな道具でも100年使うと霊が宿り天に召されるという。だが、99年で使うのを辞めると残り一年を使って貰えなかった無念でつくも神という妖怪になり持ち主にたたりをなすのじゃ。

 あなたはこの携帯電話を99年使ったわけではないが、8年3ヶ月、つまり99ヶ月使って機種変更したので電話につくも神が宿ったと思われる。

 今の世の中のスピードじゃと、99ヶ月でもそうなるのかも知れんな」

「そうなんですか。住職さんに、これを供養していただいたら大丈夫なんでしょうか?」

「まかせておきなさい」

 そういって、住職は携帯電話を前にありがたいお経を唱え始めた。

 15分もすると、電話から白い煙が天に向かって立ち上っていく。

「これで大丈夫、みぶさんの携帯電話は今昇天しました」

「ありがとうございます」

「もうちょっと木魚の音が良ければ、もっと早く昇天できたのじゃが、最近、使いすぎたのか、この木魚の音がくすんできてな。

 新しいのに変えて、もう一度、お経を唱えて締めくくりましょう」

 そういって住職が新しい木魚でお経を始めると、古い木魚から黒い煙が昇りはじめ、巨大な化け物が目の前に現れた。

「じゅ、住職、これは何ですか?」

「ああ、しまった。この古いほうの木魚も8年3ヶ月前から使い始めたやつじゃった!」


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