寮生活の始まり
寮の中に入ると先生は私に部屋の鍵を手渡してくれた。
「相部屋になるけど大丈夫よね?」
「もちろんです」
先生は私達を見て言ったが、流石にそこまでの贅沢は求めない。私達はしっかり頷いた。
それから、先生に寮の簡単な説明を受け、また来るね、という言葉を後に先生は校舎に戻って行った。
部屋のある場所に行き、鍵を開けて部屋に入る。
部屋の中はベットが2つと、勉強机が2つ、クローゼット2つ、それほど広い空間ではないけれど、生活するには充分なスペースだった。
お風呂とトイレは共同らしい。
私達は部屋に入ると同じベットに腰を下ろす。
「野宿回避だね」
明菜が冗談っぽく笑って言うので、私は苦笑いをしてみせる。冗談ではなく、本当にやりかねない状況だったために素直に笑えなかった。
だけど、ようやく体と心を落ち着かせる場所が出来て、私は心底安心した。
安心したら、なんだか目尻が熱くなってきた。
頬を温かいものが伝う。
明菜がギョッとした顔になって、私を優しく抱きしめた。
私は無意識に涙を流してしまったみたい。
緊張の糸が切れて涙が止まらない……。
「ごめんね……私……」
「大丈夫だから……私がついてる」
私の言葉に、明菜は私の頭を撫でて言った。
不安だったのは明菜も一緒なはずなのに、私をいつも励ましてくれる。
「私はね、たとえ野宿になったとしても、まこさえ居ればどこだって生きていけるよ」
「大袈裟だよ」
「大袈裟じゃないよ……」
明菜は小さい声で私に伝えた。私は笑って言葉を返したけど、明菜は真顔だった。
なんだかちょっぴり恥ずかしくなって俯いてしまった。
しばらくすると、部屋をノックする音が聞こえてきた。
「はい!」
私は涙を拭ってノックに対しての返事を返す。
その返事を待っていたかのように、部屋の扉が開いた。
「2人にこれを持ってきたの」
先生はにこやかに2つの箱を私達にそれぞれ手渡してきた。箱は大きかったけどそんなに重くはない。
「開けてもいいですか?」
私の言葉に、先生は笑ったまま頷いたため、私と明菜は目を見合わせた後、箱を開けてみた。
開けると、中には服のようなものが入っている。箱から出してみると、それは見たことのあるものだった。
「これって、学園の制服!」
フリフリのスカートが可愛い学園の女子が着ている制服だった。私は顔を綻ばせて制服を食い入るように見る。