初めてのオールナイト
「なに!?まだオールしたことないのか?」
「ウケる!まだまだニーニョねぇ~」
「寝る子は育つってか?」
「ギャハハハ▪▪▪」
「フフフッ▪▪▪」
僕は、冬休みが始まる前の学校で、あいつらから言われた言葉を思い出しながら、震える手で冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出した。
今に見てろよ。今日は何がなんでもオールしてやる。中学にもなってオールを経験していないだなんて言われては、僕もやらなきゃ気が済まない。
しかも、僕が片想い中のメグミさんにまで笑われてしまったんだ。これはやらなきゃ男が廃るってもんだよ!でも、みんなガサツに俺の事笑い飛ばしてたけど、メグミさんだけはお淑やかに笑ってたな。ちょっと嬉しかったかも▪▪▪。
いやいや!喜んでいる場合じゃない!メグミさんに認めてもらうためにも、今日は何がなんでもオールをして、オールの勲章である隈をこしらえて、あいつらにその写真を送りつけてやるんだ!
ブハぁ!お婆ちゃんが階段を上がってきたぞ!ヤバい!寝たふり寝たふり▪▪▪。
ランランラン、この時間はお色気番組があるって聞いてたけど、ホントだね。うはぁ~、そんなとこまでぇ~▪▪▪。
ジリジリ、うぅ~、クーラーのリモコンはどこだ?いやいや、やっぱり夜中でも暑いんだなぁ。噂には聞いてたんだけど。普段とは大違いだ▪▪▪。
ルンルン♪いやあ、感激だなぁ、こっそり隠し持ってたカップラーメン。夜中に食べるとこんなにも美味しかったんだなぁ、ああ幸せ▪▪▪。
お!いよいよだ!時計の針が2本とも上を向く。お昼以外で見るのは生まれて初めてだ。3、2、1▪▪▪。おめでとう!僕はとうとう未知なる世界に足を踏み入れたんだ。いやぁ、すごいなぁ。僕は凄い事をやってのけたんだなぁ▪▪▪。誰かこの偉業を表彰してくれないかな。外に新聞記者やカメラマンが待ってやしないかな▪▪▪。
ええい!もう我慢できないぞ!まだ目に隈は出来てないけど、この僕が日付変更の峠を越えただけでもまず偉業じゃないか。
とりあえず、リカルドの奴に電話してやろう。あいつビックリするぞ。俺にこんな時間に起こされるんだから。これでメグミさんに噂が行けば、きっとメグミさんも僕を見直してくれる!!
「やあ!リカルド!元気かい?はは、こんな時間にどうしたのかって思ったろう?眠いだろう?そうだろう?いやいやごめんごめん!でも僕はこんな時間でもめちゃくちゃ元気さ!」
「え?何言ってんだよ。俺だって元気さ、今からみんなで昼飯にフェイジョアーダを食いに行こうとしてたとこ。あ、MEGUMIも一緒だぞ?」
「え?ひ、昼飯?メ、メグミさんも!?」
「それより、久々の日本はどうだ?そっちは夏なんだろう?日本の夏はブラジルより暑いんだってなぁ。いつか行ってみたいよ。あ、その時はMEGUMIに案内してもらおうかな。お前が悔しがるように、へへ▪▪▪」
僕はどっと疲れて朝までぐっすり眠りましたとさ▪▪▪。