家族会議
部屋のドアが控えめにノックされる。
「ラルフ、ご飯の時間よ」
もうそんな時間か。窓の外を見れば日が落ちてすっかり暗くなっている。時間も忘れて集中していたようだ。
「はーい。すぐに行きます」
様々な考えを書き込んだノートを片付けてリビングに向かう。夕食は豪華な料理が並んでいた。見ているだけでテンションが上がってくる。
「わあ! 美味しそうだね!」
「ありがとう。さあ、席について」
ラルフは席につく。いい香りがして自然とよだれが出てくる。
ルドルフも少し遅れてやってくる。
「これは豪華だな」
「冷めないうちに召し上がれ」
「「「いただきます」」」
家族3人で夕食を楽しんだ。食後には大きなケーキが出てきてこれもまた美味しかった。
「父さん、母さん。話したいことがあるんだ」
夕食後、ラルフは自室からノートを持ってきてこう切り出した。ラルフの真剣な顔をみて2人もラルフの正面に座り真っ直ぐと見返す。
「言ってごらん」
ラルフは順番に話した。ステータスのこと、スキルのこと、天職がないわけでは無いこと、そしてこれからどうしたいのか。2人は真剣に聞いてくれた。
「うん、話はわかった」
「信じてくれるの? 自分で言っていてなんだけど突拍子もない話だと思うんだけど」
「信じるとも。ラルフがこんな大事なことでこんな嘘をつくとは考えられないからな」
父は優しい笑顔で言った。母もその隣でうなづいている。
まるで疑いもせずに信じてくれる両親に胸が温かくなった。
「ありがとう」
「これからの事だが本当に学園には行かなくていいんだな?」
「うん。僕のこの力だと何か1つを極めるより色んなことができる方がいいと思うんだ」
学園は大まかなカテゴリーごとに分かれている。そのためどれか1つのカテゴリーを極めるならいいが、様々なスキルを学ぶには適していない。
「そうか。真剣に考えて決めたならそれでいい。ただまだ時間はあるからもし行きたくなったらちゃんと言ってくれ」
「わかった」
「あとは一度旅に出たいと言ったな」
「うん。3年後くらいに行こうかと考えているんだ」
「5年後にしなさい。ステータスの補正がないなら鍛えるのに3年では短い」
「でも……」
「それに、町で得られるものはお前が思っているよりずっと多いと思うぞ」
確かに、町で学べることを軽く見ていたかもしれない。
それに父の言う通り、旅ではどんな危険があるか分からない。できることは極力多い方がいいだろう。
「……うん。旅に出るのは5年後にするよ」
「よろしい。母さんは何かあるかい?」
「そうね……魔法の勉強は私が見てあげるわ。」
「母さんが?」
「ええ。冒険者の頃の知識と経験を全て伝授してあげるわ」
「よろしくお願いします」
「母さんは厳しいぞ。大丈夫か?」
「うん。どんなに辛くても絶対に冒険者になるって決めたから」
「その覚悟があれば大丈夫だな。そうだ、近接系の鍛錬なら隣町の道場に行くといい。父さんの昔の仲間がやっているんだ。手紙も書いてやろう」
「ありがとう父さん!」
話はこれで終わりみたいだ。
もういい時間なのでそろそろ寝ようと思いお休みの挨拶をして自室にもどる。
布団に入るとすぐに眠気がきた。思っている以上に疲れていたみたいだ。ラルフはこれからのことに思いを馳せながら静かに眠りについた。