ステータスとスキル
昼食後少し休むと言って自室に戻った。
「ふぅ」
父と母のおかげで少し気が楽になった。しかし、問題は何も解決していない。冒険者を目指すラルフにとってどんな天職かは重要な問題だ。
「まさか、天職がないなんて……」
ベッドに寝転がりぼんやりと考える。天職による恩恵はかなり大きい。ステータスの補正、スキルの習得などは冒険者になるには必須だ。
【ステータス】
空中にステータスが表示される。1番上に自分の名前、その下に書かれているはずの天職はやはり空欄だった。
「やっぱりないか」
わかっていたことだが改めて確認すると気分が沈む。ステータスを消して机に向かう。本棚から1冊引き出し開いた。『天職図鑑』今まで確認された天職が全て書かれている本だ。今まで何度も読んだためところどころが擦り切れている。ペラペラと捲る。
「……ないな」
あるわけが無い。何度も何度も読んだ本だ。内容なんてほとんど覚えている。意味の無い確認だ。
【ステータス】
もう一度ステータスを開く。そこにある結果は変わらない。
「はぁ……」
思わずため息が出る。ステータスの補正もスキルもなしで冒険者なんて無謀だ。天職の下にあるステータスの項目に触れてステータス画面を出す。
「あれ?」
筋力 78(+30)
体力 91(+40)
知力 66(+20)
器用 45(+10)
敏捷 105(+40)
魔力 50
運 6(+1)
ステータスに補正がかかっている?いや、これは…
ステータスの下にあるスキルの項目に触れてスキル画面を開く。
天職がないならスキル欄には何も書かれていないはず。
「なんだこれ」
スキル欄には20個以上のスキルが書かれている。
スキルがあることも驚きだがもっと驚きなのはその数とカテゴリーだ。
本来天職を貰ったばかりのスキルはせいぜい5個前後だという。20個は多すぎである。
カテゴリーも異常である。【剣術】【体術】などの近接系、【火属性魔法】【風属性魔法】などの魔法系、【料理】【算術】などの職人系、【筋力+】【体力+】などのステータスアップ系全てが満遍なくある。
最初のスキルは天職を貰う前の行動が経験値として加算されて習得する。その時にも天職ごとのスキル経験値への補正は適用されるため、習得できるスキルは得意なカテゴリーのものになる。ラルフのように全てのカテゴリーを満遍なくというのはありえないのである。
戸惑いながらもスキルに目を通していくラルフ。すると1つのスキルで目が止まる。スキル欄の一番端にあったそれはスキル図鑑でも見た事のないものだった。ラルフはそのスキルに触れて詳細を確認する。
【スキルコレクター】
固有スキル。習得までに必要なスキル経験値が半分になる。
スキルの数が多いのはこのスキルのせいらしい。しかし、カテゴリーの説明はつかない。そもそも天職がないのにスキルがあるのも謎だ。そこまで考えてラルフは1つの可能性に思い当たる。
「もしかして」
ラルフはステータスの最初の画面を出し天職の欄に触れた。
天職がないならなんの反応もしないはずだが、ラルフの前に天職の詳細画面が表示された。
天職『 』
何者にもなれず、何者にもなれる
全ステータスへの補正 1.0
全スキル経験値への補正 1.0
あった。ないと思っていた天職が。詳細を読み、カテゴリー数の多さの謎も解けた。全スキル経験値への補正1.0ということは、得意も不得意もなく全てのスキルに平等に経験値が入るということ。全カテゴリーのスキルが満遍なくあるのも頷ける。
「ははは」
気づけばラルフは笑っていた。これなら冒険者になるという夢を諦めなくていい。
しかし、問題がない訳では無い。【スキルコレクター】の効果でスキルの習得まではスキルの経験値が半分になるとしても、その後レベルをあげるのに必要な経験値を溜めるのには効果がない。レベル上げは他の人より大変だ。
ステータスの補正がないのも厳しい。スキルのステータスアップ系をほぼMAXにしなければ冒険者としてやっていけるステータスに達しないだろう。
冒険者になるにはかなりの努力が必要となる。
それがどうした。必要ならばなんでもやってやる。
どんなに辛くても夢を諦めるよりはマシだ。
ラルフは早速、ノートを引っ張り出してこれからしなければならないことを書き出し始めた。
タイトルを少し変えました。
思いつきで書いてるのでたびたび修正すると思います。