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彼岸

作者: 瀬川なつこ
掲載日:2021/01/26

夢のなかを彷徨っているような。

左利きなので、鏡文字を書きます。

天井から垢舐めが逆さに蔓下っています。

まっこと、此の世は逆さが面白い。

壁にできた人面相が、

隠し事はできないぞと

叱ってきました。

りんご飴。あれに血がぎっしり詰まっていて、

それを舐めている狐面を頭につけて嗤っている少女の夢を見ました。

いささか、病んでいるようです。

空は曇天、夕立。

煙る雨の中、あめふらしが、移動していくのが見えます。

いかないで。私も連れてって、そっちの、彼岸の世界へ、地獄の世界へ。


海辺の怪。海坊主。柄杓のお化け。舟虫がわっと沸いて、体中を這いまわる幻覚。

座頭虫が耳から入って、蠢くのだ。そんな、夢を見た。

誰もゐない教室、下駄箱の靴、片方だけの運動靴、揺れる教室のランプ、

嗚呼、どうして気が付かなかったんだろう。

僕はもう、この世の者ではなかったのだ。


遠くの電柱には雑木が頼るようにたれかかり、朝顔の蔓が天辺まで絡みつく。

“教室の片隅、忘れていた手紙、着いては消える裸電球。片方だけの靴、道路に転がっている帽子“

また、思い出してしまった、それらは一体何故、頭の片隅にあるのだろう?


泥沼の青々とした蓮池の隣の、舗装されていない道路を茫と歩いていると、

電信柱がいくつも通りに生えている。

夕暮れ時の赤い夕陽が血の色を思い出して、怖気がする。

白い白熱灯に群がる羽虫たちが、

ブンブンと自分の体に纏わりついてくる姿を想像して、鳥肌が立つ。


夏の夕暮れ。

宿場町の夏にも、忍び寄る足音。

鴉が集まって、黒猫が横切って、

狐面の少女が呪いのお札をあちこちに貼って、

まさに奇々怪々。

夏祭りです。

人々が楽しそうに雪洞提灯を眺めている隙に、

闇の者が繁栄する。祭りと闇は、すぐ隣にあるのだ。

あめふらしが影法師に擬態して、魂を狙っているよ。

海辺にぶら下がった白い布がお化けに見えた。

宿場町のポストの影に小鬼が見えた。

すべて目の錯覚でしょうか?

いいえ。

実は、いるんです、でるんです、夏でも冬でも。

恐ろしいモノはいつもそばに。

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