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痴漢、ダメ、絶対

 「先輩、 当てがあるって言ってましたけど……」


 チュー、プハァ!

 「美味い! ああ、私は電車で通学しているんだが、昨日痴漢をされている子を見つけたんだよ」

 先輩は美味そうにピンクの液体を吸い上げながらサラリととんでもないことを言う。


 「え?!」

 

 「まあ落ち着け、帰宅ラッシュと言っても都会のような身動きが取れないほどではないんだが、それでも結構込み合うからな、隙を窺えば臀部を撫でまわすことぐらいはできるだろうな」


 「いや、言い方……」

 

 それにしても、やっぱり痴漢をする奴本当に居るんだな、何故そんなリスクを冒してまで触りたがるのだろうか、やっぱり僕には理解が出来ない。人の心が無いとしか言いようがない、一回の痴漢で一生のトラウマになる人もいるというのにな、仕事をしているんだからそういう店に行けばいいのにと僕はそういうニュースを見るたび、常々そう思う。

 

 「それで、私が助けてやろうと人を掻き分け、声を掛けようとした瞬間不思議なことが起こったんだ」


 「何が起こったんです?」

 度々思うがこの人、勿体ぶる様な喋り方するよなあ


 「その触っていたオッサンがいきなり鞄を落としたと思ったら気を付けのようなポーズになってそのまま動かなくなったんだよ、ピクリともな」

 先輩は、脅かすようにストローを突き付けてくる。


 「能力ですかね?」


 「そうだろうな」


 「でも、図書室と何の関係が?」


 「その女子生徒、なんか見たことあるなぁと思って今日の授業中ずっと考えていたんだ」


 「授業はきちんと受けましょう」


 「四時限目やっと思い出したんだ、あ、図書委員長じゃんて」

 

 「そんなに考えなかったら分からなかったですか?」

 僕は呆れて小さく溜め息を吐く。


 僕たちは廊下を右に曲がる。それに伴って僕たちの影が、ヒョロリと細長い影と小さな影が、僕たちの歩く先を歩く。

 

 「ていうか、よく図書委員長の顔を知ってましたね」

 

 「図書室はよく利用するからな」

 

 「へえ、先輩本読むんですね、意外です」


 「……鈴木、お前ちょくちょく私を馬鹿にするよな」


 「そんなつもりじゃないんですけど」


 「お前が言ったらそう言うニュアンスを含むんだよ」

 先輩はまた、ぶうたれて歩く速さを速める。

 





読んでいただきありがとうございます。

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