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 昼休み、僕と宮下先輩で人魂を目撃したという人に会いに行ってみた。

 ちなみに橋本先輩は図書委員の仕事で抜けている。


 「久しぶりですね、こうやって二人で行動するのは」


 「ああ、そうだな。橋本が加わってからはずっと三人だったからな」

 

 「……」

 

 「……」

 

 沈黙が訪れる。二人でいる時ってどんな会話してたっけ? 別に気まずいとは思わないけれど。

 まあ、適当に話でもふるか。


 「目撃した人って誰だか分ってるんですか?」


 外の景色を見ながら歩いていた先輩はゆっくりとこちらを振り向いた。


 「ん? ああ、分かってるぞ。確か二年の松原って男子だ。生徒会の書記をしているな」


 「え、二年ですか? なんか、上級生の教室に行くのって緊張します。一年離れているだけで、なんであんな威圧感を持ってるんですかね」


 「あ、それわかる。特に小学生の頃とか六年生のこと凄く大人に見えなかったか?」


 「確かに、五、六年離れているのもあるんでしょうけれどね。成長期と合わさって凄く大きく感じましたよ。見上げてましたもんね」


 「まあ、松原は今、生徒会室にいるらしいから二年のフロアには上がらないけどな」

 □□□□


 宮下先輩と他愛もない会話をしている内に松原先輩の居る生徒会室に着いた。

 三度ノックして扉を開ける。


 「失礼します。一年の鈴木と」


 「二年の宮下です」


 「松原先輩居ますか?」

 

 机に座って何かの書類に何かを書き込んでいた男二人がこちらを見る。

 奥に座っていた男は上げた顔を直ぐに戻した。この男は松原ではないのだろう。

 反対に手前に座っていた男は立ち上がり、こちら近づいてくる。


 「僕が松原ですが、何か御用ですか?」

 

 背の低い、面長の男。失礼だが面白い顔をしてるなと思った。声も聞き取りにくいほど低い。

 宮下先輩が口を開く。

 

 「仕事中だったか? すまないな。少し話を聞きたくて」


 「ん? 人魂の事?」

 

 「ああ、そうだ」


 松原先輩はいいぞ、と言い、ここじゃ邪魔だからと廊下の端に僕たちを案内した。


 「じゃあ、お願いします」

 

 僕の言葉に松原先輩は頷き、話し始めた。

 

 「二週間前の事だね、あれは。午後六時頃、生徒会の仕事が終わって校舎を出たんだ。そして、何となく振り返ったら三階の一番右端の教室が光ってたんだ。ああ、少し訂正。まだ部活をしているところもあったから六つぐらいの教室は照明が光ってたんだが、その教室だけは光り方が違ったんだ」

 

 「ほう?」

 宮下先輩が腕を組んで相槌を打つ。


 確かに普通棟の三階の一番端と言ったら僕たちの教室だ。


 「なんかこう、照明の白い光と違ってオレンジ色の光だったんだよ。しかもゆらゆらと揺れているんだよ、光が。今思えば別に皆に言いふらす程の事じゃないが、その時丁度ホラー小説を読んでいてね。その時は人魂だって思っちゃったんだ」

 ここまでが僕の見たことだよ、と話を終わらした。


 宮下先輩が腕を組んだまま、言う。僕は黙って話を聞くことにした。

 「ありがとう。実はその教室私達の部室でね」


 「え、じゃああの光は君たちだったのかい?」


 「いや、私達じゃない。私達は五時半には部活を終わらしているんだ。それにあの教室は空き教室だし、使っている人が居ないはずだ。不気味だろ? だから私達で突き止めようと話を聞きに来たんだ」


 そこまで話して予鈴が鳴ったので僕たちは教室に帰った。


 去り際、松原先輩は言った。

 「ここ数日、僕は六時頃帰ってるんだが、毎日その光を見るよ。確かめるなら今日も出るんじゃないかな」

 




 うーん、分からん。ミステリー物なら僕が閃いたりするんだろうけどな。

 話を聞いて分かったことと言えば、松原先輩の声が聞き取りづらいということぐらいだし。

 ま、先輩の判断に任せようか。


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