完結
「そういえば、この同好会の名前って何て言うんですか?」
「あ、私も気になります」
「え、ん~ん、一応、ボランティア同好会って名前だが」
宮下先輩は僕の本を空中で漂わせて遊びながら答える。それよりも早く返せよ。背表紙が曲がってしまっている。
「ボランティア同好会ですか、今まで一回もボランティアに参加してませんよね、てか、本を返してください」
「え、そうなんですか?」
「ああ、してないな」
言いながら本を僕の目の前に投げ出す。
あーあ、癖がついてしまっている。
「宮下先輩、でも活動報告とかどうしてるんですか? 嘘を書くわけにもいきませんし」
折れてしまった背表紙を撫でながら言う。
「安心しろ、同好会には活動報告は無い、何なら顧問もいない」
「適当ですね」
「適当なんですね」
僕と橋本先輩の意見が一致した。
だからか、この学校の同好会が異様に豊富なのは、そういえば何かの部活動が強いって聞いたことなかったような。部活動の類には力を入れてないのかもしれない。典型的な進学校である。
「じゃあ、活動はしないんですか?」
「まあな、こうやって能力者の集まれる場所を作るのが目的ではあるしな、言うなら、暇をつぶすのが活動だ」
「じゃあ、この同好会を部活動にするって言うのはどうなったんですか? それが目的って言ってませんでした? 宮下ちゃん」
「それも考えたんだが、やっぱりいいかなって、部活動になれば嫌でも活動しなきゃならないしなあ。部費が出ないから目指していたんだが」
曲がってしまった本の背表紙はある程度直すことに成功した。
本を机の隅に置き、僕は口を開く。
「そうですか。何か部費で欲しい物でもあったんですか?」
宮下先輩は腕を組む。
「ポットとマグカップをこの部室に置きたかったんだ、何時でも珈琲やお茶が飲めるからな」
「へえ、あ、家に使ってないポットがありますよ、持ってきましょうか? カップは無いですけれど」
「本当か!」
宮下先輩が笑顔になる。
「私の家カップならありますよ、じゃあ、私も持ってきますね」
「おお! 夢がかなった!」
「大袈裟な」
僕たちは互いの顔を見合わせ、笑いあった。
五時半を知らせる、チャイムが鳴る。
「じゃあ、帰ろうか」
宮下先輩は立ち上がりながら言う。
「そうですね」
僕も習って立ち上がる。
「ああ、もうそんな時間ですか」
最後に橋本先輩も立ち上がった。
三人は部室を後にした。
窓からは紅の泳ぐ光が差し込み、三つの机を照らしていた。
完
これにて、「能力者の為の同好会です」は完結になります。
ここまで、読んでいただき、ありがとうございました。




