喧嘩って怖いよね
埃っぽく、狭い路地を通り、何度目かの曲がり角を曲がる。
そこには、開けた場所があった。朽ちかけた角材や、植物の巻き付いた土管などが散乱している。
そんな空き地の中央に学生服の男が倒れている。その周りを四人の男が囲んでいた。
倒れている男の服や髪は泥に汚れ、囲んでいる男たちはヘラヘラと笑っている。色素を抜いた髪の毛を揺らしながら。
色素を抜いた髪の一人がしゃがみ込み、左手で倒れている男の袖をまくる。右手には小振りな注射器が握られている。
そして、注射器を持ち上げ、腕に針が刺さろうかというその刹那――。
「駄目だよ」
針が、針の先端がねじ曲がり、先端を中心にくるくると巻き上がった。
針を捻じ曲げた張本人は、注射器を指差し、空き地の入り口に立っている。背後にはひょろりとした男と、目元を前髪で隠した女が一人ずつ立っている。
男たちは一様に目を見開き、口を開け、ボブカットの小柄な女を見ていた。
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宮下先輩は伸ばした腕を戻し、それを組みながら言う。
「それは駄目だよ。人のやっていい行為じゃない。君たちも使用するのは控えた方がいいよ、戻れなくなるから」
注射器を落とし、男は立ち上がる。そして、口を醜く大きく開き、怒鳴る。
「なんだよ! てめーらァ! ぶち殺すぞォ!」
それに対して、僕が言う。
「ん~、答えたくないです。だって、後から、恨みを晴らしに来るでしょ? あなた達ってねちねちしてるから」
僕のセリフを聞いた途端、四人は一斉に額に青筋を浮かべ、眉間に皺を寄せる。
「なんだァてめぇ! 喧嘩打ってんのか?」
「ぜってぇ殺す!」
「調子乗んなよ! こっち来いや!」
「こっち来いやぁ! ぶち殺してやる!」
「五月蠅いなあ、君たちは叫ばないと死ぬのかい?」
宮下先輩が四人を煽っている時に僕、僕は隣の橋本先輩を見る。
目元は相変わらず隠れているし、今はマスクを着けているので表情は分からないが、歯を食いしばり、必死に怒りを抑え込んでいるのが分かった。倒れている弟の方に顔を向けたまま小刻みに震えているのだ。
宮下先輩がこちらを振り向く。ウインクをして親指を立てる。
「じゃあ、頼んだよ鈴木」
言うや否や後ろに下がる宮下先輩と、反対に前に出る僕。
はあ……
小さく溜息を漏らす。
「なんだぁ お前が俺らの相手すんのか? ハハハァ! お前ら、殺すぞ」
「ああ! 顔の形状変えてやる!」
「フハハハハハァ! あー腹痛てえ」
「帰りこいつの金で酒買おうぜぇ」
本当に五月蠅いなあ。
「いいから、早く帰りたいから、来て下さいよ」
今すぐにでも飛び掛かってきそうな四人に中指を立ててみる。
……効果は、抜群だった。
瞬間で額の青筋が濃く、太くなり、目は吊り上がる。
「「「「て、テメエぇ……ッ!」」」」
おお、凄い、息ぴったりだ。
「がんばれー! 私達も出来るだけ補助するからー!」
宮下先輩が僕に激励を送ってくる。
それと同時、注射器を持っていた男を先頭に僕に向かって四人は走ってくる。




