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[Mission-006]

前回までのMission!


 味方機が次々と未確認機に倒され、ついに昴流一人が残される事となった。

 この圧倒的不利な状況に対して、昴流はむしろ奮い立っていた。

 強敵・逆境・絶体絶命、上等と、剣を手に取り敵へと向かう。その結末や如何に!

[Mission-006]



 1メートル四方の箱の中、俺は世界と孤立する。何処までも集中する自己の中。操縦桿とペダルで紡ぐ鼓動。流れる曲が鼓動(リズム)を刻む。

「――OK, let's run the sky♪」

 無意識に曲に適当な歌詞を付けて歌い始める。良い調子だ。

 機体を操縦するという行為が、身体を動かす事に近くなる。呼吸や歩行と同じ物。日常に近い感覚だからこそ、歌を口ずさむ余裕すら出てくるのだ。

 むしろ態々操縦桿を握る事すら煩わしい。機体を操縦桿で制御しようというのは間違っている。いくら操縦しようとしても意味は無い。戦う事には理由が無い。歌う事に場所は選ばない。ただ本能で行うだけだ。

「――That sky which opens forever♪」

 敵が加速に入った。俺も立ち向かう様にブースターを吹かす。どれだけ敵が速かろうと、正面特攻ならば意味は無い。相手の速度に俺の機体速度が相乗されるだけだ。勝負は一瞬。

「――Before this wing is broken♪」

 敵機が迫る最中、俺は機体の片側のスラスターを吹かし、機体に回転のモーメントを加える。加速と遠心力を乗せた高周波ブレードが、迫る敵に吸い込まれるように振るわれる。

 瞬間、モニターが白く焼ける様な激突。甲高い音を立ててブレードが、装甲を火花を散らしながら切り裂く感覚がコクピット内を揺らす。

 刃は敵機の椀部装甲を浅く切りつけた。

 思ったよりも敵との距離が縮まっていない!?

 まさか敵は急減速をかけたのか?

 だとしたらこの攻撃を読んでいたというのか。

 刹那、敵が差し込む刃を、敵と同じく腕で防いだ。

 この交戦では決着がつかなかった。ならば互いに離れて仕切り直しかと思った矢先、腕で受け止めた敵の手に刃が握られていない事に気付いた。

 手刀!?

 高周波ダガーは何処に行った?

 嫌な予感が背筋を射抜く。

 敵の刃は何処に? 答えは目の前にあった。交戦の直前に敵が虚空に手放したと思しき高周波ダガーが、俺の機体の頭部付近を漂っているのが一瞬目に入った。

 直後、俺に手刀を受け止められた反動を利用して、敵の機体は曲芸の如く縦に機体を回転させムーンサルトの如く足を繰り出してきた。足は虚空に漂うダガーを的確に捕らえ、刃を俺の機体に突き付けてくる。

 俺も負けじと再度回転に勢いをつける。俺の頭上で逆さま状態の敵に向かって、高周波ブレードを振るった。

 再び画面を火花が焼く。機体に刃が食い込んだ。それと同時に両者が上下に弾け飛ぶように離れる。

 敵機は俺の高周波ブレードによって、胴体装甲に裂傷を受け。

 俺の機体は敵の高周波ダガーによって、動力部を貫かれていた。

 勝敗を決めたのは重力だ。

 空中戦で無理な挙動をすると、速度が落ちて重力に捕まる。俺の機体が致命傷をこうむったのは、敵機が俺を踏み台にしてスラスターを吹かし、刃ごと機体を踏みつけて上昇したからだ。

 それは先ほど俺がやって見せたのと同じ方法だった。

 機体が無数のポリゴンと化していく。

 見上げると、視線の先で黒い敵機が何処か楽しげな様子で俺を見下ろし上昇していく。

 動力部を貫かれた俺の機体は、ブースターが停止し何処までも落ちていく。やがて視界は黒く染まっていった。

 最後に[Mission Failed]とモニターに表示される。



[アルカの手記-006]


「うおおスミスよ、主人公が負けてしまったぞ!」

〈まったく嘆かわしい限りでございますな〉

「中々にエースっぽい立ち振る舞いをしていたのにな、負けてしまうとは」

〈資料によりますと主人公のパイロット技能は宇宙世紀で例えるならコ●・ウラキ、種で例えるならムウ・●・フラガくらいだとか何とか〉

「何を言っているのか良く分からんが、しかし死んでしまっては致し方あるまい。これで晴れて次回から私が主役として活躍するのだな」

〈いえ……まだ死んだと決めつけるには早いかと、それにまだ始まったばかりでございますし〉

「なんと、つまりあれか。仮面をつけて再登場するパターンの奴だな!」

〈ですからそれはまだ早いと!〉


[続く]

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