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[Mission-005]

前回までのMission!


 敵機を殲滅した矢先に、新たに姿を現した正体不明機。

 こちらを上回る機動性に怖気付く一同とは違い、昴流はこの事態を想定しミサイルを持ち込んでいた。

 ミサイルはターゲットを捕らえて射出される、その結果は如何に!

[Mission-005]



 発射されたミサイルは、複雑な軌道を描き敵機へと迫る。その一つ一つの機動が敵機の回避進路を狭めるように回り込み、追い詰めていく。

 敵機は素早く加速し、ミサイルの追撃を振り切るように動く。どうやらAIハックは使わない選択肢を取ったようだ。しかしこちらの2倍の速度が出るとはいえ、所詮はKR型の人型兵器だ。ミサイルの速度と小回りから逃れる事は出来ない。その距離はどんどんと近づいている。

 期待したその一瞬。ミサイルが敵機に追いつくギリギリに、敵はブースターを切り返して反転、逆にミサイルに向かって突っ込んでいった。

 接触し爆発すると感じた瞬間、敵はまるでミサイルを素通りする様な鮮やかな挙動で回避して見せた。直後に敵機の後方でミサイルが爆発する。

〈な、今何が起きた!?〉

〈ミサイルを通り抜けたように見えたが……〉

 1番機と2番機は何が起きたのか分からないといった様子で唖然とする。

 一瞬だったので俺も良く見えてはいなかった。推測だが、敵は手足を駆使してミサイルを押し退けたのだろう。勿論KRにも手足はあるが、だからと言って普通にミサイルに触れれば接触をセンサーが感知し爆発する。そうでなくても接近するだけでセンサーは反応するはずだ。あの恐ろしいほどの加速と、操縦者の無駄のない動きが可能にした技なのだろう。

 後方で起こった爆発をむしろ加速材代わりにして、敵機が1番機に迫っていた。

〈迎え撃つ!〉

 1番機がアサルトライフルを構え、アンノウン機に銃口を向ける。その瞬間に敵機はさらにブースターの出力を上げた。もとから爆風に乗って加速していたが、1番機に向かう瞬間、下手をするとKRの3倍は速度が出ていただろう。

〈1番機撃墜……そんな、どうやって!〉

 1番機ナビの悲鳴も頷ける。

 敵機と交差した瞬間には、1番機はポリゴンとなって砕けて散っていた。

 もしやと思い、モニターに映る敵機の姿をクローズアップさせる。すると敵の手に小さく光る刃が見えた。あれは陸専用のKRⅡ型が標準で装備している高周波ブレードの一種ではないだろうか。

 あの速度で交差する一瞬に、KR用とはいえダガーサイズの武器で動力炉か操縦席を一撃で狙うなど信じられない。しかも空中戦とか。理論的に不可能とは言わないが、実行する気にはなれない非常識な戦法だ。

〈こうなったら加速終了直後を狙う〉

 ミサイルの弾幕を振り切り、返す刃で一機撃墜。確かに敵は凄腕だ。しかしいくら腕が立とうと、機体の特性は覆せまい。瞬間的に3倍近く速度が出ようが、常時その速度で吹かせばブースターに限界が来る。必ず速度を緩ませる瞬間があるはずだ。

 例えば次の敵を狙う時。

 そう考えてか、2番機がスナイパーライフルを構えつつ前へと出た。

 見たところ敵の武器は高周波ダガー一本。どれほど加速しようが、120mm徹甲弾より速くはあるまい。近づく前に決着をつけられる。

 2番機の動きに気付いた敵機は、加速終了と同時に回避行動をとった。機体を捻る様に動かし、超高速で飛来する初弾を見事避ける。しかし2番機の初弾はブラフだ。加速直後に無理な挙動を取らせたことで、敵機の速度はさらに低下するだろう。

 2番機の予想通り、回避行動をとった敵機は一瞬ではあるがほとんど静止状態となった。あとは装填された二発目を、動けなくなった敵のど真ん中に打ち込むだけ――。と思われたのだが、残念なことに必殺の二発目は発射されなかった。

 敵機は初弾を避ける動作の最中に、手首を素早く振り払うような動きを見せていたのだ。その直後に。

〈2番機センサーが機能停止!? お姉さま!〉

〈……やられた〉

 その時点で勝負はついていた。

 敵の投擲したダガーに頭部を貫かれた2番機には、敵の懐への侵入を防げない。そのまま頭部に刺さったダガーにより動力炉を一突きにされた。

〈……2番機撃墜ですわ〉

 2番機ナビの意気消沈した言葉が響く。

 なんという技術だろうか。KR戦でスローイングダガーとか、異常過ぎて言葉も出ない。

 いやそれよりも、いくら俺達が訓練生とはいえ3対1で、それもダガー一本でここまで渡り合うとは。機体性能を差し引いたとしても、相当非常識な状況だ。

 もしこの敵機にパイロットが乗っているとするならば。

「相当遊び慣れてやがる」

 もしくは相当狂っているかのどっちかだな。

 KRⅢ型に標準的に装備されるのは、アサルトライフルなどの射撃兵装だ。それだけ空中は銃撃戦が激しい領域という事になる。そんな戦場であえて近接を挑むとか。

「酷く共感を覚えるね」

 呟いて操縦席のパネルを操作する。

 当たる気配の無いアサルトライフルとミサイルポッドを脱着させる。武装が機体から破棄されるのを確認して、再び秘匿モードを解除。機体のバックパックから新たな武装を取り出す。サブアームから右手に装備させるのは、敵と同じ高周波ブレードだ。こちらはKRⅡ型が装備する中では最大サイズの、瓦礫及びバリケード破壊用の長剣型。

〈ちょっとほんと予備の武器弾薬とかどうしたのよ!?〉

〈諸般の事情によりさらに30%ほど置いてきた〉

 観言の抗議を白々しく聞き流して、空になったバックパックを虚空で破棄した。

 敵も俺の動きに気付いた様子で、軽く旋回運動をしながら距離を測りつつ高周波ダガーを構えている。

 通信越しに仲間達が色々と何か言ってきているようだが、もう耳には届かない。

 パネルを操作し近接管制を起動させた。それによりモニターに[IFCS ONLINE]と表示される。

 さぁて遊びの時間と洒落込もうか。


[アルカの手記-005]


「ふむスミスよ」

〈何でございましょうか姫様?〉

「髪型を変えようと思うんだが」

〈いけませぬ! 皇機種(ルーラー)ともあろうお方がたやすく外見を変えては民が混乱いたします!〉

「むぅ、しかしだなスミスよ」

〈はい〉

「私はまだ外見すらまともに出てはおらぬのだ、ならば今イメチェンしても何も問題はないと思うのだが」

〈なるほど確かに容姿が出ていない今ならば、髪型を変えたとしても作品的に問題はありませぬな〉

「だろう? ではどの様な髪型にしようか」

〈しかし姫様お気をつけくださいまし!〉

「な、何をだ?」

〈もし安易な気持ちで髪型を変えて作品に登場してしまっては、そこから容易に変更は出来なくなりますぞ!〉

「む、そうか……我々キャラクターの外見は一種の記号の様な物だからな、ちょくちょく変更してしまっては読者の混乱を招くか……いや待てスミスよ」

〈何でございましょうか〉

「そもそも我等は小説のキャラクターではないか! つまりはぶっちゃけ多少髪型が変わった所で別に文字に起こされなければ何も問題ないのではないか?」

〈おおなるほど、確かにそうでありますな〉

「だろう?」

〈しかし姫様、そうであるならばそもそも髪型を変える意味も無いのではないでしょうか?〉

「む、むぅそれはまぁこちらの気分の問題と言うか」


[続く]

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