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[Mission-004]

前回までのMission!


 作戦は失敗したものの、圧倒的操縦技能で敵機を殲滅した昴流達であった。しかし敵機の全滅を確認したのちに、突如として未確認の機体が姿を現す。

 不意に姿を現す居るはずの無い幻影(ファントム)が牙を剥く、どうする昴流!

[Mission-004]



 沈黙の意味は、人それぞれであると思う。

 驚愕であったり、戦慄であったり、困惑や疑惑なども口を閉ざす理由には十分だ。

 しかし俺の場合は、待ち人来るという歓喜の一拍に近かった。

 敵機を殲滅し、ミッションをクリアした直後に現れた正体不明(アンノウン)機。作戦区域内に航空機や輸送機が紛れ込むはずはない。軌道エレベーター付近でこちらの様子を撮影する報道科の撮影ヘリの様な、無人機の動きではなかった。明らかに人が操る機動を取っている。

 それこそ見間違いか計器の故障を疑った方が正しい様な、まさに存在するはずのない幻影(ファントム)である。

 その怪しい影は、レーダーで確認する限り、確実にこちらへと進路を取っていた。

〈これが噂の[黒の乱入者(アンノウン)]ってやつか〉

 1番機パイロットの委員長が緊張した様子で呟く。

〈聞いたことがあるな。訓練ミッション中に襲い掛かる正体不明の黒い影か。案外教官達の仕込みじゃないか?〉

 2番機は興味深い様子で、乱入者の来る方角を見つめていた。

〈こんな所までお出ましとは、大したハッキング能力ですわね〉

 2番機ナビは感心した様子だ。

「それで、どうする?」

 俺はとりあえず感情を押し殺し、平静を装いつつ問いかける。

〈えっと、任務自体はすでに達成しています。交戦の必要は無しと思います、って言うか想定外だし逃げるが勝ち!〉

 観言が撤退を進言する。

〈アンノウン機急接近、向こうはやる気のようですわよ!〉

 2番機ナビの言葉通り、レーダーの点滅がさっきよりも早くこちらに向かって来ていた。

 襲い掛かって来るなら、無視するわけにはいかない。降りかかる火の粉は払ってやるのが礼儀ってものだ。

〈現在の燃料残量で作戦高度を維持する場合、あと2分が限度です〉

 3番機ナビが残りの作戦可能時間をモニターに表示させる。

「2分もあれば十分」

 呟いて、端末を操作して曲を再生させる。インストゥルメンタルのバイオリン曲だ。緊張を孕んだ、今の戦場に相応しい音楽(BGM)が俺の体内(コクピット)を満たす。

〈どの道、軌道エレベーターを守り切るのが任務だ、迎え撃つぞ!〉

 委員長の言葉に、全員の覚悟が決まったようだ。

 敵の来る方向に機体を向ける。銃の残弾を確認してリロード。機体の状態を確認、システムチェック問題無し。まだまだ戦闘続行可能。

 いや、ここからが。

「本番だ!」

 ようやく全天周囲モニターに、接近してくる敵の姿が表示された。

 それはしっかりと人型をしていた。

 全身は細長く、関節を阻害しない様に分割された外装を纏い、不気味さすら漂うほどにスマートなフォルムだ。背部には規格外に大きなブースターを背負って、全身は怖気がするほどに黒い。赤いフェイスバイザーが、モノアイの頭部を覆い紅い残光が軌跡を残す。

 この時点で俺達の乗るKRとは基本フレームからして似ても似つかなかった。ナビゲーターが機体照合をかけても該当する機体情報は見つからない、まさしく正体不明(アンノウン)機である。

〈敵機を視認したが、何だアレ無茶苦茶速いぞ!〉

 委員長が驚くのも無理はない。画面上の計測では瞬間的な加速力はこちらの2倍ほど。ブースターの性能が桁違いだ。

 勿論ブースターの性能だけで勝負が決まるほどKR戦は単純ではない。

〈アンノウン機、こちらの通信に応答しません〉

〈なら撃つしかないな〉

 1番機ナビの応答に呼びかけが無い事から、委員長はアンノウン機の接近を敵対行動とみなしたようである。迫りくる敵機に向けてアサルトライフルを構えて射撃を開始した。

 先制で仕掛けた射撃であったが、敵機は一瞬にして視界から消える様な加速を行って避けて見せた。

〈何だあの動き、こんなのミサイルでも持ってこなきゃ無理だろ!〉

 高機動で動く相手には、同じく高機動で追いかけるミサイルを使うしかない。

「なら使おうか」

 そう言って、俺は機体の火器管制にアクセスし、一部の装備に掛けられた秘匿モードを解除する。機体バックパックのカバーが展開し、中から四角い箱が機体右側にサブアームに固定され装着された。

〈はっはぁ、なかなかイカス奴を持ってるな、お前はバカだ〉

 2番機が楽しげにサムズアップする。

〈ちょっと軌道エレベーターへの被害を考慮して爆発物は持ち込まないって方針でしょ!? 何でミサイルポッドなんか持ってきてる訳!? 大体あんた予備弾薬とか補給物資を持ち込む手はずでしょ!?〉

 通信越しに観言が激しく非難してくる。

「補給物資は止むを得ない事情で40%ほど置いてきた」

〈ちょっ!? 命令違反っ!〉

 ああそんな事は百も承知だ。

「命令違反が怖くてアンノウン狩りが出来るかよ!」

 操縦桿を握り敵機を視界に捕らえる。いくら異常な機動力でも、ミサイルに狙われては平静ではいられないだろう。

〈外した隙を狙ってやる、良い所狙えよ〉

 2番機もチャンスを逃すまいと狙撃の構えをとる。

「ミサイル追尾コースをエンジニアにサブ2モードで委託する、観言はその隙を狙え! ファイア!」

〈ハハッいきなりだねぇ、了解〉

〈ええ、唐突過ぎるわよ!?〉

 4番機エンジニアの言葉と、ナビの悲鳴を聞きながら発射ボタンを押し込む。それと同時に新たなウィンドウが開いて、ミサイルの軌道が素早く描かれていく。これは2番機エンジニアが手動でミサイルを操作し敵に向かう経路だ。

 無論相手もKRと同じ仕組みで動いているとすれば、どれほど高性能なミサイルを撃ち込んでもシステムをハックされ無効化されるだろう。

 しかしその瞬間こそが隙だ。相手がミサイルのシステムを乗っ取ろうとした瞬間に、4番機ナビの観言が逆に相手のシステムに攻撃を仕掛ける。上手く行けばそれで敵機の動きは鈍くなるだろう。ミサイルなどの無人機の機能を奪うAIハックは攻撃時こそが弱点でもある。そしてその隙を我らが2番機スナイパーは逃しはしない。

 もしAIハックを行わないのであれば、今度はエンジニアが手動で操る正確無比なミサイル群の襲撃を受けることになる。その装甲がどれほど頑丈であろうが無傷ではいられまい。

さて、お手並み拝見と行こうか。



[アルカの手記-004]


「そう言えばふと思ったんだがな」

〈何でございましょう姫様〉

「我らの出番は何時になるのであろうか?」

〈おお然様でございますな! 私もこの作品の登場人物である事をすっかり忘れておりました〉

「うむむ、このまま登場しないという事はあるまいか?」

〈いやそれは流石に……〉

「もしそうならスケジュールがぽっかり空いてしまうではないか! どうしてくれる暇でしょうが無いぞ!」

〈悩む事がその程度であれば良いのですが。それでしたら積みゲーを消化しては如何でしょう〉

「何を馬鹿な、積みゲーは積んであるからこそ美学なのだ、消化してしまっては元も子もあるまい」

〈私が無学なのかそれとも姫様が荒唐無稽な事を言っているのか計りかねますが、仰っている事が理解できませぬ〉

「あーつまりだな、積みゲーはもうその作品の空気や雰囲気は十分に楽しませて貰ったわけだ、後はもうクリアするだけとなる。そしてクリアすればもうそのゲームで遊ぶ事はほとんどなくなってしまうわけだ。しかしそうやって関係を終わらせると言うのはあまりに残酷ではないか? 故に私はあえて放置する事でそのゲームとの繋がりを維持し続けているのだ」

〈そうやって放置しておくからリメイクが出た際に悩むのではありませぬか?〉

「それもまた避けられぬ道だな」


[続く]

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