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[Mission-001]

 前回までのMission!


 人類の知らぬ間に、異星人は音も無く忍び寄っていた。

 ちょっと一騒動あった物の、異星人は地球侵略の第一歩を踏み出そうとしていた。

 そして一方そのころ、地球在住のとある青年はと言うと……。

[Mission-001]



 高度1万km。そこは主に外気圏と呼ばれている漆黒と蒼の境界線。

 その周囲には大気圏外まで聳える、軌道エレベーターSTT04の明かりが見える以外は何もない。眼下は雲と大海原が果てしなく広がっていた。

 そんな全天周囲モニターが映し出す外の景色に、俺は操縦席の中で溜息を漏らした。

 人類が英知をかけて建造した軌道エレベーターは、地球と宇宙を物理的に繋ぐ橋である。これにより人類の宇宙進出は飛躍的に容易になったという。

 だが利便性というのも考え物である。これにより人類は速やかに宇宙へと進出し、今や木星の衛星にまで生息域を伸ばしていた。しかしその結果、主要な経済や文化活動等の中心は火星へと移ってしまった。

 今でもこの軌道エレベーターは人類の生活の中心たる火星から、最新技術や情報を地上に降ろす為に使われている。しかしその本来の目的、人類の進歩の象徴としての意味は喪失したと言ってもいいだろう。

 稀に観光目的の旅行客が利用するので運用自体は続けているが、逆に言えば運営の為の人員は配さなければならない。その巨大さゆえに、維持費や管理も容易ではないだろう。

いっそのこと倒壊してしまえば、いよいよ人類が地球に縛られる理由が無くなるのかもしれない。

 この見掛け倒しの巨大建造物が今度は宇宙への進出を塞ぐ巨大な楔か、あるいは檻の様に見えたのだ。 そりゃ溜息だって漏れる。

 俺は今高度1万kmの虚空に浮かんでいる。まさに地球と宇宙の狭間に居るわけだ。

 勿論生身では無い。

 身体は1メートル四方の箱の中だ。

 手に握る操縦桿とペダルで機体と繋がっている。もはや身体の延長線上。俺の乗るKRⅢ(ナイト・ラウンダー)-F02AT(ヴァルチャ―)は俺の神経で動いていると言っても過言ではない。

 コクピット内は全天周囲モニターが映し出す、壮大なパノラマ景色と、それに被さるように表示された計器類、あとは体を固定するリニアシートの周囲に配置された機体制御用の操縦桿やパネルが並ぶ。パネルには、整備の調整度合いや割り当てられた機能の簡易説明、そして仲間からの応援メッセージ等が付箋で貼られている。

 その他にはホルダーに立て掛けられた携帯端末とか、水筒とか。

 モニターには、俺の乗る機体と同型の機が前方と左右に合わせて3機が映し出されている。

 そのフォルムは戦闘機と非常によく似ている。しかし、KR(ナイト・ラウンダー)は従来の兵器である戦闘機とは似て非なる存在だ。

 旧世代の兵器史は、戦車と戦闘機、そしてミサイルに集約されていると言ってもいいだろう。特にミサイルの高性能化によって、ボタン一つで世界の命運を左右しかねない時期もあったらしい。

 しかし新世代に入り、今度は電子戦が主流となる。戦車や戦闘機やミサイルも人工知能を搭載し自走するようになった。すると今度はネットワークを介し、システムを乗っ取り合うようになる。

 KRは、高度な電子対策が施されており制御を乗っ取られることは無い。しかしその特性故にパイロットの搭乗を必要とした。

 最初は味方が敵のシステムを乗っ取る為のネットワークの中継器として戦線に投入された。そのうち、システムを乗っ取る前に撃墜されては元も子もないので装甲が装備され、戦線にいるならと武装された。

 結果として現在の戦闘は、互いにシステムを乗っ取り合いながら、実機で撃ち合いをするという進歩しているのか退化しているのか分からない有様となっていた。

 武器や戦法は日々進化し、高度な戦術となっていく。それなのに、未だに重い鎧に命を預ける時代遅れの騎士甲冑。故に誰が名付けたか蛮騎士(ナイトラウンダー)である。

 KRⅢ(ナイト・ラウンダー)-F02AT(ヴァルチャ―)の全体像は戦闘機ほどスマートではなく、ややホームベース程度に無骨である。今は航行形態である為に装甲内に格納してあるが、一応手足のついた汎用人型兵器である。青み掛かった灰色をしており、補助翼と後方に大型ブースターが付いているが、これがKRの正式な形状と言う訳ではない。KEは状況や任務に合わせて兵装を切り替える事が可能で、今装備しているのは大気圏内用の高機動ユニットF02AT(ヴァルチャ―)だ。この形態のKRは高高度を飛行可能で、戦闘機にも引けを取らない高度な空中戦を可能とする。格納した腕や足を展開すれば、戦闘機には不可能な動きすらも可能だ。その代わりに機体安定性や戦闘可能時間は犠牲になっているが。

 俺の機体を合わせて4機のKRが、今地球の遥上空で隊列を組んで浮かんでいる。編成を乱さずに飛ぶ様子は渡り鳥の群れを彷彿とさせる。もっとも他の機体は、機体間距離の維持に精一杯の様子で、挙動はどこかぎこちない。

「このくらいで緊張なんてしていられないね」

 呟きはコクピット内に響く機体の作動音や、外壁を叩く空気抵抗に掻き消された。

 静寂は嫌いだが、かといって騒音に埋もれるというのも趣味の悪い話だ。

 俺は徐に片手で携帯端末を操作する。

 やがてコクピット内に曲が流れ始める。お気に入りのインストゥルメンタルのベースに合わせて、シートを指で叩いた。小刻みに体を揺らしながら、1メートル四方の俺の体内を音で満たす。

 心に余裕を、耳に音楽を、何時いかなる時も汝楽しむ事忘れるなかれ。

 ノリノリに操縦桿を握っていると、コクピット内に表示される全天周囲モニターにウィンドウが開いた。仲間からの通信が入ったようだ。

昴流(すばる)ぅ、任務中に随分と楽しそうじゃない?〉

 皮肉気に通信を入れてきたのは俺の乗る4番機の専属ナビゲーターだった。音声のみの通信ではあるが、声音に含まれる嫌味から表情が想像できた。

「これは観言(みこと)さん、別に楽しくは無いよ?」

 慌てて曲を止め、通信相手に言い訳を返すがもう手遅れであったようだ。

 別の通信ウィンドウが開かれる。

〈全く任務中に音楽鑑賞とは緊張感が足りませんわ〉

 この発言は2番機ナビゲーター。どうやら俺のコクピット内の様子は筒抜けだったようだ。コクピット内に通信ウィンドウがどんどん表示される。

〈こんな大事な時に信じられません〉

 この発言は3番機のナビゲーター。

〈今からでも4番機パイロットを体調不良を理由にミッションから外すべきですわ〉

 酷い言われようだ。

〈ちょっと昴流(すばる)! あんたの所為でうち等がミッションから外されたらどうすんのよ!〉

 専属ナビゲーターの怒りを何とか和らげようと、言い訳を考えてみる。

「どうやら機器の調子が悪いらしくて、勝手に音楽が」

〈いやいやいや絶対わざと流してるでしょ!? 白々しいのよ! いいから任務に集中しなさいよね!〉

 ナビゲーターの顔は見えないが、やはり浮かべる表情は想像がついた。

〈やぁこんな時でも痴話喧嘩とは仲が良いねぇ〉

 この発言はうちのエンジニアから。

〈はいはい御馳走様〉

 これは2番機パイロット。

 って皆通信に入って来るのかよ。暇人共が、もっと任務に集中すればいいのに。

〈ちょっと痴話喧嘩とかじゃないからね! もうっ昴流! 覚えときなさいよね!〉

 うちのナビゲーターがお冠だ。これは後々御機嫌取りが面倒臭そう。とりあえず、増えまくった通信ウィンドウを手を払う様にして視界からどかす。

〈お前ら任務中だぞ! 静かにしろ!〉

 これは1番機パイロットで、チームのリーダー。その上委員長である。流石はリーダーである、この一言で落ち着きのない他の連中を見事黙らせてみせた。

〈えっと折角ですしこのタイミングで、ミッションの最終確認と行きませんか?〉

 これは1番機ナビゲーターの副委員長。

〈そうだな、何かしていた方が皆集中出来る様だし〉

 流石は委員長と副委員長のリーダーコンビ。荒れ狂うメンバーを見事に鎮め纏め上げて見せた。彼らが居なくては俺達のチームはまず間違い無く空中分解する事だろう。

〈それじゃ観言君、ミッション確認を頼む〉

〈了解です〉

 委員長に頼まれ、観言の声がミッション内容を読み上げ始める。

〈ちゃんと聞きなさいよ、特に昴流! 今作戦は超高高度からの奇襲降下作戦です、攻撃対象は軌道エレベーターを占拠中のテロリストとなっています。機体の種別と機体の数はこちらと同条件です。自律攻撃機は互いに不使用ですのでKR戦のみとなります。対象を作戦可能限界高度までに殲滅しなければいけません。また軌道エレベーターへの損傷は最低限度に収めてください〉

「はいはい、こちら4番機パイロット昴流。制限時間までに敵の殲滅ね、任務了解」

 名指しで言われたので、一応返事をしておいた。

〈こちら3番機パイロット了解、ってか[箱入り貴族(ノーブル)]と一緒にされちゃたまンねぇぜ、おい遊びじゃねぇンだぞ!〉

 激しい挑発口調で、右側を浮く3番機がわざわざ格納していた腕を展開して俺の機体を指さす。

 遊びじゃない、ねぇ。

 3番機の言葉を胸中で反芻し、笑みを浮かべた。



[アルカの手記-001]


「うむ? どうした事だ、私の出番が無いではないか!」

〈はぁ姫様申し訳ございません、どうやら今回は我々が暗躍している最中の地球人共の動きを描く回のようでございます〉

「なんとっ!? 私は主役と聞いていたのだがな……」

〈まったくでございますな、天下の皇機主(ルーラー)であらせられる姫様を一体なんだと心得ているのでございましょうか!〉

「まぁ待て、作者とやらにも色々と事情があるのであろう、それにあまり出番が多いのもアレだ……セリフを覚えるのが面倒でな」

〈前回も結構な長台詞をバッサリとカットしておいででしたが、もしや覚えきれなかったと〉

「何を言う、あそこは私のナイスなアドリブが効いたからこその名シーンではないか! それにしても地球人共はまったく古めかしい兵器を扱っているのだな!」

〈さようでございますな、まぁ仕方ありませぬ、彼らの技術力など我らの足元にも及びますまい〉

「ふむ、これくらいならば我でも余裕じゃないのか?」

〈いや……それは、その……〉

「何だ歯切れが悪いな」

〈例えばでございます、パソコンでも最新機器は機能が充実しスイッチを入れればすぐにインターネットが繋がりますが、逆に古い機器ではそのインターネットにつなげるのにも一苦労という事がございます様に、決して仕組みが古いからと言って簡単に扱えると言う訳ではですな〉

「何を言っているのかさっぱりだ、もっと判り易く言え」

〈いえですから……そもそも姫様、機星の操縦課程はちゃんと終了したのでありますか?〉

「んん? それは――まぁ一応な」

〈一応とは?〉

「ええい、機星の操縦もセリフと一緒の様な物だ! 長くてまだるっこい部分は大幅にカットして、ズバッと機転の効いたアドリブでこなせばいいのだ!」

〈うむう……あながち間違いでも無い所が指摘しずらいですな……〉


[続く]

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