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イケメンはご遠慮いたします。  作者: 紫野 月
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 書庫の整理は思った以上に手間がかかりました。

 今日一日こもったというのに全然片付きません。これは片づけ終わるのに2~3日、いやもっとかかるかも…… 取り敢えずやることがある。よかった……

 こんなことでホッとする自分が凄く可哀想に思えてきました。

『悲観しちゃダメだよ美鈴。世の中にはもっと辛い目に合っている人がいるんだから』なんて自分で自分を励ましてみますが、少しも気分は晴れません。落ち込む一方です。

 本当にどうしたらいいんでしょう。はあ…


 キリのいいところまで作業をしていたら終業時間がとっくの昔に過ぎていました。

 それにしても、今日一日こもってたのに誰も様子を見に来ませんでしたね。 課長や主任も来なかったということは、これはもう末期的な症状かもしれません。それともあの二人も松木先輩を敵に回したくないのでしょうかね。なんたって総務の首領ドンですからね。

 さてと今日はもう帰ることにしましょう。

 うーん、やっぱり一度事務所に戻るべきですよね。だけど行く気になれません。

 どうせ幽霊扱いされてるんだし、いいか。

 このまま帰っちゃお。

 でもその前に喫茶室に行こうっと。喉乾いちゃったしね。

 

 何にしようかな。気分的にはちょっとお高いロイヤルブレンドでまったりだけど、低迷した気分を上昇させるスッキリ爽快炭酸水も捨てがたい。なんて考えながら喫茶室に入ろうとしてピタッと足を止めました。

 中から人の話し声が聞こえてきたのです。

 いや、それだけなら気にせず中に入って飲み物を選ぶんだけど、複数の話し声の中にどうも五十嵐さんがいるようで……

 これはスルーした方がいいよね。

 これ以上一緒にいるところを見られたくないし。


 ということで回れ右をしようとした時、不意に気になるワードが聞こえてきました。

 どうやら私の事を話しているみたいなんです。

 立ち聞きなんて本当はしちゃいけないんでしょうが、とっても気になります。いったい何を話しているんでしょうか。

 思わず聞き耳を立ててしまいました。

A:「へえ、まだ落としてないんだ今回のターゲット」

B:「もう二ヶ月だろう。大丈夫なのか? 『三ヶ月以内で落とす』に一万賭けたんだぞ俺」

C:「まだ期限まで一ヶ月あるだろう。大丈夫だって。この僕が本気を出して落ちない女なんていないさ。そうだろ?」

B:「まあそこは心配してないが… それにしても時間のかけすぎ。前回は三日で落としたのに」

C:「別にいいだろう。今回のコンセプトは『傷ついた心を癒してあげるいい人』なんだから」

A:「いい人? 五十嵐が? 笑わせてくれるね」

B:「本当、こんな女たらしのどこがいいのかね? 世の女どもは」

A:「顔だろ。それ以外に何があるんだよ」

C:「酷いなぁ。まっそれは否定しないけどね。でもそれだけじゃないよ。僕はその女性に合ったシチュエーションで口説いてあげてるんだ。夢を見させてあげてるのさ」

A:「夢ねぇ。その後すぐに捨てるくせに」

B:「本当、そこは容赦ないよな、お前」

C:「どうして? 恋愛は手に入れる過程が面白いんじゃないか。彼氏とか彼女とか面倒なん__」



 何言ってるの? この人達。

 賭け 一万 捨てる ターゲット…

 言葉の意味はもちろん分かる。でも、内容がぶっ飛んでて現実味がない。

 ターゲットって私? 私、賭けの対象にされてたの?

 この人達なんちゅう酷いことしてるの。

 乙女の恋心を賭けの対象にするなんてマジで鬼畜!!

 えっ、ちょっと待って。私、この人達の道楽のせいで辛い目に合ってるの? 物凄く理不尽なんですけど!!

 このやり場のない怒りをいったいどこにぶつけたらいいのでしょう。

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